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エルとアヤカ 01


 エルは北町の氷川神社に今まで封印されていたと言う事だった。であれば氷川神社に行けばなぜ北町の結界がエルを拒否したのか分かるはずだ。


 明人とエルは氷川神社に向かった。


 すでに三時を回っていたが氷川神社の巫女である氷川洋子が会ってくれた。明人よりも一,二歳年上っぽかった。聞くと明人と同じ学校の三年生らしい。姉のアヤカの事を知っていた。ものすごくいやな顔をしたのが気になった。アヤカと何かあるのかもしれない。


 洋子の話だとエルは今まで北町の氷川神社で封印されていたらしい。ところが先日、ちょったした事で封印が破られて復活してしまったということだった。


 そして急にいなくなったので洋子達もエルを探していたのだった。


 ちなみに復活後、エルはすぐに本町に向かったらしい。なぜ終電でやってきたのは謎だったが。


「なんで封印が解けの?」


 自然に解ける可能性はあるが、仮にも神社で封印されていたらそれはない。エル自身が自ら解く事は、力がなさ過ぎるのであり得ない。


「えっと、あたしが封印に足を取られて破ってしまったの……」


 洋子がばつが悪そうにそう言った。


「あんたのせいか」


 そう突っ込みたかったが明人は我慢した。


 北町の結界について尋ねると、何故エルが北町に入れなくなったのか正確には分からないとのことだった。おそらく本町の明人と縁が繋がったからエルが本町にいないといけないから北町に入れなくなったのだろうと説明を受ける。


「こちらでも調べてみるけど、しばらく本町で面倒見てもらえないかしら」


「……かまわないけど、神霊なんじゃないの? いいの?」


 エルは以外だったが北町の神霊だった。疫病神を神霊にしている町があったとは驚いた。


「元神霊よ。今までずっと封印されていたんだから、しばらくいなくても問題ないわよ。逆にねえ」


 妙な言い方だった。察するにエルを厄介払いしたいのだろう。直接言うとエルがショックを受けるので、ずばり言わなかったようだ。


「エルの面倒を見るのはかまわないけど、元神霊でも北町にいた方が絶対に良いと思うけど、大丈夫なの?」


「普通はそうだけど、エルさんだと微妙だわ」


 結果としてエルはしばらく秋とが預かる事になった。


 エルの私物がいくつかあるらしいからそれを探させてもらう。


「たぶん宝物庫ににあると思うわ。価値があるものは無かったはずだから好きにもっていっていいわ」


「ありがとう」


 エルが明人の隣りで頭を下げる。両手で明人の腕を掴んでいるので明人はバランスを崩すとふたりで転びそうになる。慌ててエルを支える。


「仲が良いわね。でもだからなんか心配だわ」


「?」


 洋子の言っている意味が分からない。


「まあ余計な心配をしただけだから。気にしないでいいわ」


 洋子がそう言いながら、掌をひらひらさせる。


 それから宝物庫に案内されるとエルが私物を探し始める。宝物庫から出てきたときにエルは小さなペンダントを掴んでいた。


「これはあたしの大切な宝物なんです」


 見つかって安心したのか明人に差し出して見せてくる。それは薄い石がふたつ重なっていた。異なる石を使ってきれいに加工されている。ただあまり高価な物ではなさそうだった。


 それでも念のため洋子にそのペンダントを見せて持って行く事の許可を取った。


「これは昔の勾玉をふたつ使って加工したペンダントみたいね。そんなにめずらしくないモノだし持って行っても構わないわ」


 洋子が触ると石が開いた。


 何故か洋子に不思議そうに見つめられた。


「どうかしたか?」


「いや、なんでもない」


 洋子がペンダントを閉じてエルに渡す。


 エルがペンダントを受け取る時に軽く手が触れた。


 洋子がビクッとする。


 エルの表情が僅かに曇る。疫病神に触れられたら運気を吸われる恐れがあるから、洋子はエルに触れたくないのだろう。それは疫病神に対する一般的な対応だった。洋子が悪いわけではないが、エルの表情が暗くなった。


 軽くキスする。


「な、何するんですか?」


 エルが驚きながら明人に文句を言った。


「いや、何となく。意味はない」


 明人はエルの頭をわしわしした。エルが「やめてください」と言いながら照れる。


「疫病神にキスする人間がいるなんて、信じられない……」


 洋子がぽかんとして明人を見つめる。ただ気を取り直して重い思い切ったように洋子がエルの手を取って握手してきた。


 洋子は良い人だ。


 エルがビックリするが、すぐに明るい表情になった。


 本当に嬉しそうに笑った。


 いい笑顔だ。


 明人はさらにエルの頭をなで回しながら、なんでこんな良い子が疫病神などになってしまったのか疑問に思った。



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