第二十三章 親友ティオとその妹
黎明は正義感、腕っぷしの強さ、優しい子で、多くのともだちにかこまれて遊んでいた。中でも仲の良い少年がいた。名をティオといった。
小柄で病弱な彼は、貴族の子どもたちから格好のいじめの対象となることが多かった。黎明はたびたびその場に現れ、ティオを助け、肩を貸し、時には彼らを堂々と論破し退けた。
ある日、ティオに招かれ、彼の家を訪れた黎明は驚いた。粗末ながらも清潔に整えられた部屋。その中に、小さな女の子がいた。ティオの妹、ミーナ。ふわりとした栗色の髪、恥ずかしそうに微笑む彼女に、黎明の心は一瞬で奪われた。
「この子が……ミーナ。俺の妹なんだ」
「……はじめまして、ミーナちゃん」
その瞬間、黎明の胸に不思議な感情が芽生えた。
(妹がいたら……こんな感じなのかな)
やがて、その感情は淡い初恋の色を帯び始める。黎明はしばしばティオの家を訪れるようになった。時にはミーナと本を読み、時には市場で見つけた小さな菓子を持って行き、一緒に食べた。
「……なんだか、妹じゃなくて、もっと……そばにいたいって思うんだ」
その気持ちに気づいた時、黎明は顔を真っ赤にしていた。
そんな息子の行動を、空一郎は鋭く察知していた。衛星とドローンを駆使して、ティオの家の前にたたずむ黎明の姿を、音声付きで記録していたのである。
「CHUYU、あの子……最近、毎週あの家に行ってるんだが」
『あの子って……黎明でしょう? お父さん、いい加減にしてください。子どもの恋路を覗く親がいますか?』
「す、すまん……つい、気になって」
『そりゃ気になるでしょうけど、ちゃんと信じてあげて。あの子、優しいのよ。きっと素敵な感情を育ててる』
「……甥っ子の恋、気になるだろ?」
『ええ。かわいくて仕方ないもの』
そんな微笑ましい親ばかぶりを見せつつも、空一郎は息子の成長に誇りを感じていた。
一方、黎明は家に戻るたびに思うのだった。
「もし、兄弟ができるなら……女の子がいいな。ミーナみたいに、かわいくて、優しくて……」
その願いは、やがて現実となる。
ある日、アリストリアが体調不良を訴えた。
「ごめんなさい、一郎……最近どうも、朝になると気分が悪くて……」
CYUYUがそっと空一郎に報告する。
『妊娠反応、陽性。初期段階ですが、ほぼ確実に二人目のお子様です』
空一郎は思わずアリストリアを抱きしめた。
「ありがとう……本当にありがとう、アリス」
「ふふ……まだ確定じゃないわよ。でも……嬉しい」
黎明は、そんな両親の姿を不思議そうに見ていた。
その日、家には穏やかな光が差し込んでいた。新たな命の訪れを、誰もが静かに、しかし確かに喜んでいた。




