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キミは雑草なんかじゃない


  夏。

 僕が住む田舎町は盆地も盆地で、夏はとにかく暑い。

 海もなければ、川も無い。

 あるのは岩肌が露出している山だけだ。


 そんな田舎町の田んぼの脇を通っているあぜ道の一角。

 僕はそこで、ぼーっと空を見上げていた。


 隣には自称雑草の女の子。

 何をする訳でもなく、ただそこで佇む。

 あるのは二人の間で交わされている少しの世間話だけだ。


 六月ももう中盤。

 本格的な夏が来る。



「もう三ヵ月になるのか……」



 僕は誰に言う訳でもなく、独り言を口にする。



「何が?」



 そしてその独り言に反応する女の子、ナズナ。

 これもいつも通りの日常。



「いや、初めてここに来たのが四月だから、そろそろ三ヶ月だなって」



「ああ、そういうこと。そうだね。もう三ヵ月も経つんだね」



 ナズナと遊びに行ってから数週間。僕は変わらずこのあぜ道に通っていた。

 学校が終わるとあぜ道に来て、休みの日も予定がなければ顔を出す。

 特に何をする訳でもない。ただこのあぜ道にいるのだ。



 そしてそれは僕だけではなく、隣に座るナズナもそうだ。

 いや、この奇行に関してはナズナの方が重症だろう。

 僕以上にこの場所にいるのだから。


 そもそも僕はナズナがここに居なければこんなあぜ道には来ない。



「それにしても暑いね。どうする? 今日は駐車場の方に行く?」



 ナズナは忌々しくも真上に浮かんでいる太陽を見るや聞いてくる。

 彼女の言う駐車場とは以前、食事をした場所だ。

 桜の木が日光を遮ってくれるのでこういう炎天下の日にはそっちに移動することが多い。



「そうだね。そうしよっか」



 僕とナズナは立ち上がると、あぜ道から舗装された道路に出る。

 そしてそこから数十秒歩くと駐車場に到着した。

 

 駐車場からはあぜ道はもちろんのこと、住宅街や、岩肌が露出している山も見ることができる。


 

「ナズナは夏の予定ってあるの?」



 駐車場に腰をかけると僕はナズナに話しかける。


 

「ん~。特に無いかな。私は普段と変わらずここにいると思うよ」



 当たり前のことのように言うナズナ。

 僕達の中ではそれは普通のことを言っているように感じるが、これを客観的に聞いたのならば、きっと変人に見られてしまうだろう。


 何もないあぜ道に高校生が通う。

 こんな異常なことはそう多くない。


 しかしこれが僕とナズナの日常。

 

 まぁ、僕はここにいる以外のナズナを知らないのだけども……。



「キミは? 私は無くてもキミにはあるんじゃない? ほら友達とか家族とか」



「……僕も予定はないよ。学校の友達とも予定は立ててないし、家族もたぶん仕事」



 ここで言う学校の友達は一年生の頃の友達である。

 今ではその元クラスメイトは新しいコミュニティで楽しんでいることだろう。



「そっか。私も同じ。私達は変わらないね~」



 軽い口調でそう言うナズナ。

 


「まぁ、あれだね。よくナズナが言う”雑草”だよ。僕も雑草なのかもしれないね」



 ナズナが雑草ならば、僕も同じ雑草だろう。

 ここに通うようになってから三ヵ月になるし、普段からここにいるからね。


 あぜ道に集まる男女。通称雑草。

 うん。良い。

 僕は自分の言った言葉、そして思考に一人うんうんと頷くと、ナズナの方を見る。

 するとナズナは僕の言葉に対して、至って真面目な声でこう言った。



「……違うよ。キミは雑草じゃない。雑草なんかじゃない」





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