不動産投資の勧誘が来ました
先日、「自分でレコーディングをしたい」と言う友人アーティストの元へ、セッティングなどをレクチャーしに行ってきた時のこと。
マイクをオーディオインターフェイスという機器に繋いで、音量レベルを調整していると……。
チャイムとともに、「ドンドンドン!」というけたたましいノック音が響いた。
二人ともびっくりしてしまって、思わず息を飲む。
するともう一度、今度はノックと共に、
「ドンドンドン! OOOXXX、不動産のOOOXXXX!!!」
という声が聞こえた。
友人は小声で「怖いから居留守してやり過ごそう」と言ってきたが、自分は「不動産」と聞いてちょっと思い当たる節があり、「もう来ないよう追い返すから」と諭し、ノックの主と対面した。
以後、相手と自分のやり取りを、覚えている範囲で記してみたいと思う。
相手:あ、すいません、今ちょっとお時間よろしいですか~??
自分:はあ
相手:私こういう者でして(社員証らしきものを見せる)
自分:はあ(がっつり見て氏名と社名を記憶)
相手:私共はですね、皆さんの資産管理のお手伝いと言いますかね、より良い運用方法のご提案をして周ってるんですけどね、実はこの物件て家賃高いの知ってます?
自分:(友人の家賃を知っている上で)そうですかね、妥当かなと思うんですけど。最近開発も進んでる地域ですし。
相手:いやいや割高なんですよ、そもそもこの地域自体、他より相場が高いんですよ!
自分:はあ
相手:それでですね、一生賃貸に住むと損なのも知ってます?
自分:そうですかね、マンションとか持ち家買っても資産価値がどうなるかわからないし、修繕費とか固定資産税とかもバカにならないと思うんですけど。
相手:(こいつ、わかってないなみたいな顔で)違うんですよ~~ほら誰だっけ、安倍さんの後の……
自分:菅さんですか?
相手:そう、菅さん! アベノミクスとか知ってます?(知ってるわ!) あれで住宅ローンも安くなってたんですが、それが菅さんに変わって、今後は上がりそうなんですよ~。だから今のうちにローン借りて物件買った方がお得ですよ!
自分:え、本当に上がるんですか!? 金利が安くても不景気で借りる人少ないのにどうやって上がるんですかね?
相手:(固まる)
自分:そもそも何のお話でしたっけ?
相手:あ、私共はですね、皆さんの資産形成のお手伝いをさせてもらおうと、色々ご提案していまして。ちなみにご職業は何を?
自分:初対面の人に自分の職業とか言う必要ありますかね?
相手:あっいやごめんなさい、この時間にお家にいらっしゃるから何をされているのかと、もしかしてユーチューバーとかですか?
自分:違います。今更なんですけど、自分ここの者じゃないんですよ。もう来ないよう言ってくれって頼まれましてね、それでは……
相手:いいですか、マンション買うときも気をつけなきゃいけませんよ、それで……OOXXX!!!
ドアの向こうでは相手がまだごちゃごちゃ言っていたが、構わず閉めた。
もう少し話を聞いても良かったのだが、ツッコミどころが多すぎる上、こちらをバカにする喋り方に腹が立ってしまって、時間の無駄と思ってしまったのだ。
「架空請求詐欺と対決!」のような、パンチのあるやり取りでなくて申し訳ない。
さて、自分がなぜ応じたかというと、もしかするとサラリーマンなどに不動産投資をもちかける会社かなと思ったからなのだが、記憶した会社名で検索してみるとビンゴのようだった。
サラリーマンの被害者が続出している不動産投資詐欺の手口とは
https://owners.media/beware-of-fraud/
会社へのクチコミは星1祭り、被害者の怒りの声であふれていた。
はっきり言って、不動産投資など素人に簡単に出来るわけがないし、ましてや現総理大臣の名前も知らないような人に、資産運用の相談など出来るわけがない。
「投資の失敗=破産への直行便」素人貶めるセールストーク2選
https://gentosha-go.com/articles/-/26884
不動産投資のような「クローズド」な錬金術が簡単に出来たら今頃、誰しも投資でお金持ちになっている。
この手の勧誘と接したことはなかったので、後学の為と思ったが……ストレスが溜まっただけだった、今後はもうやめとこう。
その友人関連で以前にもう一つ、ちょっとした出来事があった。
友人が引越しをした際、銀行に住所変更をしに行った時のこと。
自分も一緒について行ったのだが、ひと通り手続きが終わった後、担当者が唐突にこう切り出した。
「ところで、外貨預金のご準備はお済みですか?」
は? と思った。
友人はこの手の話に疎いので、しばし口籠もっていると、
「このまま円で持ってても損ですよ?」
担当者はあっけらかんと言い放ったのだ。
考え込む友人に、「いきなりじゃわからないから、帰って考えたら?」と助け船を出し、二人、その場を逃れたのだが……。
きっと、その担当者は友人に、銀行側にメリットが多い「外貨預金」をさせたかったんだろう。
一見、「南アフリカランド」などの高金利は、ゼロに近い日本の預金利率に比べれば魅力的に見える。
だが、「外貨預金」はその高金利メリットを簡単に吹き飛ばすほどの為替変動リスクとバカ高い手数料で、元本割れの可能性がバリバリにある。
そんなハイリスクな金融商品を「ご準備はお済みですか?」などと、やって当たり前のようにもちかけるのはどうなんだろう。
投資信託や国債もそうだが、この手の話をもちかけてくる場合、銀行は客の損得よりも、客からいかに「手数料」を抜くかを考えている。
なので、外貨預金のパンフレットなどにはデカデカと利率の高さをアピールしながら、隅っこに小さ~く、バカ高い手数料が書いてあったりする。
「大手金融機関がアコギな商売をするなんて」と思われるかもしれないが、最近でも「かんぽ生命の不正契約問題」が明らかになったばかりだ。
繰り返すが、「投資でお金を増やす」というのはかなり「クローズド」な世界で、本当に稼げる手法などは一般にはほとんど出回らない。
逆に、客の「儲けたい」という心(射幸心)をあの手この手で食い物にしようとしてくるから、一切手を出さないに限る。
最近ではオンラインサロン詐欺などの手口もあるそうだ。
「1万円だけなら」が悪夢の始まりに… オンラインサロン詐欺の手口と被害者の後悔
https://news.yahoo.co.jp/articles/b71cf67d9476834a10172180aba81a758f79176c
*本文中より
ーー(オーナーが)地球上の善と悪が戦っていて、悪が滅びると言い始めた。そうなったとき、今の金融のシステムが全部壊されて、順番に貨幣価値が変わっていくと言っていた。3000倍から4000倍の価値になると言って、外貨購入を勧めてきたーー
「悪が滅びる」なんて、どう考えても無茶苦茶な話なのだが、この手のトラブルは後を絶たないという。
投資情報にお金を払うと、その払った分儲けよう、損をしたくないという気持ちになり、いざ損をするとさらにその損を取り返すために「倍プッシュ」してしまうなど、冷静な心理状態ではいられなくなってしまうようだ。
「お金を儲けたい」という欲の他にも、「この人が裏切るはずがない」「自分は大丈夫(正常性バイアス)、自分の判断が間違うはずがない」、こうした思い込みに相手は漬け込んでくる。
テレビに出ているような有名人、それも大御所の俳優や演歌歌手などを堂々と広告塔に起用したりするから恐ろしい。
日米の巨額詐欺事件5選 過去には5兆円の被害も…
https://zuuonline.com/archives/109178
現在は仮想通貨詐欺なども横行しているが、別の知人は「500万円預ければ、仮想通貨で運用して毎月20%分振り込む」なんて詐欺に出くわしたそうだ。
このパターンは、預けた500万から数回振り込まれた後、突然連絡が取れなくなってトンズラされ、残りの数百万は戻ってこない(相手に取られる)やつだ。
過去の「豊田商事事件」の、「純金ファミリー契約証券」をなんとなく思い出した。
豊田商事事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/豊田商事事件
さて、博識ななろう読者の皆様には、「釈迦に説法」とは思うが……。
美味しい儲け話など一切ない。
あったとしても、一般には出回らない。
「今まで不動産投資の営業なんて一度も来たことなかった」という友人の言葉に、もしかしてこれもコロナの影響かな?(怪しい投資話が増えているらしい)と思ったりした、先日の出来事だった。