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流される青年と無自覚天才っ子

投稿していた話です。

 朝起きて、布団から出たくなくてゴロゴロしてたら、布団が光りだした。


「お?」


 突然のまぶしさに目を閉じ、再びあけると、

「わぁー成功したー」


 と言う声と共に、目の前で小さな子供がぴょんぴょん飛び跳ねていた。

 大体……五歳から七歳くらいだと思うけど。


 ………………ん?


 えっと、確か朝起きてごろごろしてたはず……だから、夢じゃない、と思うんだけど……。


 二度寝か?



 ……いや、夢とかそっちだと思いたいけど、色々と感覚がリアルすぎるんだよな……。

 とりあえず現実と受け入れるしかないかな。


 うん、信じてみるのもまた一興っと。



 考え込んでいると、子供は心配そうに声をかけてきた。


「……おにーさん? 大丈夫ー?」

「ん? おお、大丈……」


 夢にしろ何にしろ、声をかけられたら答えてしまうのは人の性。

 で、途中で止まってしまったのは、常識を持った大人の性。


 だってこの子、耳がケモミミなんだもん。

 チラチラ尻尾が見えるんだもん。


「えっと…………」


「あ、ゴメンなさいー。おにーさん、今のままなら何も分からないよねー? 今ちゃんとせつめいするねー?」


 いきなり出鼻をくじかれたので、何をどう質問していいのか分からないでいると、この子が自分から説明を始めてくれた。


 それはそうと、この子は……どっちだ? 男の子? 女の子? この年くらいの中性的な子供は良くわからない。



 そんな俺の疑問はさておき、説明が始まった。


「えっとね? 最初はー……まず、おにーさんはボクが召喚したのー」

「召喚……? 異世界ファンタジー的な?」


「んとー、ふぁんたじーはわからないけど、異世界からおにーさんを呼んだのはそうー」

「えっと、それはまた、どうして?」



 事実なら怒っていいはずだけど、怒る気がしないのは、はたまたこの子がおっとりしているからなのか、それとも俺の性格ゆえか。





「えとねー? ボク、お友達がほしかったのー。でも、皆ボクのこといじめてくるから、お友達できなくてー……」


「そっか、それで俺を呼んだんだね?」


 なんとなく掴めた気がする。

 よくあるファンタジーみたいに王様とか魔術師とかの前じゃなくて、こんな小さな子供の前に現れたのも納得がいった。


 これなら、死亡フラグは建たないかな?




「うんー! だから、魔王さまが黒騎士さんを召喚したときの魔法を真似したのー」


「ちょっと待とうか」



 前言撤回。

 ここかなりヤバイ場所かな。


「んー?」

「魔王……? 黒騎士……?」


「うんー。魔王さまはボクたちの王様なのー。それでー黒騎士さんは、その内たたかいに来る勇者さんに対抗するために、魔王さまが呼んだのー」


「ゆ、勇者……?」


「うんー聖女さんがねー? 魔王さまをたおすために呼んだんだってー」


 勇者と魔王が戦う世界の、魔王側の子供に呼ばれた?

 や、魔王の魔法を真似るとか、見た目の年齢が実年齢と同じかわかんなくなってきた。


「そ、そうなんだ……。それで、魔王様の魔法を真似できるなんて、君もすごいんだね……。ちなみにいくつなの……?」


「十歳!」


 と、ニコニコと笑顔で答えてくれた。

 ちなみに尻尾はパタパタ振り、耳はピコピコ動いている。



 思ったほど見た目年齢と実年齢の差はなかった。

 微妙にはあったけど。



「そうなんだ、なおさらすごいね、その年で魔王様の真似なんて」


「ううんーボクはすごくないのー。魔王さまの魔法を使うのは、ボクには魔力がたりなくてー」

 そう言い、落ち込んで耳と尻尾をシュンとさせる。


「あ、ああ、でも、まあ当然かな……? うん、それは普通だよ? 落ち込むことはないよ」


 魔王が使った召喚を子供が友達ほしさにポンポン使うわけにもいかないしね。


「だからねーボクの少ない魔力でも使えるように、頑張ってかいぞうしたのー」



「……………………」



 そっちのほうがすごくね?


 それは、要は本来、魔王ほどの魔力がなければ使えない魔法だってことじゃ……。


 いや、これは俺の想像だし、もしかしたら適当に改造したら偶然成功したみたいな感じかも知れないし。



「かいぞうしてみたら魔王さまがすごいってことがよくわかったー。ボクくらいの少ない魔力でも使える魔法だけど、魔王さまは魔力が多いからー、わざわざいっぱい魔力つかうようにしてるんだもんー」



 あらやだ、この子天才じゃない。

 しかも自覚がないわ。



 わざわざ魔力使用量増やすとかそんなことするわけないじゃないか。

 そんなの魔王は大量に魔力を使わなきゃ召喚の魔法は使えないって思ってるだけじゃないか。


 ……とりあえず流そう。


「そ、そっか」



「あ、でもねー? 魔王さまの魔法だけじゃふあんだったからー聖女さんのところにー勇者さんを呼んだ魔法の本を見に行ってー」



「もう一回待とうか」

「んー?」


 今この子すごいこと言わなかったかしら?


「えっと、今ちょっと聞いただけだから、合ってるか不安なんだけど……聖女とか勇者のとこって……敵、なんだよ、ね……?」

「そーだよー。魔王さまを倒すって言ってるのー」


「……ど、どうやって、見に行ったの?」

「んとねー、召喚の魔法をさんこうにしてー、ボクだけ転移してー聖女さんの魔法が書いてある本見てきたー」


「そんなことで出来るんだ……」

「んー? ボクが行って帰ってくるだけだからかんたんだったよー?」



 うん、この子天才の域を超えてるわ。


「それで、おにーさんにきてもらったの」

「そうなんだ……でもそんなに争いが多いとこなら、危ないかな……?」


 後半は独り言のつもりだったのだが、目の前のこの子は笑顔で答えてくれた。


「あ、おにーさんは大丈夫だよー。ボクをイジメテくるやつらがおにーさんもイジメたら困るから、おにーさんを召喚するときに勇者さんと黒騎士さんの二人のつよさを足したくらいにしたからー」


「うん、何度も悪いけど、また待ってもらっていいかな?」

「なにー?」


 おいおい、勇者って魔王を倒す為に呼んだわけで、成長したら魔王と同じくらい強くなるもんだろ……。

 そんで黒騎士とかいうのも、話を聞く限り、魔王が勇者に対抗するために呼んだってことはかなり強いはず。


 で、俺は、その、二人分?


「あーっと、ね? 勇者と黒騎士、後は魔王様の強さってどれくらいなのかな……? わかる範囲でいいんだけど」


 俺が尋ねると、変わらず笑顔で答えてくれた。

「えとえと、魔王さますっごくつよくてねー。多分だけど、勇者さんと黒騎士さんが二人でたたかって、やっと勝てるくらいー……かなー?」


 …………つまり、今の俺がギリギリ魔王に勝てるくらいってことだね。



 あー……この子の願いがお友達になってくれで本当によかったかも。

 この子に自分の才能の自覚がちょっとでもあったり、ちょっとだけでも野心があったら確実に戦火に巻き込まれてた気がする。








 ……さて、大体教えてもらえたな。


 あ、後は……ちょっと聞きづらいが。

「そっか。……あー、一応聞いてみるけど、やっぱり帰れない……よねー?」


 と、半ばあきらめ気味に聞いてみると、


「え? 大丈夫だよー。お友達をずっとひきとめてたらヒドイもん」

 意外とあっさり答えが返ってきた。


「え、あ、帰れるんだ」


「あ、でもたまにはお泊りしてほしいなー」

「え、ああ、うん」


 結構予想外。

 こういうのは帰れないのが普通かと思ってた。


 俺が少しホッとした顔をしたのを見てか、恐る恐る、耳をへたらせ、若干涙目で尋ねてきた。


「あぅ……もしかして、お友達になるの……いや、だった……?」


「いやいや、大丈夫。いいよ。お友達になろう」


 そう言うとパッと顔を明るくし、尻尾をぶんぶん振って再びぴょんぴょん飛び跳ね、喜び始めた。


「わぁい! ありがとーおにーさん!! これからよろしくね!」

「ああよろしく」



 普通にあっさり了承してしまった。


「それで、おにーさん……今、かえっちゃうの……?」

「ん? んー……」


 まあ、元の世界にいてもやることがあったわけでもないし、もうしばらくこっちでこの子の友達でいるのもまた一興……かなぁ?


「いや、しばらくはここにいるよ。一緒に遊ぼうか」

「ほんと!? わーい!!」


 そう言って俺に抱き着いてきた。


 あら可愛い。

 とりあえず頭を――つまり一緒にケモミミを撫でてみる。



 …………うん、モフモフ気持ちいい。


 早速だが、友達になってよかったかも。








「あぁ! わー! たいへんだよおにーさん!」


 しばらく撫でてたら、何かを思い出したかのように大きな声を出した。


「ん? どうした?」


「まだ、じこしょーかいしてないよぉ!!」

「ああ、そういえば……。じゃあ、改めて自己紹介しようか」


「うんー! えっとね? ボクの名前は――――」



 異世界に呼ばれ、今の状況に抗うことなく流される青年と。

 異世界から召喚出来るほどの実力も、まったく自覚はない天才ケモミミっ子。



 ――こうして二人はほのぼの、お友達ライフを過ごしていく。


連載にしなかった理由は何となく名前を出したくなかったことと、連載したらいずれこの子の性別を書かなきゃいけない気がしたので、それは嫌だなと。

元々続きもありましたが、それは今回省きました。

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