二章 第二話
前回までのおさらい。
ニシノ君はチート君から1億借りパチし装備を揃えました。
二
それから暫くして俺は無事に森へと来ることができていた。
クオリはまだ壊れたままだった。
不知火に通じるポンコツ性のおかげか。
いや、もとはといえばそのポンコツ性のせいでこんなことになっているのだが。
あの二人、とことん似ている。
そう思った………否、そう思わざるをえなかった。
それはさておき、この鎧クソ軽い。
装備してないレベルで軽い。
そのくせして、さっき異形に襲われたがノーダメージ。
スゲー、最上級装備。
剣も凄い。
これは、それなりの重さだが切れ味がヤバい。
さっき、行く手を塞いでいた巨岩を一太刀で両断した。
それでいてこの剣は刃こぼれの一つもしていない。
異形を切った時も切れ味が良すぎて血が飛び散らなかった。
血も付かなかったから、刃も傷まないだろう。
魔道コンパス、これも凄い。
コンパスっていうより、スマホの地図アプリに近い。
いや、地図アプリを越えてる。
偉大なるG●●gle先生でもまだ成しえていない、超リアル立体地図&立体経路を空気中に投影するという、えげつないことをやってのける。
(まず、●oo●●●先生がそういうの開発しようとしてるか知らんけど。)
さらに、地域によって薬草、鉱物、可食生物、植物などを画像つきで、よく似たものとの見分け方も含めて教えてくれるという図鑑機能もある。
更に、内部に込められた魔力によって稼働するため、充電切れの心配なし。
二十五年連続稼働可。
非常時には、魔力弾を数発発射できる。
護身ができる地図兼図鑑など俺のいた世界にはないであろう。いや、絶対ない。
(つーか、俺のいた世界では需要がないよね。)
四次元巾着だって予想以上の便利さ。
道中見つけた、鉱石、薬草、食べ物などを無制限に、更に四次元則ち三次元プラス時間軸の時間軸の力で、変質させずに保管できる。
因みに、中に入った生物の時間も止めることができる。
緊急避難に使えば、巾着が壊れない限り不死になる。
単なるチートだ。
っていう訳で俺は、一人でもなんとかなりそうだと思い始めていた。
最も、魔王は無理だろうし、クオリのように通常異形を灰燼に帰すこともできない。
俺が倒した異形の屍は、そのまま微生物に分解され、腐り朽ちきるまではそこにあり続けるのだ。
そんなことを考えながらも、ただただ近付いてきた異形を切り伏せていた俺であった。
「くっ………この剣をもってしても数が多いときついな………」
主人公がはくような台詞だったが、まあ今のこのパートでは、別に俺が主人公ということでも良いのではないか。
それ以前に主人公になりたくないということはないし。
っていうか、やけに敵、多くない?
手を止める暇なく、異形が襲いかかってくる。
この装備のおかげで、異形に軽く襲われても大丈夫なので、焦ることなく着実に異形を切り伏せているのだが、そろそろ手が疲れてきた。
「あぁー!ちょこまかと小賢しいんじゃ!」
悪役のような台詞。
「お前らなど、空の藻屑となって消えればいい!」
更に悪役。
あと、空の藻屑ってはじめて聞いた。
「滅びろ!人外!平凡の!キリングヘルストーム!」
悪役の使うような技の名前を叫び、一回転しながら剣で周りを切り裂いた。
無駄だと思ったが、以外と無駄ではなかったらしく回りの敵は一掃されていた。
周囲半径十メートルぐらいの木も倒れたり、抉れたりしていた。
平凡のキリングヘルストーム強ぇー。
俺、SUGEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE。
いや、凄いのはこの剣か。
やっぱりなんとかなるもんだと思った。
その時、先程までとは次元が違う異形の気配を感じた。
格が違う。
これはヤバい。
ダメだ、逃げよう。
たかが平々凡々太郎君である俺に何ができよう。
しかし、逃げることは叶わなかった。
その気配を放っている者はその時にはもうすでに目の前に現れていた。
俺は、目を疑った。
逃げようとしていた足を止め、二度見。三度見(?)四度見(!)五度見(!?)
「うわっ、すっげぇかわいい。」
五度見目にして、釘付けにされる。
状況を端的にあらわすとすると、俺の目におさめられているそれは異形では無かった。
気配でいうと人外ではあるのだが、もしそのオーラを放ってなければ、顔立ちが整っていてかつ体つきもいいというただの美少女にしか見えなかった。
もしこの娘(?)が俺たちの学校にいたら、女子版不知火になっていただろう。
彼女(?)が話しかけてきた。
「あの………私の部下を切り伏せたのは貴方でしょうか?」
やべぇ、声もかわいい。
「は、はい………」
しまった、殺される。
馬鹿正直にはいって言った。
クソかわいいけど、さっきまでの敵とは比べ物にならないほどのオーラをはなっているのだ。
気を抜いてはいけない。
いや、もう無駄か。
見てたら問答無用で殺されてただろうから、彼女は見てなかったのだろう。
なのに、殺害自供しちゃったし………
何しとんじゃ、俺。
ああ、神よ。我を助けたまえ。
そこで彼女が口を開く。
死ね!とか言われて、殺されるんだろうな………
「なぜうちの部下を、殺したのですか?」
あれ、思ってた対応と違う。
やや焦る。
焦る必要もないのだが。
「襲いかかってきたので、自己保身のためです。すいません。」
口調が変になる。(かわいさと死への恐怖が混じりあった結果であろう。)
「………うちの部下がすいませんでした。向こうから手を出してこない限り、人を襲うなと教え
込んでいたのに………」
またもや、思ってたのと違う。
この人(?)いい人(?)だ。
「いえ、もとはといえば俺が……」
とはいえ、謙遜しなくてよろしい。
「いえ、悪いのはこちらです。それより、是非とも私を貴方の仲間にしてください。」
「えっ……」
いやいやいやいやいやいや、予想外。
いや、予想外を越えて理解不能。
何故に、平々凡々太郎君なんかの仲間になりたいんだ?
「私では、不満ですか?これでも私、将軍クラスなんですけど………」
やっぱ強かった。
でも、そういう話じゃないんだよね………
まあ味方になってくれるなら………
「いえ、不満などありませんが………将軍クラスともあろう方が、寝返ってもいいのでしょうか?」
またもや謙遜せんでよろしい。
いや、した方がいいのか?
「いいんです。あの魔王より貴方の方がよっぽど魅力的ですし……貴方の戦いかたに私、惚れてしまったんです。」
またもや理解不能。
ホレテシマッタンデス?どういう意味だ?
普通に考えたなら『惚れてしまったんです』だが、俺だよ?
「へ?ん?いや……仲間になってくれるならありがたいです。えっ、で名前は?」
まあ、取り敢えず仲間にしとけ。
「私は、『元』森の魔王に仕えし将軍の一人、ミオネといいます。これからよろしくお願いします。あっ、魔王に仕えていたのはさっきまでなので、今からは、貴方に仕えますので、どうかよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしく。」
なんか変なことになってきたな。
でも、ミオネさんめっちゃかわいい。
「そういえば、貴方のお名前は?」
ミオネさんに訊かれた。
「ああ、俺は西野 英希。異界より召喚されし者だ。」
カッコつけてみたが、異界からの召喚者っていう情報は要らなかったかもだな。隠しといた方が良かったかも。まあ、もうクオリにはばれてるし。
「じゃあ、ニシノさんとお呼びしますね。」
かわいい。
でも、苗字か………
「どうぞ、お好きなようにお呼びください。」
是則ち、別の名前で呼べという意味なり。
俺、思った以上に欲張りだ。
そんな俺に対してミオネさん。
「じゃあ、やっぱりヒデキさんって呼びますね。」
やばい。意識飛びかけた。クソかわいい。
まあ、取り敢えず、ミオネさんが、俺の仲間となり、二人で、魔王討伐へ向かうこととなったのであった。
………にしても、敵の将軍クラス味方につけるとか某プロ友人みたいだな。
俺、そのプロ友人みたいに敵ボス宿してないといいなー。
ヒロイン登場です!
暫く、二人のみのストーリーが続きます。