メリーさんの生存戦略
なんかまた古い短編が出てきたので投稿します。
作中のセリフにていつ頃書かれたものか推測できるかと。
私、メリーさん。
今、私たち、ホラー世界にいるものたちはとてもつらい状況にあるの。
そもそも私たちは、存在するために、定期的に人の『恐怖』を摂取しなければダメなの。
そうしないと、存在が保てない……消えてしまうの。
だからその為には人を殺すこともする。
だって人って大体は死ぬ直前に一番『恐怖』するから。
でも最近は、あれ。
ダメなの。
ホラー世界でもドンドン新しい顔が出てきて、私のような古臭い存在は誰も『恐怖』してくれないの。
日本に来て一番最初に仲良くしてくれた『花子ちゃん』も消えちゃったの。
だから私……消えないために、いろいろ考えてみたの。
生存、せんりゃくー! なの。
ピリリリリリリッ!
『俺だ』
「私、メリーさん。今、〇〇市のマンション前にいるの」
『なっ!! お前一体』ブチッ!
――電話をかけて、かけた相手に近づく、そして近づいてからまたかける。これを繰り返して怖がらせるのが私なの。
昔は家の電話だったけど、今は携帯って便利なものがあるから、外にいる人にも使えるの。
でも今は力が足りなくて、少しずつしか近づけないの。
ピリリリリッ!
『……誰だ』
「私、メリーさん。今、〇〇市のバス停にいるの」
『……お前なんなんだ』プチッ!
――……まだ、あんまり『恐怖』してないみたいなの。
力があまり溜まらない。これだとまだあんまり近くに行けないかもしれない。
ピリリリリリリッ! ピリリリリリリッ! ピリリリリリリッ! ピリリリリリリッ!
――出ないつもりみたい。
でも……無駄なの。いくら電源を消そうとしても消えないし、携帯を捨てても戻ってくるの。
……今、『恐怖』してるのがわかるの。
『………………』
――あ、出たの。
「私、メリーさん。今、〇〇駅にいるの」
『おいなんなんだよ! 何のいたずらなんだよ! なんで……!』
プチッ!
――そろそろ本気で怖がってるみたいなの。
私も力が溜まってくのがわかる。
……ほら、今も電話をかけた相手の様子が手に取るようにわかるの。
――『なんなんだ……! 携帯を捨てても、ぶっ壊しても、いつの間にか俺のポケットにありやがる。どうなってやがる……!』
――これならそろそろ大丈夫そうなの。……よいしょ……ほら、もう電話の相手の後ろなの。
じゃあ、そろそろかけるの。
……最後の、電話。
ピリリリリリリッ!
『はい』
「私、メリーさん。今――――
――――ホシの後ろにいるの。場所は〇〇県〇〇市、〇〇駅北口を出たとこなの。至急、捜査員をこっちにまわして」
『了解した』
――……ふう、これで私の仕事は終わりなの。
ほんとは殺したほうが『恐怖』もより強いと思うけど……別にそこまで必要ないからやめるの。
だって、追われてる犯人って、人一倍『恐怖』しやすいから。
……おかげでなんとか私は消えずに済みそうなの。
ピリリリリリリッ!
「はい、もしもし」
『もしもしメリー、お疲れ様。おかげで無事、指名手配犯を逮捕出来たよ』
「あ、お疲れ様です」
『とりあえず、一旦戻ってもらっていいか』
「わかりました。じゃあ一旦そっちに電話かけます。……あ、振り向かないでくださいね?」
『わかっとるわ!』
――私、メリーさん。今、昼は公務員として働きながら、存在し続けてるの。
とまあほんとに短編でした。
色々と設定詰め込めば面白いかと思ってサラッと書いた話ですが、当時の時点で結構設定が出尽くしてたので、わりと忘れてました。