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意地悪なナズナ


 なんでこんな所にいるのだろう……。

 僕はできるだけ周りの人と目を合わせないように全力で俯く。


 ことの発端はナズナの提案だった。

 見たいものがあるからということでナズナに付いていったのだ。


 ズンズンと歩いて行くナズナの後を追うこと数分。

 到着したのは女性服を取り扱うお店が多く並ぶエリアだった。


 中には下着なんかを置いてある店もあり、中々に目の置き場に困ってしまう。

 そしてなによりも僕の周りには女性しか居なかった。

 周りを見渡しても男は僕一人だけ。


 できるだけ人を見ず、周りを見ず、ただ立ち尽くす。



「ふふ。ごめんね。こんなことに付き合わせちゃって」



 隣ではナズナがいつもの悪い笑みを浮かべていた。



「本当だよ。僕、こういうのに慣れてないんだから」



「うん。見れば分かるよ」



 と、口元を緩ませるナズナ。

 本当に止めて欲しい。


 自意識過剰なのは分かっているのだが、なんだか周りにいる女性達が僕を見ている気がしてしまう……。


 僕は精一杯息を潜めることに集中する。



「あ、これ良いかも」



 そんな僕の気を知ってか知らずか、ナズナは良い服を見つける度にお店に入っては吟味する。

 それに黙って付いて行くことしかできない僕。

 本当に恥ずかしい。



「ねぇ、これ良くない? って、そんな余裕ないかな」



 流石に悪いと思ったのだろう。おちょくる笑いから、苦笑に変わるナズナ。


 

「もう限界かな? ちょっと早いけどお昼でも食べに行く?」



 ナズナの気遣いが僕の心にダメージを負わせる。

 流石にそこまで落ちぶれてない。


 僕は気張ると、顔を上げた。



「いや、大丈夫だよ」



「そう? 本当に無理なら言うんだよ」



 そう言って僕の身を案じてくれる。

 こういうところは優しい。



「それで、これ良くない? 少し私には可愛い過ぎる気もするけど……。どう思う?」



 ナズナは一着の服を体に当て、僕に意見を求める。

 僕に見せた服はワンピース。上は黒の七分丈になっており、下は薄いピンクのフレアスカートで、可愛いの代名詞のような服だ。


 普段、カジュアルな服を着ていることが多いナズナだが、これはこれで似合っていると思う。

 僕は思った感想をナズナに伝えることにした。



「うん。良いと思う。似合ってるよ」



「そ、そう? でも私に合うかな? 今着てるやつでも結構チャレンジしたんだけど」



 と今日着ている淡い色のロングスカートを見て、頬を掻く。



「結構似合ってると思うけどなぁ。少なくても僕は良いと思うよ。ナズナの普段の恰好もイメージに合っていて良いけど今の服も、持っているその服も可愛いと思うよ」



 僕がそう言うと、顔を背けるナズナ。

 そして何か一言小さく呟くと、大きく呼吸をしたのだろう。肩が上下に動いたと思えば、途端に振り向き僕の方を改めて見る。



「そっか。それなら……。買おうかな」



 そう言い残し、僕を置いてレジへと歩き出すナズナ。

 怒らせてしまったのだろうか……?


 僕の心配を他所に、買い物を済ませて店を出る。

 何も心当たりがない……。


 ここは素直に聞こう。

 そして、素直に謝罪だ。



「あ、あの……。怒ってる? 何かしちゃったならごめん」



「え!? 私は別に怒ってな――、いや。怒ってるかも」



 ムスッとした表情を浮かべたかと思えば、今度はニヤニヤと悪い笑みを見せるナズナ。



「あの……。ナズナさん?」



 嫌な予感がする……。



「うん。怒ってるよ。だから――こっち」



 そう言うと僕の手を引き、あるお店へと入って行った。




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