とある猿の話
投稿していた話です。
知っているとは思うけど、まずは名前だな。
俺は闘戦勝仏。前は斉天大聖だったりした。
後は有名どころだと、『孫悟空』だったりしたな。
今は違う名。
結構前に馬鹿な仲間と師匠さんと西の『天竺』ってところに向かって、一緒に旅しててさ。
道中妖怪と戦ったり、事件に巻き込まれたり、まあ色々あって、最終的には皆、平和! って感じで落ち着いたんだけどな?
やっぱり、平和って……暇じゃん。
それをお師匠さんに相談したら、「旅でも出たらー?」って言われてさ。
それに対して俺が「いいすかー?」って聞いたら「いいよー」って言ってくれた訳。
んで、皆にお勧め聞いてたら、チョイと東のほうにある、ちっちゃな島国がいいって言うからさ。
そこ行ったの。
到着してみたら、皆が言ってた通り、のどかでいい所だと思った。
でも、少し旅して気づいたのが、どこもかしこも何か騒がしいわけ。
よくよく話聞くと、俺が元いた国もこの国も、抱えてる問題は同じでさ。
この国では、なんか『鬼』っつう妖怪がでかい顔してるって言うんだ。
だったら俺が何とかしてやろうとか思うじゃん。
どうせ暇だったし、何より今までずっとそうやって旅してきたんだから。
でも、そうやって考えるのは俺だけでもなかったんだ。
鬼がいる場所を人間に聞いたりしているときに、なんか犬を一匹連れた人間が俺に声をかけてきたわけ。
「鬼を探しているのか? やめておけ、危険だ。俺が始末してくるから大人しく待っていろ、そこの猿」
だってさ。
俺だよ? この俺様に向かってだよ?
腹がたって我慢できなかったから、喧嘩吹っかけたわ。
そしたらさー…………めちゃくちゃ強いのなんのって。
昔戦った『金閣・銀閣』やら『牛魔王』なんて比じゃない強さだったんだ。
もう、こいつ本当に人間かっ!? って思ったよ。
その喧嘩は三日ほど続いてさ、鬼の事なんかすっかり忘れて、最後はどっちかが死んで終わり、とか思ってたんだ。
だけどその喧嘩は途中で止まっちまった。
――ぐぅー……。
……って、俺とそいつの腹が同時に鳴っちゃって。
これには俺もそいつも大爆笑!
どんなに強い奴でも、空腹には勝てなかったってことさ。
とりあえず腹ごしらえしてからもう一戦って事になって、そいつから団子を一つもらったんだ。
その時は、ただの団子だし、一応腹を膨らませる為の、大したことない普通の団子だと思ってた。
違った。
その団子――メチャメッチャ旨いんだ。
今まで色々旅してきたけど、こんな旨いもんは食ったことなかった。
どんなご馳走よりも旨く、一瞬で腹も膨れ、体の疲れが吹っ飛んだんだ。
あれは衝撃だった……。
あまりの旨さに、正直戦いどころじゃなくなって、団子の出所を聞こうと、少しそいつと世間話をしてみた。
そして気が付けば………………そいつと俺は意気投合していた。
その様子にそいつの連れの犬も唖然としてたな。
そん時、ふと俺が気づいて言ったんだ。
「俺たち組めば最強じゃね?」って。
そいつも、盲点! 見たいな顔した後、俺とそいつとそいつの連れの犬、途中で拾った雉を連れて『鬼ヶ島』とか言う島行ったんだわ。
鬼退治と言ったとこさ。
どうなったかって?
決まっているだろ?
もうボッコボコよ。
鬼たちも、凶暴で本当ならそこそこ強かったんだろうけど、俺とあいつの二人に勝てる奴なんていないさ。
最後は鬼たちから巻き上げた財宝を山分けして、その人間の癖に人外の化け物――『桃太郎』と別れたわけ。
まあ、実際は俺のほうが化け物なんだけどさ。
改めて思うが、『悟浄』や『八戒』よりも、桃太郎のほうが俺の戦友って感じだね。
「その後も色々あってさー……」
「おい猿」
「んだよ、これからいいとこなんだぜ? ノブちゃん。特にすごい頭のキレる蟹とその仲間たちとの攻防は手に汗握ってだな……」
「もういい。お前の話はもう聞き飽きた。てかノブちゃん言うなし」
「いいじゃん、俺とお前の仲じゃん」
「俺とお前の仲は、殿と家臣だったはずだが?」
そう言ってノブちゃんは俺を睨む。
「だから、他のやつもの前ではちゃんとしてるだろ? 今は俺ら以外いないしいいじゃん」
「ふー……なんでこいつと出会ったんだろうな、俺は……」
おいおい、ノブちゃん、ため息は幸せが逃げるよ?
「まあまあ、気にすんな? ほらみろ、冷たくならないようにわらじ……じゃなくて刀を懐で温めておいたぞ?」
「何のためにだ!! ただの嫌がらせか!!」
「正解」
「……殺すならホトトギスじゃなく、この猿を……だな」
「いやーん」
「……おい、猿よ」
おっと、ノブちゃんが真剣な顔になった。
「んー?」
「貴様に命を下す」
わざわざそういうって事は、普通に戦かね?
「へいへい、この木下藤吉郎。織田信長様の為なら何でもしましょ?」
神話からおとぎ話を又にかけ、果ては人の歴史にさえ顔を出す。
とある猿の活躍は、一つの話で終わること無し。
何かノリで書いたので、完全に連載にする気はなかった奴です。