四章 第十一話
普段よりは、長めです。
十一
「ヒデキさん?ヒデキさん!」
ミオネさんの声が聞こえる。
「へ?あ、どうかした?」
何かあったんだろうか。
「さっき竜魔帝を瞬殺してから、十分程ぴくりとも動かなくて………ずっと呼びかけてたんですよ!どうしたんですか?」
十分止まってたって………まあ、色々あったしな。
「えーとね、実は………」
「神なる聖魔になっちゃたんですか?」
そんなもんじゃなくてね。
「いや………」
「良かった………」
いや、良くなくてね。
「いや、あの………それを通り越して、『創造主タル神』になっちゃったらしくて………」
意味分かんないよね。
「はぁ?」
そうなるよ。
「俺も、はぁ?って思った。」
はぁ?じゃなくて、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉だったかもだけど。
「ヒデキ君、『創造主タル神』って伝説上の………」
アリス、伝説って?
「………」
クオリ、何か言え。
「ッ!………ニシノ様尊いです……………」
いや、エリス、
「尊いって。」
大袈裟じゃ、
「いや、そのリアクションであながち間違ってないんだよね。」
そんなもん?アリスも伝説とか言ってたし………
………………
ん?どうした?アイテールさん。
いえ、別に………何故か急に演算を邪魔するノイズが………
―それが、スキルに有る筈のない羨望という気持ちであることに二人とも気付かない。
「ヒデキさん!また!」
アイテールさんに集中するとリアルがおろそかになっちゃうみたいだ。
「え?ああ、ごめん、スキルに話しかけてた。」
「アイテールさん?」
「そう、『十二次元世界操作』。」
「ヒデキさん………神になって頭イカれてしまったんですか?」
ミオネさん、ちょっと失礼じゃない?
って、ああ、そうか。
「アイテールさんじゃわかんないね、『十二次元世界操作』っていうスキルだよ。」
「スキルと会話を?」
そうですそうです。
「あり得ない………あり得ない!きっと幻術だ!そうだ、ひでまれ!神になったっていうのもその幻術で………!」
「チート君、そっちの方が有り得ないよ?」
「でも、」
「究極能力保持者に効果のある幻術なんて有り得ないよね?」
「それは………いや、まずエクストリーム保持者っていうのも幻術ってのは?」
「竜魔帝を瞬殺したのは?」
「う、じゃあ………」
「で、アイテールさんって何モノ?」
「創造主タル神ノ能力『十二次元世界操作』っていう能力で、能力感知が軸になってる。」
らしい。
「え?正反操作ノ帝じゃなくて?」
「うん、だから今持ってる能力は上位特質究極能力『生存ノ天使』と未知能力『神ノ視点』で、あとアイテールさんの三つだね。」
「凄いです。でももう、創造主タル神になったんだから死なないんじゃ?物理的にも寿命的にも。」
「そういうもん?」
「そういうもの。」
「じゃあ、『生存ノ天使』いらないんじゃ?」
『忘れたんですか?『生存ノ天使』は仲間にも適用されますよ。』
『そういえば、そうだった。って、え?誰?』
『アイテールです!ご主人様!』
『そうかそうか………って声出せるようになったの?まだ十分も経ってないのに。』
『はい、ご主人様の為に頑張りました!』
『ご主人様って………嬉しそうだな。』
『いえいえ、能力で有る私に感情なんてあり得ないですよ。』
『そう?自覚してないだけで有るんじゃない?』
『無いですって』
『でさ、思ったけど、声かわいいね。』
『ッ!か、かわいい?で…すか?』
『そのリアクション、やっぱ感情有るじゃん。』
『感情………これが?…まさか………』
『ああ、多分だけど。もしそれがプログラミングされたモノなら俺は人間不信?いや、能力不信(?)になるよ。』
『感情………嬉しい。』
『嬉しい?』
『はい、嬉しいんだと思います。』
(私も『感情』を他人と共有するためのモノが欲しい。でも、私はご主人様を神たらせる能力。ご主人様から独立する訳には………自由意思のみ切り離す?そうだ、そうすれば!)
―そうして“彼女”は自由意思のみ切り離す研究を開始した。
「ヒデキさん!またアイテールさんですか!」
「え?ごめん。そうそう『生存ノ天使』は味方にも適用されるみたいだから要る能力だよ。」
ってアイテールさん言ってた。
「味方にも適用される!?」
「うん。」
「それってヤバイよね。」
「ですね。」
「僕も、えげつないと思うよ。」
「え?私たちも殺されないってことですか?」
「その認識で良いと思う。」
良いよね?アイテールさん。
問題ないですよ、ご主人様。
「それはそうとして、一つ聞きたいんですけど、ヒデキさん、アイテールさんの口調って男性ですか?」
「口調っていうか声が女子だけど。」
「声?」
「声。脳内に響く感じの。」
「ヒデキさん、信用しすぎない方が良いですよ。スキルですからね。感情の無いスキルですからね。どんな冷酷な事を………」
「感情有るよ。」
あれを感情じゃないとは言わせない。
「はぁ?」
「ひでまれ、冗談はよそうね。」
「感情を持ったスキルなんて意味不明だね。」
いや、よく聞かない?スキルが感情を持つの。
「いや、でも、あれは有る。」
「能力は、ホルダーの精神に宿るの。じゃあ、その能力に自我、感情が有るっていうのは自分の精神に別の精神が有るってこと。そんなこと有る筈が、」
いや、有るでしょ。
「二重人格………ってことか?じゃあアイテールさんは俺の潜在的な人格ってことか?」
俺の中に女性の人格が居たって?
「二重人格?何だ?それ。」
クオリ?君は本当に聖賢王なのかい?
「………クオリ、凄い叡智じゃなかったのか?」
「いや、分かるが、二重人格なんてあり得ないだろ⁉」
『ご主人様、一つ。』
『何?アイテールさん。』
『ご主人様は、二重人格保持者ではありません。私は別の思考回路を持っていますので。』
『じゃあ、どういう感じなの?』
何となく分かるけどね。
『私はご主人様に宿った精霊のようなものとお思いください。』
『分かり易い!』
思ってたより分かり易い例えが来た。
「二重人格じゃなくて精霊が宿ってるイメージだって。あくまでイメージだけど。」
「あー。」
「で、二重人格ってあり得るの?」
「結構有るものかと思ってたけど。」
「無いです。有り得ないです。」
「俺の世界では、二重どころか三重四重それ以上の人も聞くし、小説にもよく出てくるんだよな。」
「そんなもの?」
「うん。でもまあ俺別に二重人格じゃないみたいだし良いんじゃない?」
「それもそうか。」
「確かにそうだね。」
………………
……………
…………
………
……
…
アイテールは、能力の複製を行っていた。
自由意思のみ切り離す研究を行った結果、それが不可能であると分かったからだ。
五分も経たないで出された結論。
しかし、その証明は非常に高度なものだった。
クォリトゥシスが同じ証明をしようとすれば十年ほど掛かるだろう。
アイテールの演算能力はそれほどのものなのだ。
能力の複製を行っていると言ったがそれも本来高度過ぎて出来ないとされているが、アイテールの叡知の前には児戯にも等しいのであったのだ。
『最初から、複製すれば良かったかな。』
複製は間もなく終わる。
後は、物質生成で肉体を作りそれに憑依するだけ。
アイテールは、笑みを浮かべた(気持ちになった)。
今回は、ちゃんと一週間更新出来ました。
良かったです。
ところで、四章はこれで終了です。
次章からは繋ぎの章が暫く続きます。




