第十二章 空へ還る翼 と 偵察衛星01
「目標高度到達。通信確立まで──あと120秒です」
ちゅゆの声がヘルメット内に響いた。
空一郎は、機体の操縦桿を握る指先に、懐かしい感覚を覚えていた。
Noös Pouchから展開された“戦闘支援機F-Σ01”──それはステルス性能を持ち,
(といっても探知できるようなレーダー自体が存在しないこの時代、むしろ光学迷彩がmustなのだが)、それは古の名機F-35をオマージュした流線型の機体だった。
「やはり……いいな。この振動。この推力。この音」
かつて、KOMATSU航空教導隊のアグレッサーとして飛び回っていた記憶が、脳内補助チップによって鮮明に蘇る。
高空から彼が放ったペンシル型ミニロケットが、小型衛星を軌道上へと押し上げる。
「偵察衛星01より映像転送開始。赤外線、可視、熱反応、マルチスペクトルすべて対応済みです」
ちゅゆが映像処理を進める中、空一郎は操縦桿を引き、宙返りを行った。
──俺は、空に帰ってきたんだ。
地上では誰も気づくことのない、空からの監視と安全保障。
それが、戦火を未然に防ぐ盾となる。
「この空こそが、我々の国境線だ」
空一郎の声は静かだった。
しかしその目は、炎のごとき信念に燃えていた。