表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のことはどうぞお気遣いなく、これまで通りにお過ごしください。  作者: くびのほきょう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/21

02

アメリアとの違和感が不協和音だとはっきりと自覚したのは、アメリアがジョンストン公爵家へ来て3ヶ月経ち、庭に咲くカルミアの花が綺麗な初夏の頃だった。


メリッサは同年代の令嬢数人を呼び、カルミアが咲き誇るジョンストン公爵家の中庭でお茶会を開いた。第二王子クリストファーの婚約者候補として王子妃教育のために王城へ通っていたメリッサは、第一王子の婚約者候補ハモンド公爵令嬢ジャクリーンと親しくしていて、その日のお茶会にはジャクリーンを筆頭にハモンド公爵家の分家や寄子の令嬢達を招待していた。


「こちら、私の母方の従妹で妹になったアメリアです」

「アメリア・ジョンストンです。皆様、仲良くしてくださいね」


そう言って最近まで子爵令嬢だったとは思えない見事なカーテシーを披露したアメリア。


これは、同年代の令嬢なら気負わず丁度良いからと、アメリアのお披露目のために父に頼まれて開催したお茶会だった。アメリアはジョンストン公爵家に来る前にも子爵令嬢としてお茶会に参加したこともあると聞いていたし、上位貴族のマナーも身につけ始めていたので、子供だけのお茶会ならば問題ないだろうと父もメリッサも考えていた。


「……申し訳ございません。上手に食べれずお恥ずかしいです」


そんなアメリアはシンプルなケーキも上手に食べられないのだと目に涙を溜め、恥ずかしそうに謝っていた。


通常ならばテーブルマナーが身についていないアメリアへ非難の声が上がるはずなのだが、美少女が綺麗に食べようと一生懸命に頑張る健気な姿が同情を誘う。


まだマナーが身についていないアメリア様をなぜお披露目したのだろう。メリッサ様はわざと人目に晒してアメリア様を笑い者にしようとしたのでは?


アメリアの哀れな姿に魅せられた令嬢達はそう考える。中には、これはメリッサの醜態になるのではないかとまで計算するものもいた。メリッサと第二王子との婚約はまだ候補の段階だということを知っていて、婚約者の地位を狙っている令嬢はたくさんいるのだ。


メリッサと同い年で第一王子の婚約者候補のジャクリーンは、実は現ハモンド公爵の弟の娘で、第一王子の婚約者とするためにハモンド公爵が養子として引き取ったという過去がある。本来なら分家筋の伯爵令嬢だったジャクリーンは、由緒正しい公爵令嬢であるメリッサへ密かに劣等感を持っていた。


そんな中現れた自分と似た境遇のアメリア。養母となった公爵夫人と折り合いの悪いジャクリーンは、メリッサを養母に、アメリアを自分に重ね、アメリアの健気な様子を見てメリッサへの憤りを感じたのだ。


「メリッサ様、アメリア様がかわいそうだわ」


一番立場の強いジャクリーンのこの一言で、これはメリッサがアメリアを嘲笑うためのお茶会だったのだと決定してしまった。


メリッサがアメリアをフォローするように声をかけることができていれば避けられた事態なのだが、アメリアが周囲に不勉強を詫びている時メリッサは別の令嬢と話し込んでいたのだ。タイミングが悪かった。ジャクリーンの生い立ちの不運も重なってしまった。


そもそも、アメリアは家族の前ではミルフィーユすら問題なく食べていたし、その日の朝食でも難しい魚料理を難なく食べるほどのフォークとナイフ捌きを披露していたのだ。


アメリアに嵌められた。


メリッサがそう気づいた時には、ジャクリーンがアメリアへ「お茶会のマナーなら私が教えるわ」とハモンド公爵家のお茶会への招待を約束し、令嬢を引き連れて帰った後だった。


その日からジャクリーンは王城でメリッサと会ってもよそよそしい態度をとり、逆にジャクリーンとアメリアは自他共に認める親友として親しくなっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ありゃあ、侵略者は腹黒だったか。 下手したら、ジャクリーンの事情も調べ済みだったんでは。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ