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ふたたびエルとアヤカ


 翌朝、明人はエルが寝ている部屋に向かった。


 声を掛けて中に入る。


 エルは横になっていたが目はさましていた。明人を見る目がキョどっていた。


 エルに近付こうとすると「こないでください」と言われた。


 掛け布団ごとエルが遠ざかる


「ど、どうしたの?」


 明人は昨日も、今日も避けられてしまい軽く打ちひしがれる。


「そ、それはその、あたしずっとお風呂にはいってないからちょっと臭いから…。近くに来ないでください」


 掛け布団で顔の大半を隠したままで、しかも小さい声だったので明人には聞き取れなかった。


「何?」


 だからエルの声を聞こうと近づいた。


「弟くん、それ以上近付いたらダメだよ」


 アヤカが部屋に入ってふたりの間に割ってきた。


「今からならまだ学校に間に合うから弟くんは久しぶりに学校でも行ってきなさい」


 アヤカがそう言ってきた。


 明人はエルの看病をするから学校になんか行く暇はないと答えた。


 アヤカがニヤリと笑って、手に持っているものを明人に差しだしてきた。


 沢山のタオル。


 お湯を張った洗面器。


「じゃあよろしく」


「……」


「今から何をするか分かるでしょう? エルさんの事はとりあえず私にまかせた方がいいと思うけど。でも弟くんが、かわりにするのも、有りだよ? どうする?」


「うっ。で、でも心配だからもう少し側にいたい」


「もう心配ないって、それは弟くんにも分かるでしょう? んじゃ、ねえエルさん、弟くんに体を拭いてもらう? それに着替えないといけないし下着も換える必要があるわね」


「…アヤカさんにお願いします」


 エルが小さく言った。


「弟くんにはどうしてもらいたい? 弟くんは見守りたいらしいけど、体を拭くところを見てて貰う?」


「明人さん、お願いですから学校に行ってください」


 エルが断言した。


「という訳だ。残念かもしれないけど弟くんはエルの言うとおり学校に行ってね」


「姉さま、へんな事しちゃだめだよ」


「へんな事なんてしないよ。エロい事はするかも知れないけど」


 アヤカは真顔だった。さすがに明人とエルの顔がこわばった。


「冗談だよ。いくら私でも病人にエロい事はしないよ。……せいぜい視姦するくらいだよ。あと、胸は揉むかもしれないかな」


「止めてください」


 明人は本気で自分でエルの世話をすべきか考えたが結局、アヤカに何もしないことを約束させてから学校に向かう事にした。


 エルが右目をしきりに擦っているのをアヤカが気付いた。


「どうしたの?」


「なにか右目に違和感があるんです」


「見せて」


 アヤカがエルの右目を見る。


「うーん、少し充血しているけど」


 そう言ってアヤカが明人を睨む。


「別にどうもなっていないみたいだよ。……弟くん、早く学校行きなさい」


 目立つほどではないがよく見ると左目と色が違う。それにアヤカが気付かない筈がなかったが、明人には何も言わなかった。


「んじゃ、行ってきます」


 明人は家を出た。


 学校に着いて少ししたら明人の携帯が震えた。アヤカからだった。


「鬼姫が怒ってるわよ。理由は分かるでしょう?」


「なんとなく」


「話があるから後で来てって言ってたわ。分かった?」


 学校をサボって鬼姫に会いに行こうかと思ったがが止めた。


「それと、その後は私が話があるからね」


「……」


「弟くん、電話で無言はダメだよ。夜でいいから必ず私の部屋に来ること。いいわね?」


「はい」


 携帯をしまうと、担任の渚に呼び止められた。


 渚は若い女性の教師で男装の麗人のような風貌で女生徒に大変人気がある。明人はちょっときつそうな雰囲気のある渚は苦手だった。


「ちょっと話があるから放課後、生活指導部まで来るように」


 エルの事が気になったので早く帰りたかったがエルが寝込んでいた間、学校を休んでいたので多分、その事だろう。心当たりがあるので拒否する訳にもいけなかった。


「分かりました」


 渚先生が去っていった。


 授業中の暇な時(微妙?)や休み時間にアヤカにメールしてエルの容体を確認した。始めはそれなりの返信がメールで来たが、何度も確認したので、ついに


 『弟くん。いい加減にして。勉強しなさい』


 とアヤカから返信メールが来たきり、明人がいくらメールしても返信が来なくなった。


 エルには明人が何をしたのかまだ説明はしていない。しばらくは内緒にしておくつもりだ。もっともアヤカには気付かれてしまったようだが。



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