07話
「それにしても、あなた、不思議な人だね」
人差し指を立てたまま、あまねは首を傾げた。
そう言われ、美咲は一歩後ずさる。
またこの感じ。
先ほどの鳴戸と同じような雰囲気を、あまねから感じる。
「ま、嫌な感じはしないし気のせいかな。本当にお家まで送らなくてだいじょうぶ? 遠慮なんてしなくていいよ?」
鳴戸ほど深く食いついては来ないようで、美咲はホッと胸を撫で下ろす。
「本当に大丈夫です。わざわざ声を掛けてくれてありがとうございました」
あまねに向き直り微笑むと、美咲はようやく安心したように笑い返してきた。
「良かった、本当にだいじょうぶみたいだね。この辺り物騒だから、お姉さんみたいな人はいつまでもこんなところにいない方がいいよ」
「え…?」
「あまねはもう行くね、じゃあねっ!」
そう言うと手を振りながら笑顔であまねはその場を去って行った。
去って行く直前、呟いた言葉と表情がとても怖くて、美咲はしばらくその場を動けなかった。
なんとなく、なんとなくだけれど、あまねとはまたどこかで会うのではないかと、美咲はぼんやり感じていた。
「――ひゃっ」
突如自分が持っていたスマホの通知音が鳴り、美咲は我に返る。
画面を開くと、また、アイからのメッセージだった。
【お願いです、あなたの力が必要なのです】
怖い。
それが美咲の純粋な感想だった。
そうだ、ブロックしてしまえばいい。
通知が来ないようにすれば。
そう思いスマホのアプリを開き、アイのブロック画面を開いたところでふと美咲の手が止まる。
アイは、突然メッセージを送って来た。
美咲が許可をしていないのに、だ。
ブロックして拒否したところで、いくらでもIDの複製は容易なのではないだろうか。
だとしたら、このブロック行為には、なんの意味もない。
一度スマホの画面を閉じて、美咲は駅に向かって歩き出す。
考えなくてはいけない。良い対処法を。
そこでふと、美咲は立ち止まる。
また、スマホが鳴っている。きっと、アイからの通知だろう。
【我々は、国営トランププロジェクト事務局です。】
スマホを開くとやはりアイからで、メッセージにはそう書かれていた。
「国営…トランププロジェクト?」
続けて通知が届く。
【この制度は、20XX年に始まった制度です。あなたは6歳の時に――】
通知画面はここで切れている。
国営の、プロジェクトって――?
その場でスマホを開きたい衝動に駆られたが、なんとなく誰の目も届かないところで見なくてはいけない気がして、スマホの画面を閉じ、電車に乗り込む。
家に帰って見よう。
美咲は震える手を自分で押さえ込みながら、家路へと急いだ。






