第3話「恨ミスト」
姉レイコと別行動のゼノとリカは、実兄の残忍を追って…死霊狩りを続ける。が、途中討伐資金を稼ぐため、一般人からの怪魔退治の依頼も受けていた。
ここ、ラグビー部の事件を解決したRPGの勇者風のゼノと、セーラ服のリカは、次の依頼をコンビニのイートインスペースで、待っていた…
「その格好気に入ったの?」
「せやな、まだウチもJKに見えるやろ、バブバブ」
「でも、ミニスカの下にガーターベルトって…そそりますね」
「相変わらずゼノ君は、ウチの事好っきゃなぁ…でもあかんで、ウチの想い人はレイコちゃんだけやからバブ。」
「その姉さんは、僕を溺愛してるんだケドね」
「バブ〜ホンマ恋愛って、上手いことイカンな…あっ待って、依頼のメールや」
スマホの受信を確認するリカ。
依頼内容は、取り壊しが決まった団地内で、夜な夜なムカデの化け物が現れ…住民を襲っているという他愛のないモノ。
「で、それは深夜にしか現れないんですか?」
団地の一室で尋ねるゼノと、依頼者の若夫婦がリカの向かい側に座る…それと、可愛い小学生くらいの娘も一緒に。
「ええ、祖父と祖母は襲われ…食べられてしまいました。満腹になったのか、ここしばらくは現れません。でも、娘と妻が心配で…おちおち仕事にも、行けないのです。」
眼鏡をかけた、サラリーマン風の旦那が無表情に説明する。
「警察行ったら、ええんちゃうん?バブ…」
正論を言うリカに首を振る、夫婦。
「そんな絵空事、信じて貰えるわけが…そんな時検索サイトで、貴方達を見つけたんです」
「バブ…ウチらにとっては、願ったり叶ったりやけど。で、ナンボ出してくれるん?」
彼等の商売に相場は無く、基本依頼者の言い値で請け負う事にしているらしい。
「もし、完全に倒してもらえるんでしたら、百万までなら…」
「ヨッシャバブ、交渉成立や。エエやろ、ゼノ君」
何か腑に落ちない表情のゼノだったが、やがて納得した様で
「分かりました。今日から、この家で寝泊まりさせて頂きます…」
「布団は、別々やで…バブ」
何故か、顔を赤くするリカ。
「お姉ちゃん一緒に寝よ」
彼女にイキナリ懐く、依頼者の娘。
その夜夫婦は、自分達の寝室で…ゼノとリカは、テレビのある応接間で…別々の布団で横になる。リカの隣で娘が既に寝息を立てていた。
「バブ…ゼノ、まだ起きてるん?」
「リカちゃん…僕等は、寝ちゃダメだよ。」
「せやかて、疲れとんねん…交代でねんねしょ〜や…バブバブ…スヤスヤ…ZZZZ」
少女を抱き枕みたいに抱っこして、眠る呑気なリカ。
「イヤな予感しかないな…姉さん、僕達を守って」
首にかけているロザリオを、握りしめるゼノ。部屋の中には、何故か霧が立ち込めていた。その時ふと、横に目をやる。
「煙たいな。でも、特に変わった事は…ん、この娘?」
リカが抱いているのは、首から上が無い子供。
「ムニャムニャ…バブバブ…」
目覚める様子の無い、おしゃぶり女。
彼は、そっと起き上がり、隣の部屋へ
ズリズリ…
恐る恐る、ゆっくりと襖を横に移動させ、隣の部屋を覗き込むゼノ。
「やはり、無い…」
同じ様に首の無い夫婦に、近づいてみると…切断面からは、血は流れていない。しかも、呼吸をしている様で、胸元は上下している。
「しまった!この霧、妖魔香か?」
「ご名答っアンタの用心棒ベアードは、もう目覚めないよ。」
あまり美人では無い母親の頭部が、前から飛来し宙に浮き…語りかけてきた。
「残忍様から、お前を生捕りにしろって、命令でな。」
眼鏡を外した父親の頭も、横からフワフワと話を続ける。
「パパ、ママ…食べちゃ、ダメ?」
可愛く無い娘の首の気配も後ろから…
ヌルヌル…ベチョベチョ…カシーンッ!
切取られた3つの頭は、突如這い出て来た…大ムカデの胴体と合体する。そいつの尻尾に、いつの間にか絡め取られているリカ。彼女の口には、拘束具が…
「コイツは、おしゃぶりを外せなけりや、ただの小娘に過ぎない」
3つの頭が、同時に声をあわせる。
ピシピシピシッ!スパスパッ!
ムカデから数本伸びた触手が、剣先に変わり…ゼノの両手両足を、バラバラに切断した。
「くっ…ベアード、起きて!」
「無駄だ、朝まで起きないよ。もうすぐ夜が明けるがな…それまでに、お前を残忍様に引き渡す。」
「兄さんが、来てるのか?」
ボトボトボトッ…
胴体だけで、何とかキープしているゼノの手足の切断面から…流れる落ちる血。
(団地の外)
空間上にモニターを浮かび上がらせ、ゼノ達の様子を伺うレイコ。
「あの、そろそろ行ってあげたら…」
彼女の腰斧が、話かける。
「まだね…ヒーローは、最大ピンチに颯爽と駆けつけるもんなのよ。」
(再び団地内)
「んん〜ん、うっ、うぅ…」
ビシッ!ビシッ!グリグリ…
ムチの様にしなる、尻尾で全身をムチ打たれるリカ…苦しいうめき声しか出せない。さらに顔を胴体から這い出した、太い足で踏みつけられる。
「やめて!その娘は関係無い。僕達兄弟だけの問題だ。」
「そうだな…じゃ、殺すか。」
「グスン、グスン」
ムカデの情け容赦ない言葉に、涙を流すリカ。
(もっかい外)
「もう、いいでしょっ」
斧が動いて、レイコのカラダを引っ張る…
「う〜ん…今ひとつと、言うトコかなぁ」




