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魔法具01

 翌朝、明人とエルは生徒が登校する前に学校を出た。


 北町の氷川神社に向かう。


 事前に氷川洋子に連絡をしておいたので神社の境内で会う事が出来た。洋子はこれから学校に行くから制服だった。なお、北町には高校がないから洋子も本町の魔石川学園に通っている。


 最上学年の赤いリボンをしていた。


「で、魔法具がほしいって事だけど、いくら何でもハイどうぞとは渡せないわよ」


 明人に会うためにわざわざ学校に行かずに待っていてくれた洋子はやや不機嫌な顔をしてそう言った。


 明人はその魔法具の効力を洋子に説明する。洋子は熱心に聞いている。


「ふーん、そんなモノがあったんだ。知らなかった。でも明人くんが私が知らないような事をどうして知っているんだ」


「ある人に教えてもらった。でも名前は分かるが、どういう形をしているのか分からない。だから一緒に探して欲しい」


「心当たりあるわ。付いてきて」


 二度目となる宝物庫だった。もっとも明人が入るのは初めてだったが。


 今回エルは外で待ってもらう。


 奥に進んでいくと扉があった。洋子は持っていた年代物の大きなかぎを鍵穴に差し込み半回転させる。微かに音がするとエルがその扉を開けた。


 洋子が中に入っていく。


「ところでちょっとここは特殊だから、あやかしの血が混じっていると気分が悪くなるかもしれないけど明人くんは人間だから、大丈夫よね?」


「たぶん大丈夫」


「そう、じゃあ入ってきて」


 明人は部屋に入った。


 その途端、心臓が停止する。


 そう言えばヤドリギの心臓だった。


「どうしたの? どこか苦しかったりする?」


 立ちすくんでいると心配そうに洋子が近づいてきた。明人の顔色をうかがう。


「いや、何でもない」


 何故か人間である事を疑われてはいけない気がしたのでとりあえず誤魔化した。


「そう、だったらいいけど」


 洋子が部屋の中を進んでいく。明人も続く。


 そっと心臓を手で押さてみたが、鼓動が感じられない。


「しかし、心臓が止まっても、ちょと苦しい程度で済むのはいったいどういう事なんだろう。……まあ別にいいけど」


 明人は洋子に聞こえないように呟いた。理由は分からないが、自分が人としての規格に外れている事は、小さい頃から気づいていた。だから心臓が停止しても普通に活動できる程度では、いまさら気にしない。


 とりあえず今は幸運の鈴を探し出すのが先決だ。


 部屋を眺める。15畳程度の広さがあり三面の壁には棚が備え付けられている。そこに様々な品々が並んでいたが、洋子がその中から何かを指差した。


 陶器で出来た骨壺の上に無造作に置かれているそれは、腕にはめるミサンガだった。細い紐が幾重にも重なり複雑な模様を描いている。それには小さな鈴がひとつ付いていた。


 洋子がそれを掴んで明人に渡してきた。


「たぶんコレよ。鈴がついていて効力がハッキリしない魔道具はこれだけだから」


「ありがとう」


 明人は礼をして受け取ろうとしたが洋子が後ろ手に隠してしまう。


「あらダメよ。まだあげるなんて言ってないでしょう?」


 確かに、逆に「あげられない」と言われた気がする。


「どうしたら渡してくれるの?」


「どうしようかな。あまり変な事を言うと本町から何か言われそうだし」


「大抵のことはするよ」


「うーん、じゃあさ。もし北町に何かあったら助けてくれるってのは約束できる?」


 明人はちょっと考えたが断った。


「ぼくは本町の人間だからたぶん無理」


「じゃあ、あたしにもし何かあったら明人が助けてくれるってのはどう?」


「そのくらいなら大丈夫だと思う。契約書を作る?」


「別にいらないわ。それに破っても構わないし」


 洋子が断ってきた。


「そんな約束に意味あるの?」


「あるわよ。他の人に、もし私に何かあったら、明人クンが助けてくれるんだと、言えれば十分なのよ」


 明人にはよく分からなかった。


 とにかくその魔法具を洋子から受け取るとエルに腕に付けてもらった。


「なんか力が抜けていく感じがします」


 エルが不安そうにそう言った。


「ちょっと貸してみて」


 そう言って明人がしてみたが何も感じなかった。


「とりあえずしばらくコレをして様子を見て。もし調子が悪くなったら直ぐに取っていいから」


「明人さんがそういうなら」


 エルは不安そうにしながらもそれを腕に付け続けることにした。


「ねえ、私、そろそろ学校に行っても良いかな?」


「あっ、ごめん。すごく使ったよ。ありがとう」


 明人は礼を言って洋子と別れた。


「これでエルと一緒に居られればいいね」


「はい、あたしも明人さんと一緒に居られると思うと、とてもうれしいです」


 恥ずかしそうにエルがそういって明人を見ながら微笑んできた。かわいかった。


 でも、こんに呆気なく問題が解決してしまっていいのだろうか?


 明人は心の中でそうつぶやいた。




 その日の夜、その不安が的中した。


 エルがいきなり意識を失った。



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ではでは

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