第1話 ジェネシス・オブ・エビル
「ゼノ…何処にいるの?」
僕を探す姉さんの声がする…空耳か。でも、きっと見つけられる事は無いのさ。どうしてって?迷ってしまったから、この現実にね。
「ゴメンなさい、ゼノ君」
校舎裏に呼び出された僕は、中学の3年間を共に過ごした彼女、二階堂つぐみに別れを切り出された。
そういえば高校に入ってから彼女は、ラグビー部のマネージャーに昇格し、僕は帰宅部のまま…そしてすれ違いの日々になる。
噂で、ラグビーの部長(通称ゴリ男)と付き合ってるって聞いて、その状況を想像し…吐き気をもよおす。
たまに会釈程度ですれ違う、彼女のクビ元にふと目をやると、内出血の紋章が…見たくは無かったが、その所有の証は、胸元まで続く。
「ベアード、どう思う?」
僕は、自分の身体に問いかけてみた。黒く光る胸部は光り、低い声が響く
「5分割しろ…方法はそれのみだ。」
カチャッ…ガチャガチャ
僕は、ラグビー部の部室に侵入し、扉の鍵を後ろ手に掛ける。
「どうした?彼女を寝取られた男が、嫉妬か。」
筋肉質のその男を切断するのに、数秒しかかからなかった。
足元で、ピチピチ動く手足と頭…
ドス黒い血が、靴裏にへばりつく
「次は、つぐみか」
パチパチパチッ
「やるやん、弟くん。バブバブ…」
口におしゃぶりを咥えた、顔見知りのその女の子は、拍手しながら宙に浮いている。
「リカさん、姉さんは?」
「あぁ、ウチの想い人かいな。せやな、探してんねんけど、見つからへんねん。でも、ハッちゃん無しで、ようこないキレイにバラバラに出来たな。バブ…」
「ベアードの、落雷で切ったのさ。切断面が、美しいだろ」
「ふ〜ん…しかし、きっしょいなぁ〜このゴリラ。ウチ、マッチョ嫌いやねん、バブバブ」
足でラグビー部員の頭をゴロゴロと、もて遊ぶ彼女。
「でもどうして、リカさんがここに?」
「アンタの演劇光線に、巻き込まれたんやんか。おかげでこんな恥ずいセーラ服姿やでぇ…AVかいな、全くバブ」
リカの制服姿に、ちょっとドキドキしてしまう。
「ゼノ君の主観では、話が分かり難いんで、ちょっと説明させてもらうわな。バブバブ…」
(エコーお願いします…デアボ・リカちゃんの、解説コーナ〜!)
あっ、ココだけ標準語ですんまへん。バブバブ言うてる、キモいおしゃぶり女の私と、可愛い少年のゼノ君は、死霊キラー(注)なのだ。ゼノ君の特殊能力を使って、この学園に潜入してるって状況(年齢的に、学生にしてはリカがかなり年上で、ゼノは年下過ぎる感じかな)
あと私が惚れてる、ゼノの姉ちゃんが他にいるんだけど、ここに来る途中…強敵に襲われて、私らだけ逃げて来たって理由。
それでもって死霊を邪悪化させて、暴れ回ってる最悪なボスが…この姉弟と血の繋がってる、長男の〈残忍〉って男だ。
まあ単純な話、ソイツとその部下のバケモンを倒す旅をしてるって状態かな。
(注釈)
死霊に取り憑かれた人間は、48時間以内なら、引き剥がす事が出来るんだけど…過ぎると手遅れで、頭と手足を切断(五分割)しないと倒せなくなる。
キラーのゼノは、物理的退治担当で、私事リカちゃんは、引き剥がしと成仏担当。
でも私は、体内に取り込んだ死霊を使い、支配される事無く、闘う力も持ってるんだ。
(フフ…万能なのさ)
ゼノは、ベアードっていう強力な妖怪を兄に移植され、魂を共有している…
彼の姉レイコは、自由に強い霊を召喚する能力使いの拳精で、私の憧れの存在。(好き好き)
つまり、この三人だけが、死霊に支配されない特権を持っている死霊キラーなのです。
「て、誰に話してるの?リカさん」
「あぁ、ウチのファンのいい亡霊達…」
そう言うリカの周囲には、笑顔の亡霊達が取り巻いていた。
(兄さんに、邪悪化されていない連中か…)
「で、この筋肉バカに噛まれてる、アンタの元カノどうすんの?多分悪い方の霊に取り憑かれてるで、手遅れやな。」
「ゴメン…妖力で作った仮の設定とはいえ彼女をバラすのは、無理」
そう最初のシーンの後、僕はあの娘を
「離せ!クソ妖怪野郎っ」
体育用具室に、縄で拘束していた…
「げ、また安モンのAVみたいなシチュ、バブ…アンタも好っきゃなあ。」
リカは、また品の無いことを言う。
僕は、切なそうな目で見つめる彼女に、戸惑っていた。
「縄を解いてっ、ゼノ君(可愛く)…ゲゲゲッ(声色が変わる)、まぁいいわい見とけよ(まるでオッサン)」
つぐみの首は伸びて、僕のカラダに絡みつく…普通だったらカワイイし、むしろ喜ばしい状況なんだけど。
「マズそうだが…腹に入っちまえば、同じかゲゲ。」
口は、耳まで裂け、瞳は真っ白になり…顔全体に、ナイフで切った様な無数の裂け傷が
ボトボト…
その牙を向けながら、黄緑色のヨダレを垂らす…見るからに汚らしい。
ポチャッ!
その一滴が、地面に落ちたはずみで、リカの顔にかかる…
「ワレ、何さらしてくれとんじゃ〜!バブ」
口から、おしゃぶりを外すと…光に包まれたリカは、巨大化し凄まじい形相になる(でも美人)そして彼女を掴み…両手、両足をその手で引きちぎった。最後に僕に絡みついた首を、自らの手に巻きつけて、スゴイ形相で筋肉を膨張させ、バラバラにする…
ブチブチッ!ブシャ〜!!
「リカさん、顔顔…」
モンスター娘に、手鏡を見せてあげる。
「イヤン、ウチったら」
慌てて、おしゃぶりを口につけ、元のサイズに戻るリカ。
「ゴメンやで、ゼノ君…君の彼女グッチャン、グッチャンにしてもうた。バブバブ」
「いいよ、ただの記憶さ…すぐに忘れる。」
「だって僕たちは、」
「借り物の肉体を持った、偽の存在バブ。」
「ですね…」




