森の優しいドア職人
森の素朴な物語
緑に恵まれた広い森の向こう側に、ドア職人のビラートさんが暮らしています。
今日もお客さんたちの家のドアを修理して、たくさん疲れました。
明日は明日でまたお仕事があるので、ビラートさんはゆっくり眠りにつこうとしました。
(窓から漏れる光がいつもと違うな)
ビラートさんの中にある『ドアセンサー』がザワザワしています。
窓を開けて見上げると、お月さまがいつもより下に下がっていました。
「大変……空のドアが……!」
ビラートさんが声をあげると、お月さまはビラートさんに呟きました。
「ドア職人のビラートさん、ワタシのつなぎめを修理して下さいな」
お月さまは空のドアです。
空のドアが具合を悪くしていれば、空に光が届かない夜になってしまいます。
「はい、今悪い所を修理していくよ。
痛いの痛いの、消えておくれ」
ビラートさんが空とお月さまのつなぎめに、薬をぬるように油をぬると、お月さまは少しずつ上へ上がっていきました。
「ビラートさん、ありがとうございます。
ワタシのつなぎめの修理代、お星さまを四枚お支払します」
お月さまが囁くと、ビラートさんの手のひらに四枚のお星さまがキラキラ光っていました。
「お月さま、お大事に。
そして、ありがとう」
空のドアであるお月さまが元気になって、ビラートさんはその夜素敵な夢が見られたのでした。
月夜に良い夢




