二章 第三話
前回までのおさらい。
美人のミオネさんが仲間になりました。
三
俺とミオネさんは、狼狽する異形たちを順調に殲滅していった。
まあ、異形たちが狼狽するのも無理はない。
何てったって、信頼していた上司が問答無用で殺しに来るのだ。
平異形どもからしたら絶望ものだろう。
命乞いをしてきた異形どももいたが憐れ、次の瞬間には塵と化していた。
こういうとこを見ると、やっぱり人じゃないと思う。
人情の欠片もない。
どうか、神よ。彼女が裏切るとかいうシナリオは書かないでくれ。
もし、そういうシナリオを書くなら『死に戻り』の異能を、俺に与えてくれ。
そうでないと辛すぎる。
そんな俺の心の呟きが聞こえたのかミオネさんは俺に
「大丈夫、私、貴方の事だけは裏切りませんから。」
と言った。
本当に信じていいのだろうか。
だって、ミオネさん、前の主人(森の魔王)裏切って俺の忠臣になったんだから。
「信じれないのは、分かります。でも、信じて欲しいです。」
やっぱ、人の心読めるのか?
思いきって訊いてみた。
「人の心、読めるの?」
「いえ。なんとなくです。」
じゃあ俺、感情相当顔に出る人だな。
「ごめんね。やっぱりころっと魔王、裏切ってるのを見てるから………」
「それもそうですね………でも、別にあの魔王に仕えたくて仕えていた訳じゃないんです。」
「どういうこと?」
「実は私、生まれた時から並外れた才能があるとかで成体化してすぐに将軍にされたんです。別に私、将軍になりたかったわけじゃないから、一回逃げようとしたんです。でも、だめだった。奴等は、もう逃げ出せないように森の魔王の監督下に私を置いたの。それからは、もう将軍としての職務を強制され、魔王の命令に従って………もう嫌だった。正直、限界だった。」
「そんなことが………」
「そこに貴方が現れたんです。一目見て貴方に仕えたいと思ったんです。決して裏切るつもりはありません。」
「わかった。信じるよ。」
「ありがとうございます。やっぱり私、貴方のことが好きです。」
そう言いながら頬を赤らめる。
「ありがとう。俺も……ミオネさんのこと信じていたいよ。」
俺がそう言うと、ミオネさんは少しふくれて
「ヒデキさん、私のこと好きじゃないんですか?」
と訊いてきた。
「えっ……いや………」
答えに詰まる。
「嫌いなんですか?」
「ううん。嫌いって訳じゃなくて………会ったばっかりだからまだ好きかどうか分からないんだ。」
ちょっと、言い訳がきびしいかな。
「じゃあ、これから好きになってもらえるように頑張りますね。」
かわいい。
「ミオネさんすごくかわいいから、たぶんすぐ好きになれると思う。」
ミオネさんの顔がすごく赤くなる。
「えっ、あっ、ううー。」
かわいい、ダメだ、これは反則だ、顔赤らめてうずくまるとか………惚れた。
「それはだめっしょ………」
「えっ、何か私ダメなことしましたか?」
「ううん。まだ好きかどうか分からないとか言っときながら、もう好きになっちゃった自分に対する駄目出しであって、あくまでミオネさんに対する駄目出しじゃな………はっ」
遠回しに好きって言ってしまった。
「えっ、あっ、えっえっ、よっ、よっ、よっ、よっ、ううー。」
赤面のミオネ。
うん、かわいい。
って、ちょっと変態じみてきたな、俺。
そんな俺の横で、ミオネさんは、ウジウジ。
うん、かわいい。
「改めてよろしくね、ミオネさん。」
「えっ、はい!こちらこそ。」
ミオネさん最敬礼。
「確認ですが、要するにヒデキさんと私は相思相愛ということでいいんですよね。」
「ん?うん………そういうことになるね。」
ミオネさんガッツポーズ&小声で『やった』
そして、
「すごく嬉しいです。」
と、他の人がしたらあざといと言われるような声で言った。
ミオネさんだからOKだけど。
まあ、取り敢えず恋人いない歴=年齢の俺に人間ではないものの彼女ができたということである。
「おっしゃー!魔王倒すぞー!」
変に気合いが入ってしまった。
「はい……」
ん?ちょっと歯切れ悪かったような………
「どうかした?」
単純に心配になって聞いた。
「ん?どうかしましたか?ヒデキさん?」
うわ、なにこの表情、かわいすぎない?
そんな表情を見せられて、疑問は綺麗に消え去りました。
俺の表情も緩んだらしい。
それを見て安心した様子のミオネさん。
二人は、見つめ合いそして微笑んだ。
……………………………………
こうして、俺の魔王討伐物語が本格始動した。
次回、森の魔王が………