サンタクロースの忘れ物 作:春野天使
『サンタクロースさんへ、
今年一年、ぼくはずっと良い子でした。
だから、どうかプレゼントをください!』
ジャックは三度目のサンタクロース宛の手紙を、ポストの中に入れました。というのも、去年ずっと良い子でいたはずなのに、サンタクロースからのプレゼントをもらえなかったのです。
そして、クリスマスの夜。
サンタクロースは大忙しです。なにしろ、世界中の子供たちにプレゼントを配らなくてはいけないからです。赤鼻のトナカイをせかしながら、猛スピードで空を駆け回ります。
そして、夜明け前、ようやく全てのプレゼントを配り終えると、ほっと安心して帰って行きました。
が、白い大きな袋を下ろし、一眠りしようとした瞬間、袋の底に一つだけプレゼントが残っているのに気付きました。
「大変だ!また、やってしまった!」
去年もサンタクロースは、一つだけプレゼントを配り忘れたのでした。気付いた時にはもう夜が明けていて間に合わなかったのです。
「まだ間に合うかもしれないぞ」
星のちらつく空を眺めると、サンタクロースは大急ぎで、寝ぼけ眼のトナカイを起こしました。そして、夜明け前寸前の空へと出発したのです。
「ここじゃ、ここ!」
ようやく、サンタクロースはビルの谷間に挟まれた、小さな家を見つけました。
「この家は分かりにくいんじゃよ」
太めのサンタクロースは、なんとか細く小さな煙突に入り込み、子供の寝ている部屋に辿り着きました。
明け方、ジャックはドシーン!という大きな物音で目を覚ましました。枕元にはリボンで飾られた紙包みが置かれています。今年は、サンタクロースのプレゼントが届いたのです。ジャックは小躍りして喜びました。
みんなにサンタクロースのプレゼントを見せようと、走って暖炉の部屋を通った時、暖炉の灰がそこら中に散らばっているのがみえました。 灰には誰かがしりもちをついたような、大きな後が残っていました。何だろうと思って、ジャックが煙突の上を見上げた時、ヒラヒラと何かが舞い降りてきました。それは、大きな赤い三角帽子でした。
白み始めた空をそりで走りながら、サンタクロースは何度もくしゃみをしました。なんとなく頭が寒いと思って手をあててみると、帽子がなくなっています。
「こりゃ困った。帽子をどこかに落としたらしいぞ」
いいながら、また大きなくしゃみをしました。
「やれやれ、どうやら風邪をひいてしまったらしい」
サンタクロースは、すっかり冷たくなった頭を手でさすりました。赤鼻のトナカイは、後ろを振り返りながら笑いを堪えています。
風邪をひいたサンタクロースは、これから寝込んでしまうかもしれません。けれども、サンタクロースの休暇はとても長いのです。来年のクリスマスまでには、風邪もよくなり新しい帽子も出来ていることでしょう。
この作品も、かなり前に書いた物を少し修正した作品です。空を駆け回るサンタの中にもドジなサンタがいて、プレゼントを配り忘れることがあるかもしれません。たまたまそれに当たったら悲惨ですね。(^^;)