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RTA走者、頭をはたかれる

『ドラゴニック・ファンタジア』のストーリーはこうだ。


 世界を救う勇者の息子(性別は選択できる)として生まれた主人公は仲間とともに世界を旅し、やがて世界のどこかにいる魔王を倒し、生まれ故郷の街に帰る。そこで待ち受けていたのは……。


 オーソドックスだが安定感のあるストーリーと、バランスの取れたゲームプレイによって人気を博した『ドラゴニック・ファンタジア』は発売当初、爆発的な人気となり、社会現象とまで言われた。それから幾年月が流れ、今ではRTAの定番タイトルとして多くのRTA走者に親しまれている伝説的なゲームだ。


 その『ドラゴニック・ファンタジア』RTA世界記録保持者である俺は、当然のことながらこのゲームのすべてを知り尽くしている。敵のHP(たいりょく)や弱点、クリアに必要なアイテムの場所と、そこに至るまでの最短距離、レベリングのポイント、さらにはバグやちょっとした小技に至るまですべてだ。


 どういう理屈で俺がこの『ドラゴニック・ファンタジア』の世界に来てしまったのかは知らないが、世界記録保持者である俺の知識と経験をもってすれば世界最速で『魔王』とラスボスのあいつを倒すことは容易い。

 その暁にはきっと元の世界へと戻れることだろう。


「ねえ、ちょっと……」


 さて、今の状況について軽く説明しておこう。

 今俺は酒場で見つけた仲間たちとともにとある洞窟へ来ている。


 ここには辺境であるこの大陸と世界の中心地である大陸を繋ぐワープポイントが設置されている。

 本来ならばこの洞窟は崖崩れで塞がれていて通行できないはずだったが、この世界のすべてを知る俺は首尾良く通路を塞ぐ土砂を取り除く爆弾を入手し、今ここに来ているというわけだ。


「ねえってば……!」


 この先、中央大陸へと渡り、古都を経由して、まずは砂漠の真ん中にある――


「ねえって言ってるでしょ!」


 ばちこーん! といっそ気持ちいいくらいの音を立てて俺の頭ははたかれた。幸い、俺は防御力に優れる勇者で、はたいた相手は非力な魔術師だからダメージこそなかったが、痛いものは痛い。


「何すんだよ! 人が考え事してる時に!」

 俺は振り返って頭をはたいた相手を睨みつけた。


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