暴君執着
女帝 クロエ・アルカディア
彼女の異名は悪魔だった。
人間でありながらなぜ悪魔という異名を得たのか
反抗する国々を征服して多くの貴族と王族の首をはねて、利権を主張する教会を焼き払い、裏斬り者ははく製にして地下室にさらした。
そうやって残酷な統治で世界を征服したが、部下と市民の大規模な反乱で結局殺されてしまった。
ゆえに異名を悪魔。
人々にとって彼女は人間より悪魔に近しい存在だったのだ。
でも、この小説の外から来た俺だけは知っている。
彼女は消して悪魔などではないっていう事実を。
誰にも理解されず、だれにも愛されなかったたった一人の少女に過ないっていう事実を。
今回のクロエは悪魔などにならない。
俺が彼女を理解する唯一な人間になるからである。
3人の騎士が木剣をもって俺に近づいてる。
そして俺の手にも同じく、木剣がある。
俺は止まらず動きながら騎士たちが困るような位置に赴く。
場所さえとれば一対多数の戦いにも勝てる。
その考えを証明するように、やってくる3人の騎士は俺の剣劇に一瞬で倒されてしまう。
その光景をバルコニーで見ていた父上が拍手をした。
「見事だヘルマン。数日前とは段違いだな。」
党首の誉め言葉に続いて誉め始める騎士たち。
「お見事です。わかさま。」
「実力がだいぶ上がりました。」
それは事実だ。俺の剣術は一週間前を起点として強くなった。一週間前に俺の前世を思い出してしまったからである。
田中太郎。24歳。剣道選手。それが俺の前世だった。16歳になるまで俺は前世っていうものが存在すると想像もできていなかったが、ある日落馬して頭を打ってから気を失ってる間、前世の夢を見てしまったのである。
それで気づいた事実。
前世の俺は強かった。世界でも敵なしといわれるくらいだった。前世の世界、つまり地球にはあらゆる剣術のことわりを一か所に集めて作られた剣道という武術があり、俺はその剣道の達人だったのである。
「言ってみろ息子よ。どうやってそんなに早く強くなれたのかを。俺たちに隠してひそかに修行でもやっていたのか?」
父上が聞いたが、素直に話すわけにはいかないことだった。前世の経験が俺の体に吸い込まれ、その経験を生かして強くなったっていう事実は。
それから気づいた2個目の事実
それはすなわちここが小説の中の世界だったっていうことだ。それも前世の俺が何回も読んでた小説の中の …
問題はこの小説が戦争小説ってこと。
アルカディア戦記。作者が戦国時代に影響されたのか暇があったらすぐ戦争に走る内容の小説だった。
そういう小説の中に入ってしまった。それが何を意味するか?
俺も戦争に出なければいけない。
しかも有名な騎士の家柄の次男で生まれたからなおさらだ。
噂をすれば、何か月後。すぐ戦争が起きた。
俺の主君。クロエ・アルカディアはその妹のディアナ。アルカディアと家督を争って戦を行った。
俺の主君クロエはこの小説の主人公だった。小説の名前がアルカディア戦記だったから当たり前なことだった。
クロエは戦争の天才だった。数知らずの不利な状況を覆してきたし、小説内の名高い戦争の名手たちに何の不足もない能力を見せながら勝利してきた。
そんな主君が率いる戦争である。安心して出てもいいだろう。もしも全滅してむなしい死を遂げることはないだろうから。
その次は俺を信じることだ。
剣道で積み上げた俺の腕前 を発揮したらいいだけのことだ。
それから待ちくたびれのD-DAY
とある森でクロエの軍隊とディアナの軍隊が対峙した。
俺と俺の家の一員たちは 本陣100メートルぐらい離れた場所に陣取っていた。
俺の目は主君に赴いた。小説の中ではすごく美しいとされていたが実際ではどれぐらいなのか知りたかった。
だけど良く見えなかった。一番目の理由で主君が兜をかぶっていて顔がよく見えなかったし、二番目の理由で距離が遠かったので顔がどうなってるのかまでは見えてなかったのである。
「ヘルマン。初陣だな。」
「はい。父上。」
「緊張しないか?」
「思ったよりは平気です。」
「主君のことが気になるのか?」
見てたのがばれたのか。銀色の鎧をかぶったが俺に聞いた。
「正直そうです。」
「何が気になるのか?」
「護衛が少なくないですか。増やすほうがよさそうに見えます。」
そうすると父上が大きい声で笑うのであった。
「なんで笑うんですか?」
「まあ、見てるがいい」
いよいよ両軍の距離が近づき。
変わった音がする弓矢が空を飛んだ。
「あれは…」
「 弓矢 だ。戦争の始まりを意味する。」
それから鳴り響く太鼓。
騎士たちが命令したら、何千の兵が敵に向かって走った。
それから俺は、父上が何を話したのか理解できるようになった。
「全軍!俺に続け!」
そう叫びながら敵に向け突撃する彼女の後ろには、光が差した。
「美しい…」
長いランスを構えて突撃する彼女の姿はとんでもない美しさだった。
異名である「悪魔」などではなく、空から落ちた天使と言ってもいいほどに。
彼女に護衛などはいらなかった。
俺たちが彼女を守るのではない。彼女こそが俺たちを守る女神様だった。
1時間後、俺の呼吸は荒くなっていた。
「何人斬ったんだろう」
26人までは数えた。でもそれ以上は思い出せない。
「死にそうだ…」
予想してない問題があった。それは俺の体力であった。
前世の俺は毎日地獄みたいな訓練をしていた。ゆえに戦っても疲れない体を持っていた。
今の俺の体が弱いって意味ではない。
前世ほど強くないって意味だった。それでおれは、その事実を忘れていた。
「家の騎士たちは?父上は?旗が見えない。」
周りを見回した。四方に敵しか見えない。
「くそ、興奮して深入りしすぎたか。」
俺の剣術が足りないとは思わない。だったらとっくに死んでた。
ただ、問題は実戦経験だった。戦場で戦うのは初めてだったので入るときと出る時がわからなかった。 俺は敵陣のど真ん中に一人で孤立してしまったのだ。
「いたぞ!」
誰かが叫んだ。すると敵の群れが森から現れた。俺は本能的に剣を抜いて敵を狙った。
現れた兵士の数は20人ぐらい。二人の騎士が混ざっていた。これは難しそうだった。何より俺の体力が不足だったのだ。でも…
降伏すれば捕虜としての待遇を保証する。」
「拒絶する!」
「死に急ぐか!」
あきらめる気はなかった。俺は敵に剣を向けた。20人の兵士と騎士たちが俺に向け突撃してきた。
まずは騎士だ。
騎士さえ殺せば一般兵にはかてる。そう思った俺が先頭に立つ騎士を斬った。それから二人目の騎士を斬ろうとした瞬間。
-ガツン!
真っ二つに折れてしまったのである。
腰にさしていた短剣を抜く前に敵の反撃が俺に走っていた。
くそ、前世を思い出したばっかりなのにこんな死に方でたまるか?
どう生き延びる。でもどうやて?どうしたらいいんだ?!
悩みは長くなかった。後ろから誰かの声が聞こえたからであった。
「放て!」
その上を何十本もの矢が通り過ぎた。俺は本能的に伏せた。
俺を囲んでいた何十人の兵が倒された。それから起きたら…
「…」
そこにはいた。俺の主君が。全身に敵の血をかぶって、悪魔という異名が誰よりも似合う姿で。
「主君」
俺の片方の膝が地面についた。彼女は起きるように手を振って、俺はそのゼスチャーにより顔を上げた。
「この辺に敵の死体が40ぐらいあった。」
「はい。」
「全部おぬしがやつけたか?」
「多分そうだと思います。」
「一人でか?」
「そうです。」
「にわかには信じがたい話だな。」
しばらく何かを考えてた彼女は、自分の剣を俺によこした、
「だから証明しろ。」
「何をですか?」
「今から俺に続け。それから俺の剣を使って武勲を立ててみろ。そうしたら信じる。」
俺は黙って剣を受け取った。そのあとはよく覚えていない。主君とその部下に続いて戦い抜けて、それから何十人を斬ったとおもう。
戦いの後。
「おぬし、名前は?」
「ルマン・シュミッツです。」
「あぁ、シュミッツ家の。」
シュミッツ家はこの小説内の有名な騎士の家柄だった。その中でも俺は前世の記憶を取り戻す前まではエキストラに過ぎなかったけど。
「ヘルマン・シュミッツ。」
「はい。主君。」
「俺の護衛にならないか?」
俺は小説を全部読んだ。初めから最後まで。
小説の中でヘルマン・シュミッツっていう人物は登場しない。数か月前に落馬して頭を打った時点でもう死んでいるから。お
俺が生き残ったこと自体小説にはおこってないこと。
そんな状況なのに俺は主君の護衛にされてしまった。
未来、大規模反乱で死ぬはずの主君の護衛に。
外国人なので日本語おかしいかも知りませんでもよろしくおねがいします