近づくその時
「ふわぁぁぁ、なんとか間に合ったぁ」
へとへとの体で自分のクラスの列に飛び込む。
「間に合ってねぇだろ、ボケ」
そういって頭を容赦なく叩いてくる人。こんなことするのは⋯⋯
「裏切り者のレオンくんだ。また、同じクラスか⋯⋯」
そういってプイとそっぽを向く。今日遅刻してしまったのだってほぼこいつのせいだ。
艶やかな黒髪にアーモンド形のスカイブルーの瞳をした長身エルフ、レオン・キーザ。幼馴染だ。
でも、いいのは見た目だけで中身はとても良いとは言えない。朝の変人と互角といってもいいくらいだ。
「アンタが待っててくれないから、道に迷うわ、変人に絡まれるわで最悪だったんだから!」
と息巻いていうと、頭の上に大きな手がのせられてグシャグシャされる。
「悪かった。ごめん」
せっかく整えた髪型もグシャグシャ。
でも、レオンに頭をなでられるのは案外好きだ。
本人には絶対いわないけど⋯⋯。
「ほら、音楽なってる。もうすぐ入場だろ。シャキッとしろよ」
そういって前方を見つめるレオン。
レオンはいいなぁ、エルフだから耳いいし生まれ持った魔法の才だってある。
それに対して私はなんの取り柄もないヒューマン。ここに受かるだけで運を使い果たしちゃった感じ。
でも、がんばらなくっちゃ!
段々と列も進み、私のクラスの列も入場し始める。フーッと大きく息を吐き出し、パシンッとほおをたたく。
うん。これで大丈夫!
「ちょっ⋯⋯レオン、列進んでるけど?」
「えっ?⋯⋯あっ、ごめん、ボーッとしてて」
そういって慌てて進むレオン。
「な〜に〜?柄にもなく緊張しちゃってるの〜?」
顔を覗き込みながらわざとらしくいってやると
「うるっせぇ」
思い切り顔面つかまれて一瞬息が止まる。
「バカレオン!手加減してよね!顔がぁ」
とうめくも、レオンくんは心ここにあらずという感じだ。
変なの⋯⋯。
そう感じたのはほんとに一瞬で⋯⋯。
「うわー、すごい⋯⋯」
体育館の手前におかれた石像が一人一人にとんがり帽を渡してる。
あれが、ここ超エリート魔法学校の生徒の証だ。
ドキドキしながら石像の前にいく。
「あ、あの、こんにちはっ!あなたは魔法で動いてるの?それとも、普通の」
「お前がエルン様がいっていた生意気な小娘か?確かに、アホっ面だな」
そういってギシギシと変な笑い声を立てる石像。⋯⋯性格わる⋯⋯ってか、エルン様って誰だし、と思いながら帽子を受け取る。
「お前のは、エルン様が特別に用意してくれた高級なものだ」
ギシギシ笑いながら帽子を手渡してくる。
ほかのみんなのと変わらない気がするし、エルン?誰それ?って感じだけど、
「ありがとね!エルンさんにもありがとって伝えといて」
そういって微笑む。
「お前はほんとにバカだなぁギシシシ。」
そういって石像が笑ってたのなんて知らない話。