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ティーパーティー  作:栗山沙紀

 雪が深々と降り積もる。辺り一面静かに真白なカーペットが出来上がっていく。見上げるわけにはいかないけれどそのまま佇んでいたいと思った──。



「もう、クリスマスですね」

 貴方がいなくなってからどれだけ月日が流れたのでしょう。私はしぶとく生き続け……平穏無事に暮らしています。

 雪と同じように白くなった髪に、丁寧に櫛を入れ整えていく。鏡を見つめにっこり微笑んで、頬には薄ら頬紅をさし、綺麗に筆で口紅を塗る。満足そうに、そして嬉しそうにもう一度微笑む。

 外の雪を赤々と燃える暖炉の傍で眺めながら、とっておきのティーセットでティーパーティー。隣に置かれる冷めた紅茶だけはどこかもの悲しさを語っている。

「不思議ねぇ、貴方……最近は寂しくなんて思わなくなったというのに」

 八十歳になって、貴方を想うと淋しさよりも愛しさ、懐かしさが胸を包んでいてくれたのよ。なのに今は……切ないわ。と一人思う。いや、先立ったお祖父さんへ語りかけている。

 いつもクリスマスになると貴方と二人でブッシュドノエルを食べながら紅茶を飲んだわね。会話は途絶えることを知らなかったし、ふと途切れてもその空間が居心地良くて暖かな気持ちになれた。貴方が隣に居るだけで……それだけで私は救われた。幸せだったわ。

 それは今も同じ、貴方の面影を想いながらあの頃を嬉しく思い、今元気でいられることを感謝しています。

 ……なのに。なのにどうして涙が流れるのでしょう。なぜ止まらないのですか……?

 ポタリと雫が垂れ、そしていきなり満面の笑みになる。



 貴方……迎えに来てくださったのね。

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