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滅びのとき01


 ある日の朝、ヤドリギに明人の部屋に来て今日の夜に滅びると告げられた。


「……」


「……」


「……」


「……」


「考え直すつもりは、ないの?」


 やっと言葉がでた。


 明人を見るヤドリギの表情は微かに強張っているが普段とあまり変わっていない。。


「ない。ねえ、別に今生の別れではないのだからそんな顔をしなくても」


「でも」


 どうやら明人は泣きそうな顔をしているらしい。ヤドリギに頭を撫でられ、キスをされた。そして抱きしめられた。明人もヤドリギを抱きしめた。


 ヤドリギの口が一度離れる。


「ここまでよく育ってくれたわ」


「それはヤドリギがいてくれたから」


「君には私が知っていることは出来る限り教えたつもりだ。まだまだ教えたいことは色々あるけど、きっと君に必要なのは経験だと思う。だからたくさんの事を経験して。それが君を成長させるはずだ」


 再びヤドリギが唇を近づけてくる。明人は時分からキスをした。お互いの口を貪った。


 ヤドリギはいつも明人に話をしてくれた。


 自分ひとりで判断する事をきちんと経験しろ、と。


 その為にはヤドリギがいると頼ってしまうから邪魔だ、と。


 だからヤドリギは自ら滅する事を十年前に決めた、と。


「……嫌だよ」


 明人は泣いた。


 ヤドリギはすでに受け入れているが、明人は受け入れる事ができない。ただヤドリギとは数え切れないくらい何度も話をしたがヤドリギの意志を変えることは結局できなかった。


 ヤドリギはまた会えるといっているが、明人が調べた限りでは滅ぼされた魔族が復活するのは大体十年くらいかかる。


 ヤドリギにその事を伝えると、今回はすぐに復活すると言っていた。しかし明人はその言葉を信用できなかった。


 鬼姫がいるのだ。


 鬼姫が望んでいるのは明人が明人自身の意志で本町を救うべきかどうかジャッジさせる事なのだからジャッジする前にヤドリギが復活するとは思えなかった。


 ジャッジする前にヤドリギが復活する事は鬼姫が阻止する筈だ、


「決心を変えることはできないの?」


 もう一度だけ頼んだがヤドリギの気持ちは変わらなかった。


「だったらお願いがある」


 明人はヤドリギに願いを話した。


「……本当にそれでいいの?」


 話を聞いた後、ヤドリギがゆっくり言った。


「うん」


 明人は即答した。


 ヤドリギは嬉しそうだった。それを見て明人は心が温かくなる。


 ヤドリギは少し恥ずかしそうだった。何度か喉の調子を整えるように咳をした後に明人にお願いされた事を告げる。


「もしも君が十七歳になっても私が復活しなかったら、君が私を復活させてほしい」


「了解」


「ところで私は何をその契約の代償とすれば良いのか?」


「べつに何もいらないよ。……あっ、ひとつだけある」


「なに? 私に上げられるものなら何でも上げるけど」


「うーん、ちょっと恥ずかしい。でも言うね、あのさ、」


 明人は続けて言った。


「ぼくと結婚してください」


 ヤドリギが複雑そうな顔をしている。それはいつも明人が言っていることだった。前に和紙司仁に聞いたら小さい子供は親に対して必ずそう言うらしい。実際、仁が娘のアヤカに同じ事を言われているのをヤドリギは何度も見ていた。


「またそんな事を言う。君はそんなに私の事が好きなの?」


「うん、一番大好き」


「小さい頃からほんとに変わらないわね。じゃあ君が十七歳になっても私の事を一番好きだという気持ちが変わっていなければ考えてもいい」


 いつも明人に言われている事なのでヤドリギは軽く答える。


「約束だよ」


 ぱっと嬉しそうな顔を明人がする。


 しばらく見ていない可愛い表情だった。だからヤドリギは言った。


「私は年はとらないから、君が十七歳になったら見た目も釣り合うかもね……」


 ヤドリギはそんな冗談を言って、明人を抱きしめて頬ずりした。



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