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エルの過去02



 昔、エルは疫病神でなく幸運の女神だった。


 特定の人に幸運を与える程の力はなかったが北町に少しだけ幸せを上乗せする事ができた。


だから、そのころの北町は比較的幸せで平穏だった。


 エルも北町の人々に愛されで楽しく暮らしていた。


 しかし、ある日、本町で大きな災厄が発生した。


 その余波に北町も巻き込まれてしまう。


 本町を中心にこの辺りの地域は半壊してしまう。人も多く死んだ。


 エルの力ではそれをどうすることもできなかった。それでもエルは必死で祈り、北町に幸せをばらまいた。


 しかし、災厄の影響で北町は疲弊していた。思うように農作物が育たなかったから、飢饉が発生した。


 飢餓で村人が次々に死んでいく。生き残った者も流行病に苦しめられた。


 数年で村人の半分以上が死んだ。


 ようやく本町に隣町に新たな神霊が現れてこの地帯一帯の災厄が祓われる事で人々は救われた。エルは無力だった。それでも自分の力不足を補うために昼夜神に祈った。


 しかし、神の奇跡は起きなかった。


 エルの処には病気の村人が何人も訪れて何とかして欲しいと訴えてくる。それを叶えられないエルはひたすら謝辞した。しかし村人は『できない』とは思わず『やらない』と感じしまう。


 ある時、薄汚れてボロボロになった服を着た女性が同じくらい汚いぼろ布に包まった赤ん坊を助けて欲しいと泣きながら訴えてきた。


 しかし見るとその赤ん坊は既に死んでいた。


 女性は自分はどうなっても良いから、この子だけは助けて欲しいと懇願するが、エルにはどうする事もできない。


「ごめんなさい」


 エルは謝って、死んだ赤ん坊から顔を背けた。


 その日からエルは毎日、北町を見て回った。


 酷い有様だった。


 道ばたに死んだ人間の骸が沢山あった。


 廃家の中を見てみると、布団に入ったまま死んでしまった夫婦の遺体があった。その近くには子供の遺体があった。


 北町は死に満ちていた。


 いたるところで人が死んでいた。


 エルは絶望した。ただ涙を流しながらでも、北町の惨状を見て回った。


 大災厄自体は収まったが、そこから立ち直る力がすでに北町にはなかった。だからこのままだと北町は全滅する。


 繰り返すが、女神であるエルには北町を救う方法はなかった。


「だからエルは落神になって疫病神になったの」


 エルが疫病神になった事で幸運の女神として元々、内に秘めていた運気を北町に放出した。そしてエルは北町の不幸をかき集めた。そうすることで、エルは北町に幸運で満たした。


 エルのおかげで北町は救われた。


 だが、疫病神に落ちたエルに北町の人々は冷たかった。不幸をかき集めた反動か、エルに近付いた者は運気を吸い取れ且つ不運になってしまうから、大半の人々がエルに近づかなくなった。


 それでも氷川神社に元々仕えていた者達は少なかったがエルを必死で守った。しかし疫病神が神霊である神社に人々が参拝する訳がなく、氷川神社はだんだんと衰退していった。


「それに合わせて氷川神社に仕える人の数も少なくなっていったわ。そして最後は一家族しか残らなかったの。ちなみに、私はその一家の子孫よ」


 エルはこのままでは氷川家に申し訳ないと思い、自らを封印して神霊を止めた。その際に、不幸を幸運に濾過するシステムを構築した。


 それはエル自身を濾過装置として不幸を幸運に換えるシステムだった。


「エルが北町からいなくなった事で、そのシステムがうまく働かなくなってしまったの。そして、不幸は他の町には持ち込めないの。つまり今まで疫病神がこし取った不幸は北町に残っていたの。疫病神が溜めていたその不幸が疫病神がいなくなった事で行き場を失って徐々に北町に漏れつづけていて、このまま不幸が放出されると北町でどんな災厄が発生するか分からない状態なの」





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