ドイツの巨星と白き改革者
そこには、シュトレーゼマンがいた。
彼は不思議そうな顔をしながら長谷川に答えた。
「私が悪かった。しかし、一つ聞かせてくれ、いつから気付いていたのだ。」
シュトレーゼマンは長谷川に聞く。
「最初っからと言ったらどうですか信用しますか?閣下?」
長谷川はフフッと、笑ってからおどけた様子でシュトレーゼマンに言った。
「怖い人だな、君は。私に説明する、手間を省いたと言う訳か…」
シュトレーゼマンは、鋭い目付きをした後に笑って見せた。
「気に入ったよ、この私にここまでするとはな。ところで、この手紙に書かれている大事な事とは何かな?」
シュトレーゼマンは、長谷川に質問した。
「それはですね。ドイツの造船関係者をソビエトに貸し出して欲しいのです。」
長谷川の目が光る。
「造船関係者をか…貸し出して欲しいと言うことは、ドイツに帰ってくるのだろうか?」
シュトレーゼマンも長谷川と同じように目が光る。
「閣下、ソビエトでドイツの規制されている艦船を造船したいのです。ドイツは、経験がこちらは、実績と戦力が手に入ると言う訳です。交換条件に、既に始まっているソビエトとドイツの“技術交流”を拡大したいのですが…費用は勿論ソビエト持ちです。」
シュトレーゼマンに笑いかけながら長谷川は言った。
「“技術交流”を拡大して、更には、費用はソビエト持ち!しかも、造船研究もさせてくれるかうまい……うまい話過ぎる。後が怖いな……。」
シュトレーゼマンは、若干引きつった笑いを浮かべながら長谷川の真意を探すため、長谷川を見詰める。
「閣下、我が大統領は単純にドイツの復興とロシア帝国時代の大艦隊復活とアメリカに勝つために、ドイツとロシアは、深い関係を持つべきと考えているのです。」
モロトフは、シュトレーゼマンに熱意を持って伝えた。
「たかだか、植民地の武器商人に負けるわけなかろう?先の戦勝国だが蝿がタカるようにドイツに大量の国が攻めいったから、ドイツは敗けたのであって……いくらソビエトが新興国であっても後数年有れば、アメリカの軍備を抜けるだろ?」
シュトレーゼマンは、長谷川の計画に加担したくなかった。もしも、加担してアメリカ資本の引き揚げにあったら、ドイツの企業が次々に破綻することは、火を見るより明らかだったからだ。
「知っていますかな?閣下、スターリンは鉄の男という意味ですよ。」
長谷川は、軽い笑いを口に浮かべながらシュトレーゼマンに迫った。
「それは…わかりました。秘密裏に、事を運びましょう。」
シュトレーゼマンは、悟った。秘密を知られたからには私は、もはや“関係者”なのだと。裏切り者には、死をこの考え方は、昔からあるもので長谷川はそれを暗に言っていたのだ。
長谷川は、シュトレーゼマンにグルジア産ワインを渡してこう言った。
「実りある、両者の誓いに乾杯!」
チンとガラスのぶつかる音のみが、部屋にこだました。
1922年に締結された、ラパッロ条約の強化をこの会話から長谷川は、引き出しました。ドイツの軍事開発に置けるソビエトの立場の向上、ソビエトの軍強化、潜水艦隊と水上艦隊の強化、ドイツ国民の対ソビエト感情の向上を長谷川は狙いました。
同時に、ドイツとソビエトの共同開発により、新兵器の開発費低下、ドイツ移民をソビエトに引き込む為の一手でもあったのです。