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あったか彼女の日常 冬/夏

以前に投稿した作品です。

緩い話が書きたくなったので書いたものです。

 冬


 朝、私の目覚めと同じに、キョウ君が私を暖かくしてくれます。

『ふぁ……おはよう、キョウ君』

「ああー暖かい……うー、このまま寝落ちたい……」

 そう言ってキョウ君は私を温めてくれます。

『ふみゅー』

「恭一、馬鹿な事言ってないで、顔でも洗ってきなさい」

「ふぇーい」『あ、おかーさん』

 おかーさんがキョウ君を私から引き剥がしました。

 少し寂しいです……。

『おとーさんはまだでしょうか……?』

 私がそんな事考えていると、

「恭一! わかってると思うけど、今日はお母さんとお父さん夜まで仕事だから、留守番よろしく」

 そうでした。

 今日はおかーさんもおとーさんもお仕事でした。

 多分私が眠ってる間におとーさんはお仕事に行っちゃったんですね。

「てことで、お母さんもそろそろ行くから。でもあんまりゴロゴロするんじゃないよ」

「へいへい」

 キョウ君は私に引っ付きながら返事します。

『おかーさんいってらっしゃい』

「いってら」

 おかーさんは軽く手を振って、お仕事に行ってしまいました。

 …………あ、じゃ、じゃあ、今日はずっとキョウ君と一緒です!


「ふー……よし! 今日は君を離さない!」

『はぅー……嬉し恥ずかしです』



 しばらくキョウ君は、私にくっつきながらいましたけど、

 ブーッ! ブーッ!

 携帯が鳴りました。

 キョウ君は面倒そうに電話に出ます。

「……もしー」

『オレオレオレオレオレオレ!!』


 プチッ!!


「ふー……」


 ……よくわかりませんが、キョウ君すぐに電話切っちゃいました。

 聞こえませんでしたが、電話口でなんかいわれたんでしょうか……?

 ブーッ! ブーッ!

 あ、またかかってきました。

「……………………」


 あ、あれ?


『キョウ君? 出ないんですか?』

 ブーッ! ブーッ!


「……ちっ……もしもし」

 舌打ちしました!

 キョウ君なにやらご立腹です!

『何でいきなり切るかー』

「うるさい黙れ死ね」

『早速酷い!』

「用件は何だ」

『キョーウー君! あーそーぼ』

「やーだーよ」

『なしてか!?』

「寒い」

『子供は風の子さー』

「生憎うちの両親は人間だ。お前は知らんが」

『や! うちも人だから!』

「……ま、世の中には隠しておくべき真実もある……か……」

『お前はオレの何を知る!』

「や、特には。てか知りたくもない」

『再び酷い!』

「とにかく。寒いから行きたくない」

『冬なんだから仕方なかろうが』

「いや、今の『寒い』は気温とかじゃなくて、お前の存在が」

『三度酷い!』


 電話口の声は聞こえませんが、キョウ君は心なしか楽しそうです。

 お友達でしょうか?


「っるさいなー、行きゃいいんだろ。どこだよ」

『おー! 来てくれるか! さすが親ゆ「やっぱやめるわ」なにゆえ!?』

「え? だって不快な単語が」

『やっぱり酷い! わかったよぅ、もういわねーよぅ……くすん』

「いいからさっさと場所を言え」

『あ、はい。いつも通りですー』


 プチ!



「……仕方ない……行くか」

『……ぁ……出かけちゃうんですね。いってらっしゃい』

「……うー、離れたくねぇ」

 そう言ってキョウ君は私にしがみつきます。


『ダメですよ。お友達? を待たせちゃ』



 キョウ君は数分、しがみついたまま動かなくて、その後、意を決したように立ち上がりました。


「うし! 行くかな」

『っ……! はい、いってらっしゃい』



 そのまま、キョウ君はドタバタと準備をして、玄関先で小さく「いってきますっと」と呟いて、出かけてしまいました。



 ………私だけに、なっちゃいました。


『……ま、まあ、良くあることです! 今更気にしてはいけません!』




 ――でも……。



『やっぱり、私の周りに誰もいないのは……寂しいです、ね……』







 それからしばらくの間、私は誰かが帰ってくるのをずっと待ってました。

 せっかくキョウ君が起こしてくれたのに、勝手に眠るわけにはいきません!

 帰ってきたキョウ君を暖かく迎えるのです!!


 そんなことを考えていると、

「ただいま……っとー」

 ! キョウ君です! 帰ってきました!


『お帰りなさい、キョウ君!』

「うー、寒かった!」

 キョウ君は一直線に私のところに来てくれました。

『わわっ! キョウ君ヒエヒエです!』

 ふふふー、私が暖めたげます!


「よ……っと」


『あ……キョウ君が、私の中に、入ってきま……すぅ……』


「ふぅー、やっぱり暖かいなぁ」

『ふふ、それはよかったです』


「ただいま」「ただいまっとー」

 あ、おかーさんとおとーさんですね!

 ……それにしても、おとーさん……キョウ君と同じ言葉で帰ってきましたね。


「っく! 奴も帰ってきたか……!」

『こら、キョウ君。おとーさんを奴呼ばわりしちゃダメですよー』


 キョウ君の言葉だけで、おとーさんのことだとわかる私も私ですけどね?


「お、キョウ。暖かそうだな……俺も混ぜろ!」

「がっ! 邪魔くさい」

「堅いこと言うな……よっと!」


『あぁ! お、おとーさん……乱暴ですよぉ……』


「下らない喧嘩をするんじゃないよ……まったく」

「「下らなくない! これは真の実力者を決める戦いなんだ!」」

「わかったから、一人分空けなさい」

「「はい……」」


 おかーさんは最強ですね!



 おかーさん()私の中に入り、キョウ君と私だけだった空間に、おとーさんとおかーさんが加わりました。







「はぁあ……落ち着く……コタツはいいにゃあ……」

「いや、まったくだ。コタツは人類最大の発明だな」



『ふふふ、ありがとうごさいます』




 家族が私を囲んで賑やかにお話してます。

 私はこれほど嬉しいことはありません!



 キョウ君と私だけしかいないのも嬉しいけれど……何より家族一緒が一番ですね!








「コタツが落ち着くのは同感だけど、物足りないわ。二人でお茶と買ってきたミカンを持ってきなさい」


「「……横暴」」

「何か……言ったかしら?」

「「いいえ、何も」」



 …………一番ですね!





 夏


 ある晴れた日、窓から差し込む日差しが眩しい今このとき、私に危機が迫っています……!

『お、おかーさん……ダメ……です。お願いします……そ、それだけは……」

「母! 見損なったぞ! どうして……どうしてそんな非道なことをしようとする!」

 にじりにじりと迫りくるおかーさんと私との間にキョウ君が立ち、私を守ろうとしてくれてます!

 キョ、キョウ君……!

「はぁ、何馬鹿なこと言ってんの。早くどきなさい。てか手伝いなさい」

『そんな……! おかーさん……』


「なんてことを……俺に……俺にこいつを!?」


「当たり前でしょ。さっさと手伝いなさい」

「だが断る!!」

 キョウ君が……キョウ君が必死で私を守ってくれてます!

「ふぅ……ああ、もう手伝わなくてもいいからどいて」

「どく訳ないだろう!!」


「あーついでに掃除もしたら扇風機も出てきたからあんたの部屋にさっさと置いときなさい。ただ扇風機ちょっとホコリかぶってるから掃除してからにしなさいよ」


「マジか、わかった。オッシャー! 待ってろプーキーちゃん!!」

『え、え!? キョ、キョウ君!! 待ってぇっ!! それはおかーさんの罠です!!」

 さっきまで守ってくれたキョウ君が一瞬で!?

 キョウ君が私の前からいなくなって、すぐに大きなものを持って現れました。

「うし、さっさと設置すっか」

 ああ! キョウ君がプーキーちゃんを連れてお部屋に!


『だ、騙されちゃダメですぅ! プーキーちゃんは冷たい女なのですよ!!』


 でもキョウ君に私の心の叫びは届きませんでした……。

 うぅ……プーキーちゃんが勝ち誇ったような顔をしてる気がします……。



「邪魔は消えた、か」

『はぅ! ……あ、あのぅ……お、おかーさん……考え直してくださいぃ……』

 私が頼んでる間もじりじりと私に近づくおかーさん。

「さて、さっさと終わらせて、買い物行かないと」



『……あ、や…………みにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!』








「あーおわたおわた。つーかーれーたー」

 …………うぅ……ぐすっ……スン…………キョウ君が……戻ってきたみたい、です……。

「ん、そういゃ俺は何を……………はっ!!」

 ちょっと離れたとこから、私の事を見て急いで近寄ってきました。


『……あ、待って……キョウ君……こ、こないでぇ…………』


「そ、そんな……こんな……こんなことって……」



『は、恥ずか……しい……。いやぁ……お願い……キョウ君……こんな私を、見ない、でぇ……』



「そんな………………コタツの布団をしまうなど、母は正気か!?」

 キョウ君は、私から剥ぎ取ったものを畳んでるおかーさんに睨みました。

「当たり前だ馬鹿もの。てか今時期にコタツなんて出してる家がどこにもないし」

「あるわ! 異世界に理不尽な理由で呼び出されちゃうような高校生の家とか!! 出張で忙しいだのスランプから抜け出せないだの色々言い訳してるダメな社会人の家とか!!」

「何電波なこと言ってんのよ。て言うか後者は普通に出張で帰ってないからコタツ出しっぱなだけじゃない」


 私は……私は、あられもない姿になってしまいましたよぅ……。


「く、くそぅ!!」

「あんた自分で見捨てたじゃん」

「ち、違う!! 違うんだコタツさん!! 母! 何を言う! 俺はコタツさんを見捨ててなんかいないぞ!」


『…………いいん、です。私は、そういう都合のいい存在……なんですよね……。一時の満足のために求められ続ける。そうなんですよね……? 今のキョウ君が求めるのは、プーキーちゃんの方なんですよね……?』


「別にコタツ自体片づける訳じゃないからいいじゃん」

「そういうことじゃないぞ! コタツさんを剥くなんて!!」

「剥くて……」

「うーゴメンな? コタツさんよ。俺が不甲斐ないばかりに」

『大丈夫ですキョウ君。肌寒くなったらまた温めてあげますから。……その時は、またギュッて抱きしめてくださいね?』


 そう言ってキョウ君は私に寄り添ってくれました。

 ……えへへ。


 キョウ君がこう言ってくれるだけで、こんなあられもない格好でも、寒くなるまで我慢することができますね!







「…………この馬鹿は夏が来れば毎年毎年、何やってんだか」

話を練って連載用にしようと思えばできましたが、ダレたので以前に短編二つで投稿した話です。

整理するのに一旦消したのですが、復活です。

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