召喚されしはヤドリギ03
「ヤドリギの力を妾によこせ。そして十年後に自ら滅べ。このふたつの条件を飲むなら明人はしばらくヤドリギに預けよう」
「むちゃくちゃだな」
ヤドリギはあきれ顔になった。
「だが、そうしないとヤドリギも契約を履行できぬであろう? 妾と戦ってもし負けたらどうする? それにたとえ妾に勝ったとしても無事でいられれると思うか?」
ヤドリギは考えた。
ここでもし鬼姫と闘ったとしても、負けないと思うが無傷で勝てるとも思えない。おそらくお互いつぶし合いをする事になるだろう。
そうすると下手をすると此の世に存在する事ができない可能性がある。再度具現化するのに数年は必要だから、その間は明人を守れない。もし魔界へ強制送還されてしまったら、契約不履行になり此の世に二度と来る事ができなくなる。
であればヤドリギも鬼姫と争うことはできれば避けたい
鬼姫も本町を救う時間が足りないから、闘って再度具現化する時間のロスを惜しんでいるのだろう。
「十年後、私が滅びないといけない理由は?」
「明人を独り立ちさせる為だ。明人には本町を救うべきか否かのリトマス紙になってもらうつもりだ。だから明人には自分で決断が出来るようになってもらいたい。だから近くにヤドリギがいると邪魔なのだ。ヤドリギがいなくなった後は最低限の庇護を妾がする事は約束する」
「滅んでも数年で復活するぞ」
「ヤドリギの心臓をもらう。そうすれば七,八年は復活できぬだろう。その後であれば明人もそれなりに成長している筈だからヤドリギが近くにいても問題にはならぬはずだ」
ヤドリギは悩んだ。
鬼姫の提示した条件は無茶だが呑めないほど最悪ではない。最悪はこのまま鬼姫と闘ってつぶし合い共倒れして赤ん坊の明人を一人っきりで放置する事だった。
ヤドリギはそれから五分程考えたが最終的には鬼姫の条件を承諾した。
「では契約を締結する」
ヤドリギと鬼姫は宙に印を描き、それを片手でつかみ取りお互いの掌を合わせた。
パシッと柏手を打ち契約を締結させた。
「ではまずヤドリギの心臓をもらい受ける」
鬼姫がその場に明人を置いて近づいてくる。そして鬼姫の手はゆっくりとヤドリギの心臓に向かっていった。
次回はまた明日の夜を予定しています。
ではでは
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