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勇者、仲間たちの過去を知る

「それより、お前はどうなんだよ。どうして魔王討伐の旅に?」

 その当たりの知識のなさを突っ込まれる前に、俺は話の矛先を女剣士に移すことにした。こいつとは確か、城下町の酒場で紹介してもらって出会ったんだ。


「言ってなかったっけ?」

「聞いてないぞ」


 こいつと――というか、こいつらとこういった話をするのはこれが最初だ。何せ、今までは先を急ぐことに必死だったからな。


「……別に、魔王を倒そうとは思ってなかったのよ」

「何だって!?」


 初耳だった。いや、こんな話をするのは初めてなんだから、そりゃ初耳だろう。隣で俺たちの話を聞いていた戦士も目を丸くしていたのでやはり驚いたのだろう。


「そんなたいした話じゃないわよ。あたしはただ、魔法の試し撃ちの相手が欲しかっただけ。生きた相手ターゲットに魔法を試すのにあんたと一緒だと都合が良かったのよ」


「あー」

 妙に納得した。女剣士こいつが魔術師だった頃、この女はモンスターに出会うたびに嬉々として攻撃魔法を連射していたのだった。それこそ、オーバーキルになるほどに。


 転職して剣士になった今はより効率よくダメージを与える方法を模索しているのか、剣に炎を纏わり付かせる戦い方を好んで使用している。オーバーキルなのは相変わらずだ。

 ある意味、首尾一貫しているといえる。


「なーに納得顔してるのよ」

「いてっ!」

 女剣士が脇腹をつついてきた。魔術師時代ならともかく、ステータスも上がった今それをやられると結構痛い。


「それで、あんたはどうなの? どうして勇者にひっついてきたの?」

 そう言って女剣士が話を振った先は賢者だった。王城では姿を見せなかったが、気がつけばパーティーに戻っていて当たり前のように行動を共にしていた。


 賢者はたき火の向こうで手に持った何かを弄って――

 それを見た俺は慌てて自分の懐を確かめるが、やはりあるはずのものがなかった。

「おいちょっと待て! お前が手に持ってるのって、俺の財布じゃねーか!」


 それに対してこそ泥――いや賢者はつまらなそうに、

「ちぇーっ、空っぽじゃん。しけてやがる」

 そう言ってぽーいと俺の財布を投げた。たき火に向けて。


「お、おおおおいっ……! あちっ、あちちっ!」

 間一髪、たき火の中に入る直前に何とか財布を救出した。中身がないのは最終決戦を前にしていろいろ買いそろえたからだというのに。


「ま、そういうわけなのよ」

 賢者は燃えさかるたき火をじっと見つめながら呟くように言った。


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