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勇者は先を急ぎたい

「待ちなさいってば」

 魔術師が俺の肩を掴んで強引に振り向かせた。振り向いた俺の目の前には不機嫌そうに目をつり上げた魔術師の姿があった。


「何だよ。急いでるんだよ」

 言うまでもなく俺はRTAの最中だ。ムダな行動を取っている暇など微塵もない。


「どこ行くのよ。宿はあっちだってば」

 そう言って魔術師が指さしたのは街の奥の方向。つまり俺が向かおうとしている反対方向だ。

「何言ってるんだ。宿には泊まらないぞ。このまま次の街を目指す」


 その一言に俺以外の三人は驚いた表情をした。

「な、何言ってんの? ここまで歩いてきたのに、休まず次の街に行く? あんたバカ?」


「泊まらないと夜中に忍び込めないから困るんだけどなぁ……」

 わけのわからないことを言っている窃盗バカ(シーフ)は放っておくとして、それ以外の二人には今後の予定を話すことにした。もちろん歩きながらだ。俺には一秒もムダにはできない。


「このまま砂漠に入り、遺跡の中で鍵をゲットする。宿に泊まるのはそのあとだ」

 そう言って歩く速度を上げた。


「ハァ? このまま砂漠に入る? 何バカなこと言ってるの? せっかく古都にまで来たんだから休めばいいじゃん。それに、王様に会わなくていいワケ? なんか困ってるって聞いたわよ」


 RTAなのでもちろん街の人から情報収集などしているわけがないのだが、どうやら魔術師こいつはどこからかその話を聞いてきたようだ。

 しかし、この国の王関連のイベントは魔王討伐クリアーに関係ないのでもちろんスルーだ。


「あたし、思ったんだけどさぁ」

 そこで思わぬ人物が話に加わってきた。窃盗マニアことシーフだ。


「古都の店の品揃え、イマイチだったのよねぇ。あれじゃ盗みに入る側も楽しくないっていうか、盗み甲斐がないっていうか……。」

「あんたブレないわねぇ……」

「そうかな? えへへ、照れちゃうよ」

「褒めてないって……」

 斜め上すぎる感想に魔術師もいつもの勢いがない。


「何が言いたいかって言うと、これもやっぱり魔王の影響なのかなって。ショッピングしたり、観光したり、盗みに入ったりするのは、魔王を倒してからの方が楽しめるんじゃないかなって思うんだ」


「お前……」

 俺は、思ったよりもまともな考えを持っていたシーフに感動した。いや、よく考えたら一部まともな考えじゃなかった。


「で、本当のところは?」

「砂漠の真ん中の遺跡、楽しみー♪ お宝の匂いがするよ!」


 前言撤回。やっぱりこいつは窃盗マニアだった。


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