表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/22

①兄と友達

 幼稚園までは、何をやるにも一緒だった。小学生までは、隣の布団で寝ていた。中学生までは、一緒に登下校していた。

 高校生になってから、何だか冷たくなった気がする。俺はどうすればいいのだろう?


 俺の相談に、親友の玉木正と枝葉楓は揃って


「「いい加減妹離れしろ」」


 と回答した。


「小方川さあ、妹の美子ちゃんが可愛そうだと思わないの?」

 と玉木。


「私だったらあんたみたいな兄さん、絶対嫌だわ」

 と枝葉。


「わざわざ喫茶店なんか連れて来てさ、俺だって暇じゃないんだぜ?」

 と玉木。


「私だって、良い大学狙ってんだから。貴重な勉強時間を削って来たのに」

 と枝葉。


「うるさい!」

 俺はテーブルを叩いて激怒した。


「何が暇じゃないだ!お前ら揃って帰宅部だろうが!良い大学狙ってる?うちみたいな底辺進学校しか入れなかった奴が嘘付け!嫌なら出てけ、今すぐ出てけよ!」


  玉木と枝葉が本当に席を立って出て行こうとしたので、俺は慌てて二人の腕を掴み、引き止めた。


「ごめんなさいごめんなさい。もう大声出さないから、悪口言わないから、お願いだから聞いてください。あなたたちしか相談できる人いないんです。お願いしますもうしません」


 二人はしぶしぶ元の席に戻った。ふとカウンターの方を見ると、店長(マスター)がとてつもない形相で睨んでいる。どうやら声が大きすぎたらしい。

  俺は急いでマスターの元へ駆けつけ謝りに謝った後、店内にいたお客さん一人一人挨拶に伺い、全員に頭を垂れて謝った。


 やるべきことを終えた俺は、やっと自分の席に戻った。


「まあ友達だから、悩みは聞くけどさ」

「ありがとうな玉木。ありがとう」


「貴重な時間を友人に捧げるのも悪くないしね」

「ごめんな枝葉。ごめん」


 枝葉はセミロングの黒髪を右手で払う。形の良い耳が一瞬露になり、自然に目で追ってしまったが、それでも我が妹の方が数段美しいはずだと心の中で思い直す。


「で、美子ちゃんに何かあったの?あんたシスコンで気持ち悪いけど、美子ちゃんもあんたのこと嫌ってなかったはずでしょ」


「それどころか大好きなはずだよ」


「それは主観の問題として」


「違うよ。美子は俺のこと大好きだよ。これは絶対の事実だよ」


「分かった分かった。分かったから。

 で、妹が最近冷たいって言ってたけど、何かあったの?早く言ってみなさいよ」


「どうせ」


 玉木が人の悪い笑みを浮かべながら口を開いた。歪んだ唇が彫りの深い外国人風の顔に似合っていて、同性から見ても魅力的だった。


「おはようの挨拶返してくれなかったんだよ~とか、最近行ってきますのチューがないんだ~とかそんなところだろ。お前らのシスコン、ブラコンっぷりは有名だ」


「チューはさすがにしてない」


「冗談だよ」


「一緒にお風呂は入ってるけどな。一週間に一回」


 玉木は絶句した。

 枝葉は話を戻すためか、一つ空咳をした。


「ともかく、ブラコン入ってる美子ちゃんが最近冷たいってどういうこと?原因は分かってるの?」


「ああ、冷たいっていうのは言い過ぎだったかもしれない。ただ最近隠し事が増えてな」


「美子ちゃんも高校生なんだから、それぐらい当たり前よ」


「仕方ないのかな・・・で、心配だから最近美子の部屋に忍び込んで机の中、ベッドの下、箪笥と、定期的に調べてるんだが」


「母親かよ」


 俺はバッグから白い封筒を取り出すと、封筒の中から、折りたたまれた一枚の紙を出して、テーブルの中央に置いた。


 二人は身を乗り出して、それを眺める。


「これは?」


 玉木の疑問に答えるように、俺は折りたたまれた紙を広げ、その中身を二人に見せた。


「ラブレターだ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ