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エルとアヤカ 03


 明人は人の気配で目をさました。時計を見るともう夕方だった。


 さすがに寝過ぎだ。


「エル?」


 なぜかカーペットに正座していた。見ると泣いていた。


「おはよう、弟くん」


 驚いて明人は上半身を起こす。エルでなくアヤカだった。カーペットに正座をして明人を見ている。


「姉さま、何故ここに……?」


 明人は起き抜けは良い方だったが状況を把握する事ができなかった。


「前に合い鍵を預かっていたでしょう?」


 そう言ってアヤカが合い鍵を持ち上げて軽く振る。付けられたキーフォルダとぶつかりチャリンと金属音が響く。


 その音に反応するように隣りで何かごそごそと動く気配があった。


 まさか。そっと確認してみる。


「学校休んだから心配して様子見にきたんだよ。携帯にもでないからホント心配したんだよ」


「……」


「でも弟くん、今、私は別の心配をしているの」


「……」


 明人は冷や汗というものを初めてかいた


「ねえ、その子だれ?」


 その子、と指さした先は明人の隣、そしてその先にはエルがいた。明人にぴったり寄り添って寝ていた。


 エルが最悪のタイミングを計ったように寝返りをすると、上半身があらわになる。なぜか裸だった。慌てて毛布を掛ける。


 アヤカを見た。


「ね、姉さま、こ、これは、な、なんでもないんです」


 エルはおそらく外から戻ってきてもまだ明人が寝ていたから一緒に寝ただけだろう。ただ何か着て寝て欲しかった。


「弟くんも男の子だしそう言う事をする可能性も今まで考えた事がない訳じゃないけど……。怒らないから、いえ、怒るけど説明してもらえる?」


「えっと、その昨日たまたま知り合った子でエルというんだ。昨日は徹夜だったから先にぼくが寝たんだけど、ひとりでヒマだったからエルも隣りで寝だしたんじゃないかな、きっと……」


「弟くん、一人暮しをする時に約束した事を覚えている?」


「はい。姉さま以外の女性は絶対に部屋に入れない事」


「それじゃあこの子は何? ひょっとして男の子?」


 すっと、アヤカが立ちあがる。


 思わず明人が後ずさった。背中がすぐに壁に当たる。慌てていたのでエルの胸に手をついてしまい、慌てて手を引っ込める。


「うーん、明人さん。大好きです」


 エルの寝言だった。


「……」


「良かったわね、この子、弟くんの事が好きだそうよ」


「……最悪だ」


 アヤカが近付いてくる。明人は焦る。


「じっとしていてね」


 アヤカが毛布を取り払った。明人は動けない。


 普段からアヤカには頭が上がらない。ましてやアヤカが怒った時に逆らうなんて明人には絶対にムリだった。


 アヤカがベットに片足の膝をついて近付いてくる。手が伸びてきた。


「ちょっと、姉さま」


 明人はアヤカに股間をパンツの上から掴まれた。恥ずかしい。


 すぐに手を離す。


「ふむ」


 そしておもむろに隣りでまだ寝ているエルのパンツの中に手を入れて、ごそごそする。


「わっ!? やめてください」


 さすがにエルが目をさました。


「まだいかがわしい事はしていなかった、みたいね。弟くん、約束を破ったからには家に帰ってきてもらいます。いいですね」


「そ、それは」


「いいですね?」


「……」


「いいですね?」


「はい」


 逆らえなかった。アヤカの口元が微笑んだ。


「着替えは出しておいたから早く仕度をして。すぐに帰るわよ」


 ところで、


 なぜアヤカはまだエルの体を弄っているのだろう? しかしその疑問を明人は聞けなかった。


「うん、あっ、だ、だめぇ」


 状況を飲み込めていないエルが艶っぽい声を上げる。


 ごめんね。


 明人は心で謝った。ここは少しでもアヤカの気持ちを静めるための生け贄になってもらう。


「明人さん、この人は誰ですか?」


 しばらくしてやっと解放されたエルが火照った顔を近づけて囁いてきた。


「姉さまだ」


 するといきなりエルがアヤカに挨拶しようとするが、それを明人は制止した。。


 ここで余計なことをしたら、きっと殺される。見た目も口調も何時もと変わらない表情だが、アヤカがかなり怒っているのが明人には分かるのだった。だから明人はおとなしくアヤカに従う事しか出来なかった。


 明人は素早く着替えた。アヤカがエルの腕を取って外にでる。


 言い訳は家に着いてから聞くから黙って付いてきなさいと叱られる。


「なんかコワイお姉さんですね」


 エルがアヤカに聞こえないように耳元で呟く。明人は首を横に振って否定した。


「な、何を言っているんだい。姉さまはとてもてもやさしいんだよ」


 慌ててフォローすると、ちらっと振り返ったアヤカと目があった。とてもコワイ瞳で睨まれた。明人は恐怖する。死神の方がよほど穏やかな目つきをしている。


 和紙司神社に到着してもアヤカは手を離さずにずんずん進んでいく。


「ちょっとここは?」


 そこが鬼姫が封印されている岩がある部屋だと気づいて声をあげる。しかしアヤカに「静かに」と言われると黙るしかなかった。


 アヤカが岩に近づいて行き手を付く。アヤカが明人の手とエルの手を強引に岩に当てる。


「鬼姫、入れて」



誤字脱字その他感想受け付けています。

ではでは

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