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危機の裏

遡ること約30分前。


見るからに強そうなプレイヤーの集団が遠巻きに襲来したことで怖気づいてしまう健太。


しかも、プレイヤーの集団は既に健太の位置を把握しており、様子を伺いながらジリジリと距離を詰めて来る。


幸いにもプレイヤー達の様な目立つ装備を身に着けていなかった健太は闇夜に紛れることで視認されることは避けられていたが、会敵は時間の問題だった。


眼前に迫るプレイヤー達を目にして慌ててシナモンに助けを乞うが、そんな健太にシナモンは相も変わらずGM武器での迎撃を提案する。



「おい! どうにかできないのかシナモン!」


「ですから、その武器で軽く食い散らかしてしまえばいいのでは?」


「いや…だってこれ剣だし…一人に攻撃している間に他の奴にボコられるじゃないか! 相手は30人も居るんだろう?」



この武器がスゴイのは理解しているが、一人を相手をしている間に他のプレイヤーに攻撃されたらひとたまりもない。


俺はプレイヤーに攻撃された時に感じた痛みがすっかりトラウマになってしまい、とてもじゃないが立ち向かう気にはなれなかった。


しかも、さっきの連中よりも強いプレイヤーの集団なら尚更だ。



(もうあんな痛みはごめんだ! いくらバグで死ななくても気がおかしくなる!)



たとえ死は免れても、それに匹敵する痛みは緩和できないことを身をもって体験している健太はプレイヤー達の一斉攻撃を警戒する。


そんな健太にシナモンは問題ないとアドバイスした。



「大丈夫ですよ。それ、見た目は剣ですけど中身は別ものですから。全ての能力が最高値なので、どの武器や技、魔法よりも早く強く広範囲に敵を蹴散らせますよ! さぁ、大きくあの連中を横に切るようにGM武器を振ってみてください」



形状は別の武器を参照しているGM武器だが、中身は全ての数値・性能が最高レベルである武器。


アンリアルファンタジアに存在するどの攻撃アクションよりも優れており、遠距離からの先制の一手を取れれば一方的に敵を殲滅できると語るシナモン。


そして、そのアドバイスに従って半信半疑のままGM武器を迫るプレイヤー達目掛けて試し振りする健太。



「…ホントだな? 信じるぞ……こ、こうか?」



プレイヤーの集団に向かって軽くGM武器を試しに振った瞬間、武器からもの凄い勢いで赤黒い閃光が大きく弧を描いて広がっていく。



「うわっ!」


(なんだこれ!? さっきは振り回しても何も出なかったのに…)



突然のエフェクト発生に思わず尻もちをつく健太。


剣から発せられたその光は瞬く間にプレイヤー達の集団に達すると、光に触れたプレイヤー達が忽然と姿を消してしまった。



「んっ…あれ?」



急いで俺は体制を立て直してその場に起き上がるが、つい先ほどまで俺に迫っていた大勢のプレイヤー達の姿が見当たらなくなる。


そんな状況が理解できずに混乱した俺は、すぐに背後に居るシナモンに状況を確認した。



「…っ!? き、消えた!? おいアイツ等消えたぞ!何処に消えたんだ!?」


「いえいえ、もう彼らは全員アナタに倒されましたよ。今頃は強制的にホームポイントに帰還させられているでしょうね」


「はぁ!?」



慌てふためく健太に、既にプレイヤー達はGM武器で倒されたことを告げるシナモン。



(これ、攻撃が当たったら無条件で即死なのか!? しかもあんなに遠くまで届くのかよ…ってか、俺はこんなヤバい武器をブンブン振り回していたのか!)



意識がある状態で初めて使用したGM武器だが、その威力は想像以上にぶっ壊れていた。


余りに呆気ない幕引きに俺は言葉を失ってしまう。


ちょっと試しに言われた通り武器を軽く振っただけなのだが、どうやらその一撃でプレイヤー達が全滅したらしい。


人数的には圧倒的に不利だったハズが、シナモンの言う通り一方的な戦いとなってしまった。


そしてその直後にシナモンは、俺が倒したプレイヤー達の動向を探ると言い出す。



「さて、今後のためにも彼らの反応を見てみましょうか。特に【ラゾール】というプレイヤーはかなりの上位の廃課金プレイヤーですからね」


「ラゾ? …さっきもだけど、プレイヤー達の動きを感知できるのかお前?」


「まぁ、私がターゲットした特定の人物だけですがね。不特定多数や目の前に居ないプレイヤー、名前を知らないなどの場合は探れないです」



シナモンは健太が倒した大勢のプレイヤー達の中に突出した廃課金者の上位プレイヤーが居たことを把握しており、何故かそのプレイヤーの様子を確認し始めた。


健太はわざわざ確認せずとも、理不尽な敗北を味わされたプレイヤー達の反応は容易に想像できると考える。



(悪趣味な奴だなぁ…そのラ…なんとかって奴は、どう考えても一方的に倒されて絶対怒ってるだろ)



もしかしたら怒り狂ってまた襲ってくるかもしれない。


俺はそんなことも考えながらも、NPC達に乱暴するようなプレイヤー達への同情は皆無だった。


寧ろこっちは遊びで殺されかけており、到底許せる訳がない。



プレイヤー達の更なる報復を想像しながらも、恩人や自身も殺されかけたことの怒りも感じている健太。


再び襲ってくるのであれば、GM武器で返り討ちにしてやろうとジッと剣を見つめていた。


そして、それから10分程が経過した頃、ラゾールを通してプレイヤー達の動向を探っていたシナモンが口を開く。



「…お待たせしました。どうやら予想外の大敗で即時の追撃は無いようですね。今は一部のプレイヤー達と会議中です」」



まずシナモンは、即時の追撃の心配がないことを真っ先に健太に伝える。


それを聞いた健太はホッと胸を撫でおろしながら、少し残念そうにプレイヤー達の今後の動向について尋ねた。



「もう襲ってはこないのか? ゲスな連中にもっとお仕置きしてやりたかったんだけどなぁ~」



GM武器の性能を目の当たりにし、先程とは打って変わって余裕な態度を見せる健太。


だが、直後にシナモンから聞かされた報告を聞いて肝を冷やす羽目に。



「いえ、何やらアナタを倒すための算段を練っている様子ですよ」


「は?」



あれだけ一方的に倒されたのに、どうやらプレイヤー達は俺の攻略方法を模索しているらしい。


スグにはやってこないが、何かしらの対策を考えてくるということだろうか?


まだまだこのゲームの知識がない俺は、何かプレイヤー達に手段があるのかとシナモンに尋ねた。



「た、倒すって…なぁ、俺はプレイヤー達には倒せないんだろ?」


「理論上は不可能ですが、アナタの感覚までは遮断できません。何かしらの方法で攻撃がヒットした場合の精神的なダメージによる精神的な死は考えられますね。…そのケースを考慮すると一方的に襲撃を受けるこの状況での戦闘継続は得策ではないかもしれません。…ちょっと失礼」


「…っ!? お、おい! 何をしたんだ今!」



現状のままでの継続的なプレイヤーの迎撃はリスクが高いと判断したシナモン。


何やら健太に向かって処置を施すと、青色の光が一瞬だけ健太の身体を包み込むように輝く。


不意の現象に驚く健太だが、この時シナモンはプレイヤー達がいつの間にか健太に付与していたある状態を解除していた。



「プレイヤー達がアナタをマーキングした情報を消したんです。その情報を頼りに付近でこちらを見張るプレイヤーも居ましたし…残しておけば効果が切れるまで永遠に追跡されますからね」



どうやら健太はいつの間にかプレイヤー達にマーキングされており、自分の現在位置などがプレイヤー達に把握されていた。


それは最初に遭遇したプレイヤー達による仕業であり、唐突に未知のモンスターに豹変したNPCと思い込んだ健太をマーキングしていたのだ。


それに気が付いていたシナモンは自身に付与されていた権限の一部を行使し、そのマーキング効果を打ち消す。


この処置によりラゾール達は時間経過でモンスターが消失したと誤認し、付近に待機させていたプレイヤーも程なくしてラゾールの指示に従って撤退していく。

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