そうきたか、異世界よ
PC弄ってたらかなり昔の話が出てきたので抜粋して投稿。
そうきたか~ってタイトルと
行雲流水~ってタイトルのどっちだったか忘れたので、そうきたか~の方を採用。
朝起きる。
特にやることもないわけだが、着替え、朝食の準備をする。
今は一人で住んでいるようのものなので、本当なら自分の分だけ用意すればいいのだが、何故か今は周りのやつらの朝食の準備までしていた。
気が付いたらこの家の食事係にされていたっぽい。
キッチンは共有スペースの他に、各部屋にあったはずなんだが……。
……まあ、それはいい。
ここに来てから少し経ったか。
そろそろなんらか仕事でも探さないと懐が寂しい気がする。
一応、贅沢言わなければ、俺のような特技も技能もない若造でも、何かと仕事はあるっぽい。
その分危険はあるらしいが、仕事が無いよりマシなのだろう
それにしても、ここでの生活にも慣れてきた。
――…………慣れてきて、しまった。
別にここが嫌いなわけじゃないから別にいいけど。
そういえば…………何で俺は、異世界にいるんだっけかな……?
ああ、あいつのせいだった。
――ジリリリリリリリリッ!! カチッ!
「……うー、朝になってしまった」
昨日から今日は嫌な事が起こるような気がしていた。
だから正直、今日が来てほしくなかった。
そんな不可能なことを頭に浮かべながら俺は、自分の部屋からリビングに向かう。
「おは…………って言っても意味はねぇんだった。両親が出てって結構経つが、習慣ってのは抜けないねぇ……」
ある町の一角にある普通の一軒家。それが俺んち。
元々は両親と俺とで三人暮らしだったが、今は一人暮らしのようになってる。
「しかし……今は何やってんだか」
ふとここにいない両親の事を思い出す。
以前は普通のサラリーマンだった父さん。
が、ある日突然、何を思ったか冒険家になると言い出した。
理由を聞いてみると、
『世の中にはまだまだ知らないことがたくさんある。私はその全てを見、そして知りたい! だから私は旅に出る!』……だそうだ。
馬鹿か。ああ、馬鹿だった。
もちろん俺と母さんは反対――――
『あなたがそうしたいのなら止めないわ。でもお願い……私を置いていかないで』
――――……俺は、反対した。
その反対の結果。
『龍也、お母さんはお父さんと一緒に旅に出るけど……本当に一人で大丈夫』
『ははっ、母さん、龍也ももう高校生。それに一人前の男だ。心配することはないさ』
――…………そう言い、両親は旅立っていった。
結局、高校入学と同時に、俺だけ一人家に取り残されることになった。
「つかもう六月……あれから二ヵ月かい」
一週間前に届いた自分宛の手紙を手に取る。
『むすこへ。そっちは元気ですか。こっちは元気です。りょーしん様より』
「…………だけかよっ!! どこで何してるか書けよ! 返事すら書けねぇ!! ………………まあいいや、もう」
手紙を投げ捨て、朝食の準備と、嫌々ながら学校へ行く準備。
ただ、湧き上がる感じにうんざりして手を止める。
「しっかし、今日はなんでこんな嫌な感じすんだろ……」
俺は自分で言うのもなんだが、かなり普通な奴だと思う。
運動も勉強も平均くらい。
容姿については自分をよく言えるほど自惚れてはいないし、自分を客観的に見れるほどすごい奴でもないからおいておくけど。
ただ、昔から少しだけ、ほんの少しだけ変わってるところがある。
なんと言うか、直感が当たったりすることが多いのだ。
特に嫌な予感、自分に関係する災難に関してはかなりの的中度を誇る。
……まあ、よく嫌な予感ほどよく当たると聞くし。俺のも多分その一種に違いない。
クラスの連中は『予言』とか言ってるが、大袈裟なのだ。うん。
そのことを聞きつけた一部生徒が、学校内で俺を神と崇めた妙な宗教を流行らせつつあるなんて噂は嘘に違いない。
自分で結論を出して、改めて準備を再開しながら思い出す。
「そういえば……昨日、樹がなんか用事があるって言ってたなぁ……それか……?」
蒼井樹は、ガキの頃からの親友。
ただ、まぁートラブルメーカーな奴で、俺はいつもあいつに巻き込まれてる気がする。
俺は巻き込まれ体質。
俺の嫌な予感の八割は樹だと思ってる。
…………と言っても、トラブル起こすけど、樹は自分で解決しちゃうから実害はないんだけどさ。
巻き込まれた俺がちょっとだけおっかなびっくりするだけ。
「……今回もそれかな」
――ティラリラリラリラー!
「……メール…………噂をすれば何とやら。樹吉か。……とりあえず保留。学校で開こう。知らなかった体で」
携帯をコタツに置き、三度登校の準備を行おうと一歩踏みだし――
――――その一歩目が、突如消え失せた。
「……え」
存在しない足元から、吸い込まれるようにゆっくりと落ちていく俺の体。
そんな中ふと思った。
――――――あぁ、何だ。嫌な予感はこれか……。
もしかしたら、樹じゃなくて俺の方がトラブルメーカーだったのかなぁ
「――――ぁぁぁぁぁあああああああああああー!!」
そしてとだえる俺の意識。
――――……ん、二度寝ったか…………いつ寝たけ……。
「ふむ、成功か。上々だな。後は意識や思考機能がどうなってるかだな」
――――………………ゆ、めー……。
「――……じゃねぇ気がする! 誰だ! 今の!!」
一瞬夢かと錯覚したが、耳から入ってくる声があまりにリアルすぎたので、すぐさま飛び起き、声の下方向を見る。
「ほう、目を覚ましたな。予想以上に早い」
するとそこにいたのは、俺を興味深そうにみていた一人の男。
男は白髪に紫のきつい目つきをしており、いかにもマッドです。みたいな感じだった。
――…………おかしくね?
白髪はともかく、紫の目は見たことも聞いたこともない。
いや、もしかしたら俺が知らないだけでいるのかもしれないけど。
「……………………」
混乱から言葉が出ない俺を見てか、マッドっぽい男が話しかけてきた。
「ふむ、さすがに混乱しているか。まあ、突然知らない場所で起きたのだ。そうなるのも不思議はない」
――いやいや、俺はお前の見た目に驚いて……って、知らない……場所?
俺は急いで周りを見渡す。
周りは暗がりでよく見えないが、窓一つない壁に囲われていて、奥に上につづく階段が確認できた。
他にはいろいろガラクタが散乱しており、恐らくどこかの地下室だと思う。
――……誘拐? 拉致? 撮影? ドッキリ? ……どれも違う気がする。俺に対してする意味がないからだ。
「私の研究室が物珍しいか。まあ当然と言えば当然か」
俺の様子にまた男が声をかけてきた。
そして、その言葉の中のひとつの単語で、俺がここにいる理由の一端が見えた気がした。
「…………研究所……人体実験でもするのに、俺を拉致ったのか……!?」
男を睨みつけながら、さっき見つけた階段までの距離を目測で測る。
「ほう、頭の回りは悪くないようだな。……だが惜しい。貴様は今、自分を研究の材料……準備だと思っているだろう。……逆だ。準備ではなく、結果だ」
「……は…………まさか」
――寝てる間に、もうなんかされて…………!
「安心しろ、貴様の体に何かをしたわけではない。貴様がここにいることが、結果なのだ」
「? ……どういう」
俺がそこまで言うと、男はオーバーアクションを取りつつ、説明を始めた。
――そのオーバーアクションいらねぇし。
「説明してやろう! 貴様は私の崇高なる実験の一つとして召喚されたのだ。――この世界に!!」
「……召、喚……? 世界……? ……おい、何言ってんだ。まさかここが異世界とでも言うつもりか? そんなの、小説とか漫画の話だろうが」
「ふむ、貴様らの世界でも『異世界』という概念はあるのか。そのショウセツやらマンガと言うのは、差し詰め、物語の一種なのだろう。……だが理解しろ。これは現実だ」
「……………………」
とんでもない話に唖然としている俺を見て、クツリと笑い、男はさらに続けた。
「くく、理解するまではまだかかるか。だが、一歩でも地下の研究室を出てみればわかるだろう。今まで自分がいた世界との違いが! ……どうだ? 先ほどから自らと出口の距離を測っているようだし、試しに一度出てみては?」
どうも、さっきの俺の考えはお見通しだったようだ。
――……しかし、改めて思い出してみると、あの時、突然足元が消えた時の感覚も、落ちてる間の浮遊感も、本物だった。
男の見た目も明らかに日本人じゃないのに、言葉はあり得ないほどスムーズに聞き取れた。
突拍子もない話だったが、何故か拉致や誘拐なんかより、よっぽどしっくりくる気がする。
俺はとりあえず何か言おうと口を開いたが、その前に男が話し出した。
「まだ信じられないだろうか。ふむ、世界の説明と言うのは、この私でさえなかなか難しいものだ」
そう言って男は何気なく、近くのコップを動かした。
すると、何もしてないにもかかわらず、そのコップに水が入りだした。
「なっ……!」
「ん? ああ、ここに水の魔陣式があるだけだ。使用魔力もかなり少ない優れもので……いや、その反応。もしや貴様らの世界には、魔陣は存在しないのか?」
俺は無言で頷く。
「そうかそうか、ならば世界の違いを示すのに、これほどちょうどいいものはない。これでどうだ」
そう言い、男は左手に、何か模様の書いてある紙を持ち、右手を真上にあげる。
すると、右の手のひらから火の玉が突如現れた。
「っ!!」
「これは火の魔陣式に魔力を込めて、別なところから発火させたものだ。……まあ、これはかなりの上位魔陣でな、本来は魔力を込めた魔陣式――つまり、この紙の上でしか効力は発揮しないがな」
――手品とかの可能性もあるが、正直、今の状況だと、異世界云々の話は、一旦納得するしかなさそうだ……。
そして俺は、話を進めることに。
「さっきの話が、本当として……俺は、何のために召喚されたんだ」
「ああ、そうだな。それを話さねばならなかったか。……簡単に言うと、この世界に魔王と呼ばれる存在が誕生したらしい。そして、かつて幾度かあった大戦のように、異世界から勇者を召喚することになった。そして、この私が王に依頼され、勇者召喚の魔陣式を開発することになったのだ!」
おいおい……本当にファンタジーじゃんか……。
しかも王道も王道。『勇者と魔王』かよ……。
「マジか……それで、俺が勇者として召喚……されたわけかよ」
それが本当なら、正直……嫌だ。
そもそも勇者のシステムが他人任せ過ぎてて好きじゃないし、何より最高に面倒くさい。
そう言うのは樹にすれ。あいつなら嬉々としてやるだろう。
俺の呟きを聞き、男が表情を変えぬまま、答えを返す。
「違うぞ」
「…………ん……?」
「貴様は勇者として召喚された訳じゃない」
「は……じゃあ、なんで俺が……?」
俺の疑問に男は、軽くため息をつき、答える。
「何をわかりきったことを。――私は最高位の魔陣師にして、至高の天才! ブーゼ・ゲニー様だ!! 失敗などありえんが、もしものことも想定済みなのだ! だからこそ、失敗を未然に防ぐために私は、召喚魔陣術の予行練習を行ったのだ!! 大事な召喚の術が、ぶっつけ本番で、万が一失敗することになったら大変だからな!! 勇者召喚は時期を見て執り行われる。ハッハッハッハ!」
「は……………………」
――今、なんと言った……だろうか……。
「ふむ、どうかしたか。……ああ、事前に練習で魔陣式を試したこの私の頭脳に、感動しているのだろうな」
練、習……。
「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!!」
――――どうも俺は、勇者でもなく、勇者に巻き込まれたのでもなく、神様の手違いなどでもなく……ただの、練習で異世界に召喚されてしまったようです……。
この話は二度ほど作り直してます。
一度目はバトルメインを目指して。
二度目はのんびり異世界生活物を目指して。
バトルの方は、色々魔法の説明とか色々考えて、シリアスっぽいのも考えたけど、肝心のバトルシーンが成長しなくて断念。
カカカナとか特殊文字も考えてた気がする。
のんびり生活の方は、終わりが見えなかったこととキャラが渋滞を起こしたことで自然消滅に……。
投稿当時は、勇者召喚の練習で召喚された主人公の設定は、結構突飛な部類だったけど、今はそうでもないだろうな……。