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明人の日常03 


 その後も明人は鬼姫に会いに行った。


 鬼姫は町の様子を知りたがるので明人が知っている限りのことを話す。しかしヤドリギの事は話題に上がらなかった。


「昨日も何件か殺人事件があったよ。もちろん警察もがんばって犯人を捜しているけどこんなに悪いことをする人がいると手が回りきらないみたい。


 このままだと本町の犯罪率が全国一位になってしまいそうなんだって。それもダントツで。


 だから特別犯罪対策室とかが本町に派遣されるかも、ってニュースでいってたよ」


「そんなものが本町にやってきたところで犯罪はなくならないと思うが……。ところで本町の人々の反応はどうだ?」


「みんな不安そうにしている。ホントだったらみんな本町を出て行きたいと思っているみたい。だけれど本町って仕事はたくさんあるから、出て行きたくても出ていけない感じかな」


「人外の動きは?」


「低魔族は相変わらず。襲われて人が怪我をする件数も多くなってきている。


 ただ死神の方はもっと深刻。死神を倒せる人が限られているから。それに死神が何を基準に間引きしているのか分からないのも辛いところ。明らかに悪人だったら放っとけばいいけど悪人でない人も狙われるから放置するわけにもいかないし。ちょっと判断が難しい」


「間引かれる対象にルールはない。例えば花や野菜を全体として成長させるために間引く時には適当に等間隔になるように間引く。間引かれたモノの良い悪いは関係ない」


「ふーん」


「つまり適切に対象が選ばれているだけということ。悩んでも答えはでない」


「だったら死神に任せておけば全体で良くなるんでしょう? 鬼姫的にはその方が都合が良いのでは?」


「そうでもない。自分の親や知人が死神に殺されて納得できる者がおるか? そんな事を経験した人間は心が病んでいく。病んだ人間は暴走しやすく犯罪に走ったり魔族に憑依されたりする」


「でもそれだったら死神が間引く事自体がそもそも全体を成長させる事とは相反するじゃない?」


「それは人間主観の考え方だ。あいつら神は別に人間を特別扱いしている訳ではない。まあその事を分かっている人間が少ないから色々あるんだが。


 ちなみに死神は別に人間以外も狩っておるぞ。それこそ言葉通り雑草を刈ることもある。


 あいつらにとってその辺に生えている草も人間も同じ価値しかないから人を間引く事で全体が成長すると思っているのさ。


 人間全体の繁栄と考えるから人間にはあいつらのやっている事が無茶苦茶に思えるが町の為とか地球の為という支点で見たら間引く対象が例え人間としては良い人であっても間引く事に矛盾はなのさ。例えば宇宙支点で地球を間引く事もあいつらならやる可能性がある。ただそれは決して人間にとってそれは受け入れがたいであろう? だから死神が町の為にならないと思ったらそれは排除するで、構わないのさ」


「むずかしいね」


「ああ。例えば幸せになりたいと神に祈った者がいたとしよう。そしてその願いが神に聞き入れられた場合、神が祈った者が死んだ方が皆が幸せになると判断すると、神は願った本人を躊躇いなく間引くのだ。


 そんな奴のいいなりになる必要はないと妾は思っている。妾はまず個々の幸せがあって全体の幸せがあるべきだと思う」


「鬼姫は本町の人達にもそれを分かってほしいの?」


 明人にそう尋ねられると鬼姫は頭を掻きながら否定した。


「……いや、分かってほしいとは思っていない。それに今言った事は妾の個人的な考えで、妾の立場では矛盾する。


 つまり、妾の立場では個人よりも町の幸せを優先する。だから町に害なすモノは人だろうと神だろうと排除する。なんの為になるべくして行動しているのか、その視点が皆異なっていると言う事だけを覚えていればよい」


「町の不利益になる場合は魔族でも死神でも狩るって事?」


「イエスだ。ただ、繰り返すが魔族や死神でも町の利益になる場合があるから、全てを狩る、狩らないで分けるような考え方にならない事が大事だ。今、本町は滅びつつあり余裕がないから低魔族や死神は劇薬として必要だと妾は考えている」


「うーん、よく分からない」


「ワクチンでは間に合わないということ。本町は危機感がまだ足りぬ。もっと危機感を持って緊張して将来を憂い自ら変わろうとしない限り妾が神霊になっても意味がない。正直もう本町は腐りかかっている。全て腐るか持ちこたえるか分からぬ。だから正常な部分も一緒に切り捨てないといけない場合があると言う事じゃ。いちいち悪いところだけを切り捨てていたらあっという間に手遅れになってしまう。


 しかし切り捨てられるもの、例えば魔族や死神に襲われた人に本町の為になるから死んでくれと言っても当人は納得しないであろう? そう言う時にはお互いがあがらって、もがくしかないのだ」



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ではでは

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