表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時を継ぐ者たち〈The Heirs of Time〉  作者: しゅんたろう
1/37

【第1幕】空一郎の旅立ちと遭難 Prologue(現代)





人が時を越えることなど、空想にすぎない——そう語ったのは、誰だったか。

 けれど、葛城善一にとってそれは“夢”ではなかった。


 タイムトラベル。脳内情報の転送。過去、未来との通信。


 彼が掲げた理論は、学界の片隅で“絵空事”と笑われながらも、誰よりも強い確信と祈りをもって綴られていた。


 それは、亡き妻・アヤを取り戻すため。

 そして、自らの知を託す“未来の子どもたち”のためだった。


 ——孫たち。


 柊陸一郎、海一郎、空一郎 三つ子の兄弟。

 そして末娘の宙結ちゅゆ


 彼らは、善一の光だった。


 善一は、幼い三兄弟と宙結に、科学の不思議と宇宙のロマンを語り聞かせた。

 庭に転がる小石から、夜空の星まで。

 “この世界は観察し、考えることで広がっていくんだよ”と、目を輝かせて話す善一に、子どもたちは夢中で耳を傾けた。


 彼の書斎は、少年たちにとって秘密基地だった。

 ニュートンの万有引力、アインシュタインの相対性理論、量子もつれや超ひも理論の入門書が並ぶ棚に手を伸ばしながら、三人は宇宙の果てに思いを馳せた。


 善一は語った。

 「思考は翼だ。どこまでも飛んで行ける。だが、その翼を信じる心がなければ、何も始まらん」


 空一郎は、特に祖父の言葉に影響を受けた。

 いつも兄たちに一歩遅れていたが、誰よりも行動力があり、困難に立ち向かう力を持っていた。


 陸一郎は論理の人だった。几帳面で責任感が強く、兄として弟たちを引っ張った。

 海一郎は繊細で機械好き。幼い頃から補助脳の試作機をいじり、ロボットを解体しては作り直していた。

 空一郎は無鉄砲で、けれど不思議なカリスマ性を持っていた。

 破れたシャツで野山を駆け、宙結を背負って木に登り、蜂に刺されて泣きながら帰ってくる。

 それでも、翌日にはまた笑って出かけていた。


 宙結は、彼らの太陽だった。

 言葉を覚えるのが異様に早く、三兄弟のケンカを絶妙なタイミングで仲裁し、時には祖父の実験メモを勝手に改良して“もっといい方法があるよ”と提案することもあった。


 善一は確信していた。

 ——この子たちなら、夢の続きを紡いでくれる。


 そして、ある日。

 善一は、彼らに小さなノートを託した。


 そこにはこう記されていた。


 「空間は曲がる。時間は揺らぐ。だが、“愛”と“意志”だけは、決して消えない」


 その言葉は、兄弟たちの心に根を下ろし——

 時を越えて、物語が動き出す日を待っていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ