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タイムマシン

作者: 金銅才狸
掲載日:2026/07/26



 僕が高校生の時、友達の一人が高校を辞めた。本人いわく。


「学校をやめてタイムマシンを作る時間が欲しい。じゃあな。俺は今日で学校を辞める」


 だそうだ。

 そう言って去っていこうとした。

 片手でピースをした腕を、後ろの僕に向かってふりながら、彼は学校を辞めると去っていく。

 

 僕はそんな友人を呼び止めた。


「おい待て。タイムマシンってなんだ?」

「俺……。数日前にエフ型タイムマシンを作る方法を閃いたんだよ」


 タイムマシン?

 エフ型?

 なんだそれ?

 聞き慣れない言葉が友人の口からでる。


 僕の友達は数日前に頭が、おかしくなってしまった様だ。

 頭がおかしい時に判断した行動。

 それは、大抵が間違っている。

 だから常識的な僕は、友達の退学を引き止めることにした。


「タイムマシンを作るのは良い。でも、高校を退学するのはやめなよ」

「なぜ?」

「高校に、かよいながらタイムマシンを作れば良い」

「そうは行かない。思いたったが俺の吉日なのだから。ガハハ」


 と、友人は引き止める僕の意見に耳をかさない。友人はかたくなだった。


(何か、策を練らねば。友人の考えを変えることは出来ない様だ? はてさてどうしよう?)


 僕は友人を説得する方法を必死で考える


「そうだ! 仮に君がタイムマシンを作る事が出来たとしたら? その可能性も考えてみておくれ」

「んんん〜? どういう意味だ? わからんぞ?」


 友人が首をかしげる。


「仮に君がタイムマシンを開発したとしたら。君は何にタイムマシンを使うだろうか??」

「???」


 結局その日は友人の説得に失敗した。

 しかし僕は諦めない。

 友人の高校退学は、どう考えても友人の為になるとは思えないからだ。


 僕らは幼馴染。

 友人が馬鹿をやらかす時に止めるのが僕の役目になっていた。

 僕らは友人だから……





 後日、僕は高校の教師にかけあって、友人の退学を保留してくれるように頼み込んだ。


「先生。アイツの退学撤回をお願いします。どう考えても馬鹿げている」

「先生もそう思っていた。ヨシ教頭にかけ合うぞ」


 教師も僕の友人を退学させたくなかったらしい。


 教師は僕の味方になってくれた。

 僕らは校長と教頭に事情を話し、友人の退学を撤回できないか掛け合う事にした。


 教頭は僕らに快く賛同してくれた。

 次に成績優秀な僕と担任教師の二人で校長にかけあった。

 結果、友人の退学は一時的に保留される。

 本格的な退学の撤回は友人本人を説得できれば、との当たり前の条件つきだけれども。


 あとは友人を説得するだけだった。

 が……

 それを知った友人は僕に激怒した。




 近所の空き地にて……


「君は、なんて事をしてくれたんだ!」

「僕は君の学歴と経歴と人生を救ってやったんだ」

「余計な、お世話だ!」


 僕の正論に対して、怒っていた友人はますます激高した。

 でも……僕は正論を続けた。


「世の中には様々な事情で、学びたくても学校に行けない人もいる。それなのにきみと来たら……」

「それこそ大きなお世話だだ」


 怒り狂って真っ赤になった友人は言葉をかんだ。


「何が大きなお世話だ! 君の為を思って僕は……」


 僕は説得を試みる。

 友人はかたくなだ。

 そんな友人に……僕もムキになった。

 なにせ友人の将来がかかっている。

 が友人は……


「自分の人生は自分で決める。君は他人の人生を変えようとしている。それを大きなお世話と言うんだ!」


 と怒って取り付くしまもない。


「大きなお世話、結構じゃないか。自分の人生を何だと思ってる?」

「俺は俺の為に人生を使い潰す。干渉すると許さないぞ」


 全く平行線の僕ら幼馴染。

 コイツに真っ当な説得は効果が無い。

 ならば……

 僕は知恵を絞る。

 考えろ。

 この際、説得さえ出来ればいい。

 理屈も何も無茶苦茶で良い。

 友人の退学を取り消せれば良い。

 そうだとも……


 タイムマシンを作る為に学校を辞めるという無茶苦茶には、無茶苦茶な理屈をぶつけるんだ。


 やべーのには、やべーのをぶつけるのだ


「君はタイムマシンを作るんだろ?」

「あぁ。それがなんだ? 出来ないと思うのか?」


 あらためて考えると友人は結構無茶苦茶言ってるなぁ。

 友人と僕は顔を見合わせた。


「今日は西歴2026年の7月9日、丁度正午だ。今から30分だけ待ってやる。」

「何を言ってる?」

「もしも君が将来タイムマシンを作ったら、この時間にタイムマシンで、やってきなよ」

「!!!」


 僕も無茶苦茶を言うと友人は驚いた顔をしていた。

 どんな無茶な事を言う人間も、自分が他人から無茶苦茶な事を言われたら、混乱するものらしい。


「そうすれば僕は君の退学を認めてやる。出来ないなら、今後君は頑張ってもタイムマシンを作る事が出来ない証明になる。


 タイムマシンを作れないなら、君が学校をやめるのは、ただの無駄だ。そうだろ?」

「!!! 少し待て。その理屈に間違いが無いか考える」


 そう言って

 僕の無茶苦茶な言葉に、友人は腕を組み考えこんだ。

 僕の論理に破綻が無いかと考えているのに違いない。


「良いよ待つよ。どっちみち待つと言っている。だから三十分だけ待ってやる。まぁ僕が待つのは君じゃない」

「なに?」

「僕が待つのは未来の君だ。

 未来の君が三十分以内にタイムマシンでここに来ないなら……君の負けだ。

 

 黙って退学を諦めて真面目に学校に通え」


 と僕は命令する。

 その答えに友人は……


「……一理ある。わかった。それで良い。」


 と素直だった。

 僕と友人は来るはずの無いタイムマシンを、未来の友人を、その場で三十分間待つことにした。


(馬鹿な友人を持つと苦労する。時々馬鹿をする友人に、馬鹿な道を歩ませない為に軌道修正ゆうどうをしてあげないといけない


 僕の友人にタイムマシンとか必要だろうか


 だってさ……、

 僕は馬鹿な友人が不幸な未来に行かないように、毎回友人を説得している。


 コレは僕がタイムマシンのかわりに、友人に、より良い未来を作ってあげているのでは無いだろうか???


 ……つまり……僕の友人は、僕というタイムマシン代わりの友人を、すでに開発、作製していたのである。)



 そうして三十分もたたないうちに

 未来から大人の姿をして、すっかり様子の変わってしまった自称未来の友人がやってきた。


「やぁ、お待たせ。待たせてしまったかな? 少し誤差が出たかもね。タイムマシンは少しだけ時間にルーズなのだ。まだまだ改善の余地があるよ」


 とか自称未来の友人を名乗るオッサンが言ってきた。

 コイツまさか、未来の友人なのか?

 本当にタイムマシンで、やってきたというのだろうか?

 タイムマシンは見当たらないが……


「え??? ホントに未来から来たと?」


 僕は訳がわからなかった。

 僕の友人は未来でタイムマシンを作った?

 僕の友人は僕が思っていたよりも凄い奴だったとでも言うのだろうか?

 だとしたら……

 僕は友人のタイムマシン代わりでは無かった。


 僕は、ただのうぬぼれやだった。

 思い上がっていた。

 これじゃあ僕は、友人をより良い未来に導くどころか、足をひっぱる足手まといじゃないか?



 それでも……

 ソレでも高卒の資格はとってたほうが良く無いか?

 と今の友人に

 そう言うと……


「何度も言わすなよ。中卒でタイムマシンを作れたのが、最高にカッコイイ俺の経歴に……伝説になるんだよ。ガハハ」


 と高校生をやめたがる僕の友人。

 その友人にタイムマシンで未来から来たほうの友人が……


「いや、おとなになってわかったけど、学歴はあったほうが良い。だから、いま俺は夜間高校に通ってるんだよ。」

「えぇ〜」


 ちょっと意外。

 未来の友人は大人になっている。

 いや、当たり前だけど、意味が違うな。


「ここにタイムマシンで来たのは、昔の自分に高校中退をやめさせるためさ」


 と未来から来た友人。


「……」


 高校生の友人は無言。

 未来から来た友人は……


「オッサンになった後で夜間高校に通うのも、高校生の自分が高校に通うのも手間は同じだ。なら高校中退しないほうが良い。」

「未来で何があった?」


 と友人が未来の自分に聞く。


「!!!」

「未来で何も無ければ、未来の自分がここに来て、わざわざそんな事を言うはずが無い。そうだろ? 自分の事は自分が一番知っている」


 と高校生の友人。

 それに未来からタイムマシンでやってきた友人は答えにくそうに……


「未来の夜間高校で……とある最悪な女に出会う」

「女?」

「そして、その女と俺は付き合う事になる。その女に滅茶苦茶酷い目にあわされる未来を変えたい」

「……それさぁ。女に出会ったあとの自分に忠告してやれば? その女は駄目だって」


 と僕が言うと……


「すでにタイムマシンで止めようとしたが、過去の自分は止まらなかった。アノ女に、であった後では未来は変わらない。俺達は止まらない」


 ん〜。

 僕の友人は頑固だからなぁ。

 実際退学を撤回させるのも苦労しているし


「だから出会う前の自分を止めに来たと?」

「君との約束も思い出してね。どっちみち、この時間には来る気だったが、一石二鳥だとも考えた。」


 と未来の友人。


(未来の僕は何をしていたのだろうか?

 友人が最悪の女に酷い目にあわされた。それを止めなかったのだろうか?)


 疑問に思って聞いてみると……


「うん……まぁ未来で忠告はしてくれたよ。聞き耳は持たなかったけど。今の時代の俺が聞き耳持たないように……たまに頑固だろ? 俺は」


 たまにじゃない。

 友人は、いつも頑固だ。


 結局の所、タイムマシンで未来の友人がやってくるかの馬鹿な賭け。

 僕は賭けには負けたが、勝った友人のほうが折れた。

 未来から来た友人の説得のおかげだ。


「退学するのはやめる。しかしタイムマシンを作れる事は実証出来た訳だ。よ〜し。空き時間はタイムマシン制作頑張るぞ。思い立ったが吉日だ。ガハハ」


 友人は、そんな事を言って走って家へと帰っていった。



 あっけに取られる僕と未来から来た友人が残された。

 未来から来た友人は……僕が一人になったのを確認すると……


「俺は未来から来た君の友人では無い。たまたま君達の会話を小耳にはさんだ唯の善良な通りすがりの、いちオッサンだ」


 と衝撃的なカミングアウトをした。

(まじで? 騙された? そういえば肝心のタイムマシンを見ていないな)


「未来から来た友人になりすます、ただの善良なオッサンなんて、いてたまるか!」


 と僕は叫んだ。


「いるさぁ。前途ある若者が高校生を辞めようとしていたら、善良な大人はみんな止めようとするよ」

「……そ、うかな?」


 僕は大人じゃないので、大人の考える事はよくわからない。


(だが、確かに教師も教頭も校長も目の前のオッサンも止めてくれたな。)


「この国は善良なオッサン達に支えられているから、比較的平和なんだよ」


「……」

「仮に善良なオッサンが過去の自分に戻れたら、みんながみんな少なくとも高校生活を楽しもうとするだろう。


 決して自分から高校生をやめたりしない。

 オッサンからすると高校生活は素晴らしいんだから。

 君達若者にも高校を辞めて欲しくない。

 だからタイムマシンで未来から来たふりをしたのさガハハ」


 高校生は羨ましい。

 そう言って笑うオッサン。

 その時……その笑顔を見て……

 僕は、このオッサンが、やはり未来から来た僕の友人じゃ無いかと疑った。


 歳をとって人相も変わっているが、笑顔は小さい頃から全く変わらず、僕の友人のままだったから。


 未来にいく手段を持たない僕には……

 彼が未来から来た、友人だと確定させる手段は無い。


 しかし……もしも彼が未来カラキタ友人ならば……

 なぜ彼は、僕に嘘をつくのだろうか???

 頭に疑問が湧いた。


 未来の友人は、過去の自分を高校退学させたくなかった。

 かつ……

 僕には彼が未来の友人だと信じてほしく無かった。のか?


 どういう事だ?

 考えられる可能性として一番大きいのは?

 なんだ?

 嘘までついて何を隠したい?

 彼が隠したい事?

 決まってるタイムマシンだ。


 つまり……彼は自分がタイムマシンを開発した事を過去の自分には信じて欲しくて、僕には隠したかった。

 と、いう事か?

 何故だろう?


 それも決まっている。

 都合が悪いからだ。

 たぶん僕の事だ。

 僕も自分の事は自分が1番わかる。

 未来の僕が、彼のタイムマシンを使った。

 そして……何かをやらかしたのだろう。


 自分の事は自分が1番わかる。

 僕は……タイムマシンで、やってはいけない何かをやるのだ!


 それを止める為に未来の友人はここに来た? のだろうか???


 正確には、わからない。

 わからないが、僕はタイムマシンに近づかないほうが良い。

 それだけは、わかった。


 僕にタイムマシンを使うなと直接警告しても、たぶん未来の僕は止まらなかった。

 なら、はじめからタイムマシンは開発できなかったと僕に思いこませるほうが早い。


 元々タイムマシンなど夢物語なのだから簡単だろう。


 僕は未来でタイムマシンを使って一体全体、何をやかしたのだろうか?

 わざわざ未来の友人が過去を修正しに来たと言う事は?


 そして未来の僕が未来の友人と……

 一緒に、ここに来ていないと言う事は???

 最悪未来の僕は死んでるか?

 良くて未来の僕と友人は大喧嘩して酷い事になっているな、コレは……


 ……やはり僕はタイムマシンに関わらないほうが良さそうだ。


 ろくでも無い未来が僕に待っている。

 それを……未来の友人がタイムマシンを使って修正しに来てくれたのだろう。


 僕が高校中退しそうな友人を、友人の未来の為に止めたように……

 未来の友人が、これから友人の作ったタイムマシンで馬鹿をやらかす僕を止めに来たに違いない。


 僕らは子供の頃からの友達だからさ。

 それくらいは……

 わかるよ……


 僕は去っていく自称善良なオッサンに向かって……


「アリガトウ。またな!」


 と声をかけた。

 オッサンはふりむきもせずに、右手でピースサインを作って、後ろ手に、その右手ピースをふって答えた。


 それは友人の幼い時から、別れの際に無意識に出るクセだ。


 以心伝心

 長い付き合いだ。

 言葉にせずとも、何を考えてるかなんて、お互いにわかるよ。


 わざわざ未来から、タイムマシンで僕を助けに来てくれる友達だもんな。


 たぶん今の時代の僕の行動が変わらなければ、タイムマシンで更に過去の僕か、過去の友人の行動を変えようとするだろう。


 お互いに僕らは幸せであって欲しいんだ。

 不幸にしてたまるか


 友達だもんな。

 

 僕は未来から来た友人を見送った。

 そしてタイムマシンには、かかわらない事にする。

 友人は高校中退する事を辞めて高校生を続ける事になった。




 タイムマシンを開発した未来の友人は、きっと今も未来から、僕らを見守っている。

 つまり……

 僕らが馬鹿をやらかさなければ、最悪の未来へ行かなくてもいい訳だ。


 友達だもんな。

 見守っている事はわかるよ。

 大きな、お世話だけども、嬉しくもある

 僕たち友達だもんな。

 過去でも今でも未来でも……

 



 僕はタイムマシンを持ってもいないし、今後タイムマシンに、かかわらないけども、タイムマシンよりも素晴らしい友人を持っている。

 

 どんなに素晴らしい物を友人から奪うよりも……

 その素晴らしい物を僕に貸したり、

 僕の為に使ったりしてくれる友人を持つほうが、何倍も素晴らしい事なんだ。


 僕は学習した。


 友人のものを僕のものにするよりも

 友人思いの友人を持てば……

 友人自身も友人の物も結局、僕のもの

 友人の忠告は僕の為に

 僕の忠告も友人の為


 信頼出来る友達ってのはいいなぁ

 僕の友人も僕を失いたく無いから、わざわざタイムマシンを使ってまで、僕を助けに来てくれたのだろう。

 たぶん……


 僕は……未来へ去っていく友人の後ろ姿を手をふって見送った。

 昔……

 遊び疲れた夕方、家に帰って行く友人を見送った、子供の頃の様に……




おもしろかったら下の星ポイント入れてください。お願いします \(^o^)/

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― 新着の感想 ―
応援できればと思い来ました(^ ^) 「僕というタイムマシン代わりの友人」の一節に唸りました。書き手として感心したのは、SFの小道具を友情の物語へ着地させる構成の妙です。別れ際のピースサインを冒頭と…
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