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異世界召喚されて最初にできた友達がチートだったんだが………   作者: 鍬富士 広乃武
二・五章 『ニシノ 死す』
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二・五章 『ニシノ 死す』デュエルスタンバイ!

前回までのおさらい。

チート君がミオネさんを仲間と認めました。

  二・五章


「アネス、今回の僕の行動はお前が聖魔だということを全面的に信じてのものだということを肝に命じておくんだな。」

「…………もしもの時は、容赦なく()り伏せる。」

 クオリが別れ際に、静かに冷酷に言い放った言葉が私の胸の中で嫌に響いていた。

「ミオネ、良かったな………顔色ちょっと悪いけどどうかしたの?」

 ヒデキさんが、心配してくれている。

 大丈夫、心配ない。

 だって、私が聖魔だっていうのは本当なんだから。

 まあ、魔王だっていうのも本当なんだけど。

 もしもの時ってどんな時なんだろう?

 怖い。

 目の前にやっと幸せが舞い降りて来たっていうのに………

 基準の分からない「もしも」で殺されては、あまりにも私が不憫だ。

 自己中心的な考え方だな、とは思いつつもそう思わずにはいられなかった。

「ミオネ!どうしたの?」

「えっ?あっ!いや、別に………」

「別にで済むような顔じゃなかったんだけど………」

「本当に何でもないんです。」

「そう?ごめんね。」

 ヒデキさん、やっぱり優しい………

 あんな態度とらなくても良かったのではという後悔が押し寄せてくる。

 でも、その優しさがある故に逆に心配をかけたくない。

 そう思ってしまう。

 抱え込むのは良くない。

 でも………

 正直に言って、どうなるか。

 もしかしたら、クォリトゥシスの肩を持つかもしれない。

 私を励ましてくれるかもしれない。

 クォリトゥシスを殴りに行くかもしれない。

 九割方私に付いてくれる筈だけど………

 いや、待て。

 ヒデキさんは私を全面的に信じてくれてる。

 それなのに信じないというのはどうなのだろうか。

 絶対駄目だ。

 『慈愛』の聖魔が聞いて呆れる。

 私だって、信じなくてはいけない。

「ヒデキさん………」

 私が逡巡している間にもずっと横に居てくれたヒデキさんに声をかける。

「なあに?」

「ごめんなさい。実は………」

 私は、クォリトゥシスのことをヒデキさんに話す。

「クゥオォリィィィィィィーーーーーーーーーー!!!!!!」

 ヒデキさんが怒りを(あらわ)にした。

 ―かと思うと

「ふっ」

 と、小さく笑った。

「ヒデキさん?」

 ちょっと心外である。

 否、かなり心外である。

「ああ、ごめん。俺のもといた世界の友達を思い出してね。本当似てるんだ、クオリと性格が。だから俺は、クオリは地は良い奴だって信じてる。」

 ヒデキさんが優しいような、黄昏れたような顔をした。

「ヒデキさん………わかりました。」

 と思ったら、悔しいような、怒ったような顔に変わり

「にしても、クオリィィィィィィィッ!そんなこと、言わんでも良いやろがーー!くぬゆるー(この野郎)!」

 面白い人。

 そして、良い人。

「ヒデキさん………」

「なあに?ミオネ」

「ありがとうございます。」

「ん?何が?」

「女たらし。」

「何が?」

「バカ。」

「何が?」

「教えない。」

「ねぇーーー。」

「ふふっ。」

「もーー!」

「牛」

「むむむ………」

「ヒデキさん、やっぱ素敵です。」

「あっ、話変えた。」

「むむむ………」

「ふふ」

「ふふっ」

「ふふふふ」

「ふふふ」

 見つめ合う。

 満面の笑みのヒデキさん。

 たぶん、私も同じく満面の笑みだったんだと思う。

 私は何て幸せなんだろうか。

 ヒデキさんという素敵な人に出会えて。

 ―もしも

  ヒデキさんがこの世界に来なかったら

  前の魔王が王都を森にしていなかったら

  ヒデキさんが、クォリトゥシスと一緒に討伐に来ていたら。

  それ以前に、クォリトゥシスだけが討伐に来ていたら。

 私は、どうなっていただろうか。

 私の心を穏やかにしたのはヒデキさん。

 私の心に安らぎを与えてくれるのもヒデキさん。

 私に生きる希望を与えてくれたのもまたヒデキさん。

 ヒデキさんは、今の私の全てだ。

 決して大袈裟ではない。

 ヒデキさんは重いと思うかもしれない。

 それでも、嘘偽り無く今の私の全てだ。

 伝えるべきだろうか。

 ヒデキさんは必ず受け入れてくれる。

 でも、もし受け入れてくれなければ………

 私、どうなってしまうだろうか。

 単純に落ち込むだけならまだ良い。

 仮にも私は魔王だ。

 我を失い完全に魔王になったりでもしたら………

 最悪だ。

 たぶん、ヒデキさんも死ぬし私も死ぬ。

 言わないべきだろう。

 もっともヒデキさんは、絶対に受け入れてくれるだろうけど………

「ミオネ?ミオネ!」

「あっ、はい。」

「どうしたの?」

「ヒデキさん………」

 私は口に出す代わりにヒデキさんに抱きつく。

「ミオネ………。ミオネ、君は今の俺の九割五分だよ………」

 いや、そこは全てって言って欲しかった。

「なら、ヒデキさんは今の私の全てです!」

 でも、この流れなら伝えられると思った。

「えっ………うっ。」

「ヒデキさん?」

 ヒデキさんの顔が赤くなる。

「ぬあー―ー―ー―ー―ー― 他を捨てきれずに九割五分とか言った自分が逆に恥ずかしい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 恥ずかしいのが伝染(うつ)った。

「後から考えると恥ずかしいーーーーーーーーー!」

「言い直す、ミオネ、君は俺の九割九分九厘だ!」

「いや!そこは、全てとか、十割とか言うところでしょう!」

「ごめん、でも、三割三分三厘って三分の一じゃん、だから、三割三分三厘掛ける三って九割九分九厘かつ一なんで…………。すいません、あと一厘は捨てれませんでした!」

 やっぱり、面白い人。

「ふふふ、許します…………特別ですよ?」

「ごめん……ありがとう。」

「良いんです。私の全てですよ?ヒデキさんは。」

 見つめ合う。

 静寂。



「いゆぁ、じゅぅーずぃとぅすぃとぅえむぁすぅぬぇー。」

 その静寂を切り裂いたのは限りない『悪意』その権化のような声だった。

「すぅばらすぃー!くぉるぇどぇくぉすぉ『愛』とぅぉいぅむぉぬぉ!」

 その声に私のあらゆる負の感情が沸き立った。

「『愛』の聖魔!…………」

 隣でヒデキさんの目が見開かれる。

「御紹介うぁるぃぐぁとぅーぐぉずぉぃむぁーすぅ。うぁーとぅぁくぁすぃ、『博愛』の聖王とぅぉー『醜愛』の魔王ぬぉー、ハァーフ。ロヴェ・アイシス=ヌクレティルリレドゥスア、どぅぇすぅ!」

「何言ってるか分かんないんだよ!てめぇの喋り方!」

 ヒデキさんが怒鳴る。

「うぁぬぁとぅぁー、どぉーぬぁとぅぁ………ハッ、むぁすぁくぁ!『神聖』ぬぉ聖王とぅぉー『日輪』ぬぉ聖王ぬぉー、ハァーフ、『聖』ぬぉ聖王!すぉすぃとぅぇー『卑俗』ぬぉ魔王とぅぉー『暗黒』ぬぉ魔王ぬぉー、ハァーフ、『魔』ぬぉ魔王!ぬぉ寵愛うぉうけすぃ使徒!ぬぁぬぉどぅぇすぅくぁ!」

「ごめん、何言ってるか二重で分かんない。」

「ヒデキさんに同じです!」

 激しく同意である。

「まず、聞きにくい。次に内容!」

「ぬぁーぬぃ、くぁんとぅぁんぬぁはぁぬぁすぃどぅぁーゆぉ。『聖』ぬぉ聖王ぅあ異界ぬぉくぃぬぃいっとぅぁ人間ぅおくぉぬぉすぇくぁいぬぃ召喚すぃ、『魔』ぬぉ魔王ぅあすぉぬぉ人間ぬぃ加護ぅおすぁずぅきぇるぅ。すぉるぇるぁぐぁ寵愛どぅぇすぅ!御ぅあくぁるぃいとぅぁどぅぁくぇむぁすぃとぅぁくぁ?」

「いえ、まず何言ってるか分かりませんでした。」

「ぬぁずぇぬぁぬぉどぅぇすぅくぁ!」

「その喋り方」だよ!」です!」

 二人の声がきれいに重なる。

「どぅぬぉ喋り方どぅぇすぅくぁ?」

「今の『貴様』のだ!」『貴方』のです!」

 再び重なる。

「ちょっとよく分かんない。」

「普通に喋れるんかい!」じゃないですか!」

 再三重なる。

 息ピッタリを実感して嬉しい。

「ちゅぉっとぅぉゆぉくぅぅあくぁんぬぁい。」

「その喋り方、作ってるならやめろ!」てください!」

 その時急に場の気配が変わった。

「―消えろ―」

「ん?何て?」

 ヒデキさんはそれに気付いてない。

「消えろ!」

『愛』の聖魔は、そう叫ぶと腰の刀でヒデキさんに斬りかかった。

 短絡的すぎるでしょ!

 くっ、速い!

 これじゃ、助けようにも間に合わない!

 だめだ………

 咄嗟に顔を背ける。

 彼の死ぬ瞬間なんて見たくなかったから。


「つぅぐぃぅあ、うぁぬぁとぅぁーどぅぇすぅ!」

 その声に、その方を向く。

 ヒデキさんは、跡形もなく消え去っていた。

 斬撃音はおろか、嗚咽さえ聞こえなかった。

 何かを考える暇もなく消された。

 赦せない。赦せるわけがない。

「消えろ!」

 『愛』の聖魔が斬りかかってくる。

「―貴様こそ消えなさい。」

 奴に対する『慈愛』などいらない。

 それから暫くの記憶はない。

『愛』の聖魔書いてても読んでてもイライラします。

何でこんなキャラにしたんだろうってくらい気持ち悪いですよね。

そんな奴の登場により事態が急転!

どうなった?ニシノ君。

どうなる?ミオネさん。

三章に続きます!


2/15追記 章タイトル変更の為サブタイトルを変更しました。

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