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魔法の世界へ  作者: 直斗
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 ベッドに座る、一人の少女。隣に座る祖の神が、少女を抱きしめる。

「ごめんね、巻き込んで」

 少女は泣くこともせず、話すこともせず、ただそこにいるだけだった。

「俺が行っておけば……」

 うつむきながら、後悔する赤目の男性。時計の針が、一つ進んだ。

「あんたは悪くはないよ。悪いのは蓄積の神と欺罔の神、あとは私自身」

 赤目の彼が、彼女へと近づく。

「訂正しろ。お前を抜くか、俺も含めるかのどちらかだ」

 彼は彼女の隣に座ると、大きく後ろへ手をついた。

「とりあえず、お前の力でその子を返しておいてやれよ。反省や後始末はそのあとだ」

 彼女は無言で頷くと、少女の額へと手をかざした。こちらの世界に来てからの記憶、経験、出会い、全て。彼女の手によって……


 差し出されたコップ、それを受け取ると一気に飲み干した。

「一体、何があったんだ?」

 彼は彼女に尋ねる。彼女は大きく息を吐き出すと、ゆっくりと話し始めた。

「真愛ちゃんを追って、向こうの世界に行ったんだけどね。ネーピア・ボネスって人も確かに作ったんだけど、思ってた以上に弱かったんだよ。だから……」

「そいつの記憶を探ったのか」

 小さく頷く。中身のないコップを、彼女は両手で包み込む。

「そしたら本当は貯蓄の神で、ボスとして設定していた老婆もそいつの仲間だった。」

 なるほどなぁ、と腕組みしながら壁に立ったままもたれ掛っている。

「考え方は簡単、真愛ちゃんの力を己の傘下に置き、その世界のトップになる。その世界で無双出来る力を手中に収めれば、反抗勢力が生まれたとしても一掃できる。簡単でしょ?」

 遥か昔、人間の誰かが言っていた。人間は愚かだと。だが神も変わらない。

「じゃあ取りあえず、今後の依頼の見極め方からだな。正直このままでは、また利用されかねないからな。取りあえずそれ、片づけてくる」

 彼は一人彼女の持つコップを手にすると、その部屋を後にした。


 夜空に咲く光の華。それはほんの一瞬だけ輝き、消える。儚く、切ない。だがその一瞬は心に残る物である。

 「ほら、真愛。花火始まったよ。起きて」

 まだ眠い目をこすりながら、空の輝きを目にする。その美しさに、少女は思わず立ち上がった。また一つ、空へと花火が撃ちあがる。

「あれ、真愛。その水筒どうしたの? 家のじゃないでしょ?」

 肩から下げられている水筒。蓋を開けて確認すると、緑茶が半分ほど。

「首からかけている物はどうしたの?」

 真っ白なうさみみが付いたヘッドホン。少女はしばらく眺めると、それを頭につけた。

「わかんない」

「わかんないって、真愛!」

 撃ちあがる花火の下。怒る母親をよそに、少女は楽しげに駆けて行った。


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