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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

敏腕悪役令嬢が本気を出したらどうなる?こうなる!

作者: 明。

 今日は卒業パーティ。ここは卒業パーティの会場だ。私は今日、学園を卒業する。そして、この国の次期国王として政務漬けの日々になるだろう。だが、その前に片付けねばならない事がある。側近たちに目配せする。皆が自信たっぷりに頷いた。


 私は、間違っていない。今こそ悪を断罪する。


「卒業生代表、ムルノウルド=カスケディア殿下。壇上へおこしください」


 司会が私を呼ぶ。私は側近たちと壇上に上がった。異変を察した司会から拡声の魔具を奪う。


「卒業生挨拶の前にすまないが、皆に聞いて欲しいことがある」


 どよめきはしたものの、少しだけだ。皆が私の話を聞こうとすぐ静かになった。


「アルクージョア=ワルプルギス!! 貴様の悪事をここで明らかにし、私はお前と婚約破棄する! 貴様のような悪辣な者を王妃にするわけにはいかぬ!」


「わかりました、喜んで」


「そうかそうか、そんなに私と………ん?」


「喜んで婚約破棄いたしますわ。それから、そもそもわたくしは殿下にバレるような悪事はしておりません。悪事をするならば、露呈させるなど愚の骨頂!! わたくし、そんな三流の仕事はいたしませんわ!」


 どこからツッコんでいいかわからん。しかし、証拠は揃っているのだ。こちらの優位に変わりはない。


「では、証人がいることについては?」


「偽証でしょうね。そんなもの買収なりなんなりいくらでもできますわよ。念の為確認して差し上げますわ。連れてらっしゃい」




 そうして連れてこられた下位貴族の令嬢達。アルクージョアが怖いのか、全員震えている。


「君たちの身の安全は私が保証する。証言してくれたまえ」


 私の言葉で勇気が出たのか、令嬢達が証言する。教科書や制服の破損。最後の方は狙って花瓶を落としてきたり、階段から突き落としたとまで。なんと卑劣な女なのだ。


「申し訳ないですが、わたくしはその目撃時刻には公務がありますので学園におりませんわ。城の兵士が出入りをチェックしておりますから、そちらに問い合わせていただけますか? それにわたくし、そんな可愛らしいイタズラなんてしませんわよ」


「か、かわいくなんかないですぅ! 私は本当にアルクージョア様が怖くて……!!」


 震えるヒロイーアンをそっと抱きしめる。彼女はわたしが守ると決めた。側近達もヒロイーアンを慰めている。


「見損なったぞ、アルクージョア! 嘘をつくな!!」


 アルクージョアはキョトンとしながら首を傾げた。これは……本当にしていないのか? 心当たりがない様子だ。腐れ縁とはいえ長く過ごしていたからわかる。アルクージョアは本気で知らない反応をしている。つまり、アルクージョアの取り巻きが真犯人?

 思考を整理しようとしていたら、アルクージョアが発言した。


「殿下、わたくし本当に心当たりがありませんの。貴女達、本当に見たのはわたくしなのかしら? それとも、わたくしに見せかけるため変装した誰か?? そもそも、友人が危険な目にあう瞬間を見たのに助けなかったんですの? それからわたくし、正式な形で彼女に会ったのは今日が初回なのですが?」


 アルクージョアの言葉に、場が凍りついた。ヒロイーアンの目は泳ぎまくっている。つまり、ヒロイーアンが嘘を? 困惑していたら、アルクージョアが更に付け足した。


「それに、わたくしが本気で目障りだと思ったなら、そちらのお嬢さんは首と胴が泣き別れですわ。もしくは、精神的苦痛で崩壊するように臓物で部屋を飾り付けたり、排泄物で埋め尽くしたり、実家の事業がうまく行かずに没落させて借金奴隷にしますわよ」


 怖い! この女、マジでヤバい!! 笑顔で言うことか、それ!! 周囲もドン引きしていて、会場は静まりかえっていた。

 アルクージョアは更に言った。これ以上何を言おうと驚かない自信があるぞ、私は。


「殿下、わたくし……貴方の悪事を知っていますわ」


 ざわり、と体感温度が下がるのを感じた。これは……殺気!? 目の前の美しいアルクージョアは笑顔なのに、どこまでも冷たく感じさせる瞳をしていた。


「そんな……まさか……」


「殿下にしては頭をお使いになられたようですが……わたくしはわたくしを裏切る存在モノを許しません。選ぶ相手を間違えましたわね。この話を国王夫妻にしましたが、笑っておしまい。貴方を信じてるのですね」


「は、ははははは!! あ、当たり前だ!両親は私を愛しているのだから!」


「ですから、もうこんな国いらないわ。わたくしを暗殺しようとする殿下も、それを容認する国王夫妻も、わたくしに躾と称して虐待する側室たちも、なにもかも!!」



 アルクージョアが血を吐くように叫ぶと、騎士が一斉に襲いかかってきた。



 あっという間に騎士見習い達が無力化されていく。私を始め、ほとんどの貴族が魔封じをつけられて床に転がされた。


「だから申し上げたではありませんか。わたくし、悪事はバレないようにいたしますのよ。正確には今回の場合、正当防衛だと思いますけれども。先にわたくしを殺そうとしたのは、殿下ですもの。それさえなければ愛人の一人や二人、許してあげたかもしれませんのに」


 見たことがないほど晴れやかに微笑むアルクージョアを眺めながら、私は囚われの身となった。そして、私の生活は一変した。







 国は属国となり、隣国に支配され、国ではなくなり隣国の領地になるそうだ。アルクージョアは私が暗殺を企てたと知り、少しずつ少しずつ、我が国の兵士を隣国の者とすり替えていたらしい。あの卒業パーティにいた大貴族は、国王夫妻も含め捕らえられ、城も占拠されていた。恐るべき手際である。

 両親である国王夫妻は隣国との協定を破って戦争を仕掛けようとしていたが露見し、処刑。側室達はアルクージョアに悪質な嫌がらせや虐待、横領をしていたので奴隷落ちして悪辣な貴族に売ったそうだ。

 私の取り巻きだった令息達は廃嫡され、国外追放となった。彼らを切り捨てた家は、なんとか潰されなかったものの、領地の規模を大幅に縮小され、降格されたそうだ。


 ヒロイーアンは実は隣国のスパイだったからおとがめなし。アルクージョアに捕まり、スカウトされたらしい。正式な形以外では会っていたとか……そこはどうでもいいか。本人がこっそり会いに来たのだが、『あの人ヤベェっす! パネェっす!』と言っていた。スパイを捕獲しただけでなく、経歴まで調べ上げていたそうで、恐怖を感じたそうだ。

 アルクージョアに怯えていたのだけは演技じゃなかったらしい。


 結局、私は彼女の掌の上で踊っていたに過ぎなかったのだ。今にして思えば、ヒロイーアンは私を誘導していた気がする。彼女を暗殺するように仕向けさせたのだろう。私はきっと、アルクージョアに試されていたのだ。そして、私は道を踏み外した。虎の子を子猫と勘違いして、簡単に御せると甘く見た結果がこれだ。



 つまりは私が、間違っていただけなのだ。



 アルクージョアはその後国を売った責任を取り教会で罪を悔いる予定だったそうだが、隣国の王太子に熱烈に口説かれ、渋々結婚して王妃になったそうだ。


 なんで知ってるかって? わざわざ教えに来るんだよ、王太子が! そして、私の両親がいた頃より国は栄えている。この幽閉された塔からですら、それが理解できるのだ。だから、私の役目はもう終わり。王となる以外の生き方なんて知らないし、王太子が自決用の毒までおいて行ってくれた。


 私の負けだよ、アルクージョア。君を恨む気持ちが無いとは言わないよ。嘘になるからね。だが、先に君を害そうとしたのは私だ。悪いことをしたなら、罰を受けなければね。

 さようなら。次は間違えないといいな。





結論

敏腕悪役令嬢が本気を出すと、国が滅ぶ。 

なんとなく書きたくなったので書いてみたところ、ナニコレ感が半端ないのですわー。


最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ずっと思ってました。 伯爵以上の高位貴族は独自の暗部を持っている筈。 その暗部の力を以てすれば、下位貴族の令嬢を永遠に行方不明にしてしまう事くらい容易い筈だ、と。 また、親に頼めば、下位貴族…
[一言] うん、明。先生ちょっと寄り道病が出たんですね(笑) 殿下が素直すぎる… 悪あがきしないタイプって珍しいなぁ… まぁ…アルクージョア様の本性知ったらそうなるか☆ 公爵令嬢の嫌がらせがあんな…
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