表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/52

エルがアヤカに弄ばれる02



「ひっく、ひっく、ぐずっ」


 エルは泣いていた。それをあきれ顔で鬼姫が見ている。


「おい、いったいどうしたのじゃ」


 鬼姫がアヤカに詰問する。


 アヤカに散々弄ばれた後にエルは鬼姫の処に連れて行かれたのだ。


「あたしの運気をエルさんに分けただけだだよ。ねえ、神力は回復した?」


 そう言ってまたキスしてきたアヤカからエルが飛び退るように逃げた。


「ちっ! 逃げる事ないでしょう。せっかう神力あげたんだから」


 アヤカが軽く舌打ちした。


 確かに先ほどに比べて体調が格段に良くなっていた。しかし素直に感謝する事は無理だった。エルはアヤカを上目遣いで睨んだ。


「なんかエルってかわいいよね」


 そう言ったアヤカがまたキスしてきた。今度は逃げれなかった。


「ひぃー!」


 エルは悲鳴をあげた。


「かなり嫌がってるぞ、そのくらいにしておけ。話ができぬ」


「別に、ただ神力を与えようとしただけです。まあちょっと弟くんに言えない方法だったけど。それとも弟くんに言っちゃう?」


「い、言えるわけないじゃないですか ひぃっ!」


 アヤカが近づいて来たのでエルがまた逃げる。エルの体が壁に当たって大きな音がした。かなり痛かったが、画面して部屋の隅っこに逃げる。


「ついでにちょっとだけ弟くんに馴々しかったから、かるーく身体に言い聞かせただけよ」


 と、アヤカの携帯が鳴った。着信を見ると父親の仁からだった。


「今、氷川神社から使いが来ているみたい」


 エルの事で話があるらしい。


 との事だった。宮司であるアヤカに疫病神の事で話をしたいとの事だった。


「めんどうだけど、現宮司が会わないわけにはいかないから、ちょっと話を来てくる」


 そういってアヤカがいなくなった。


 エルは鬼姫とふたりきりになった。エルは緊張した。


「アヤカのおかげでだいぶ楽になったと思うが」


 アヤカに何をされたのか知っている様だ。エルは真っ赤になって目を伏せた。とても恥ずかしかった。


「確かにだいぶ楽になりました。で、でも……」


 エルはふたたび涙を流した。


「ところで確認したい事があるのだが、本町に来たのは、明人目当てか」


 好意も敵意も含んでいない世間話のように鬼姫が何気なくそう尋ねてきた。エルは一瞬、身構えて鬼姫を見つめる。敵意は感じられなかった。


「別に責めるつもりはない。ただ偶然だけだとは思えないので知りたいだけじゃ」


 エルは何故自分が本町に来たのか考えた。ペンダントを取りだして鬼姫に見せる。


「明人か?」


「あたしはこの写真を小さい頃から何故か持っていました。なぜ昔から今の明人さんの写真を持っているのかは分かりません。小さいことから、ずっとこの写真の人に会いたいと思っていました。ずっとずっと、その人と会う事だけを考えていました」


 鬼姫からペンダントを返して貰い、それを握りしめる。そうすると少し安心した。


 じっと鬼姫が見つめてくる。エルは鬼姫が微かに笑ったような気がした。


「封印が解かれてからどうやって本町に行ったのか自分でもわかりません。気がつくと本町に向かう電車に乗っていたんです。だから明人さんと会ったときには、もの凄く驚きました」


「無意識に会いに来たということか……。お主は明人が好きなのか?」


 明人の事は好きだ。しかしそれを鬼姫が知ってしまうとどうなるのだろうか。鬼姫が明人を気に入っているのは見れば分かった。たぶん好きなんだと思う。だから、もしエルも明人の事を好きだと言う事が分かったらここに居れなくなるかも知れない。


 鬼姫は本町の神霊候補だと聞いているのでエルを本町に入れなくする結界を張る事は造作もないはずだ。自分にはそれに対抗するだけの神力はないから、結界を張られたら明人とは一緒にいられなくなる。


 でも嘘は付きたくなかった。特に明人の事をどう思っているのかについては自分の正直な気持ちを偽りたく無かった。


 それは寂しい。


「……鬼姫さん。あたしは、明人さんが好きです。大好きです。もう離れたくない


 エルは正直にそう言った。


 まだ明人とは、ほんの数日しか過ごしていないのにもう離れる事が耐えきれなくなっていた。もう明人から離れる事は無理だった。


 鬼姫が微笑した。


「よう言った。そういえばお主は北町の神霊だったの。であれば自分の気持ちを欺く事などするわけがないの」


「今回の事は明人の試練だと考えている。だから明人がどうするのか……。ところでお主はヤドリギの事を聞いているか?」


「いいえ。どなたですか?」


 鬼姫がニヤリと笑った。その笑い方はちょっと腹黒かった。


「ヤドリギというのは、明人を育てた魔族で今は自ら滅んでいている。ただし滅ぶ際に明人はヤドリギに告白をしている……」


 鬼姫は面白そうにヤドリギの事を話し始めた。


 初めはビックリしてただ聞いていたが、だんだん気分が沈んでいった。


「……明人が一七才になってもヤドリギが復活しない時には、明人が復活させるとまで契約している。ちなみにあと三ヶ月で明人は十七才だ。さて、明人はお主とヤドリギのどちらを選ぶのだろうか?」


 エルはヤドリギに嫉妬した。


 それにしても、ヤドリギの事は直接明人から聞きたかった。


「ん? ちょっと待ておれ」


 鬼姫の携帯が鳴った。


「アヤカか。そうか、やはり北町は疫病神を取り返したいと申し出てきたのだな。……とりあえず明日の夕刻まで返事を保留すると伝えておけ。我の名を出してもよい。あと確認してもらいたい事があるのだが、疫病神と一度繋がった縁は北町の氷川神社の宮司であれば切る事が可能か……。ああ、このまま待つ。……。どうだった? そうか分かった」


 それから少し話をしてから鬼姫は電話を切った。そしてそのままどこかに電話をかけ始めた。


「明人か、先ほどから北町の氷川神社の使いの者が来ておる」



誤字脱字その他感想受け付けています。

評価してくれるとメチャクチャ嬉しいです。

ではでは

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ