最悪な入学式
入学式。
それは学校生活の最初の一歩である大事なイベント。
厳かな雰囲気のなか、上級生達の興味津々な視線が飛びかう⋯⋯そんな⋯⋯
「なんで、ああなっちゃったかな〜〜」
トイレの便座に座りこみ、頭を抱える。
っていうか、あれ全部仕組まれてたよね⋯⋯。絶対そうだよ、じゃないとおかしいし⋯⋯。じゃあ、だとしたら、なんで、レオンは⋯⋯
遡ること、三時間前。
「すっごーい!なにこれやばくないっ!?全部、魔法で動いてるんだよ!ねぇ、レオン聞いてる?」
「⋯⋯⋯⋯」
なにも答えずにただ前を向いてるレオン。
不思議に思ってそちらをみる。
「生徒会?⋯⋯すごい⋯⋯美男美女ばっかり⋯⋯」
ステージ上に並んで座っている生徒会の面々は美男美女ばかり。
レオンの視線が真っ直ぐに向かっているのはウンディーネとみられる美女。
「惚れちゃったの?」
ふざけたようにそう尋ねるも、返答は得られない。
でも、レオンの表情は初めてみるもので、なぜか胸が痛んだ⋯⋯。
「あっ、全員入場したみたいだね。式ももうはじまるのかな」
「⋯⋯んっ?ああ⋯⋯」
その曖昧な返事に段々腹が立ってくる。
「ちょっと⋯⋯」
「みなさん、こんにちは」
気づくとステージの中心に立ちマイクを握っていたあのウンディーネ美女がそっと微笑む。
異性を魅了し、同性に嫉妬させる、そんな笑みを。
「新入生のみなさん、入学おめでとうございます。早速ですが、この学校のルールを説明させていただきますわ」
そういって長い銀の髪をかきあげる。その動作さえもが美しい、そんな人だと思った。
「この学校では、魔力を持つ者こそが最高の位を得ますの。」
どこか嫌味がかったいけ好かない物言いでそういうと生徒を見渡す。
「そして、その最高の位こそが私達生徒会ですわ。」
つまり、あなたたちは全員私の下なのよ、とでもいいたげな笑みに腹がたつ。
「そして、今ここで新入生の中でもトップの魔力をほこるレオン・キーザくんを生徒会の一員としますっ!」
高らかに宣言するウンディーネ美女に耳を疑う。へっ?レオンが⋯⋯?
隣で立ち上がるレオン。周囲の生徒もザワつく。
「レオン⋯⋯」
呼びかけても答えてくれない。真っ直ぐ、前だけを見据えた強い瞳。
「レオンくん、こちらへいらして。自己紹介なさい」
「はい」
そう大きく返事をするとテクテクと歩いていくレオン。
やめて、行かないでーー。
必死に伸ばした手は、ただ空をつかむだけだった⋯⋯。