リターン・トゥ・ベース
鎮圧作戦は敵国の必死の抵抗で泥沼状態に陥っていた。
敵戦力の増強、暗号の改変と奇襲、一時は敵の増援で敵戦力は約400機までに増えたが、自軍の地方方面隊による約200機の増援で、戦況は微妙なバランスの上で揺れ動くシーソーゲームの状態になっていた。
「ローフィさん! 今回の攻撃であのケツ穴野郎ども蹴散らしてやりましょぉぉぉ!」
クロノスは作戦前のロッカールームで無駄にはしゃいでいた。
「そうだな、俺も早くこの戦いを終わらせたいぜ!」
2人はパイロットスーツに着替えをすませ、ドックに向かっていると、いきなり基地内にアラートサイレンが鳴り響いた。
「ローフィさん! 奇襲ですか!? あのケツ穴野郎共ぉぉぉぉ!」
「とりあえずドックに急ぐぞ!」
ドックに行くとキルゴア中佐による臨時のブリーフィングが開かれていた。
キルゴア中佐の作戦を聞くと、アヌストリス軍の奇襲で現在キンバリー地区より全軍、約320の軍勢で攻め込んで来ている、それを王都より20kmの地点でこちらも227機で迎え撃つ作戦だ。
今回もはじめに智樹のバイパーゼロで攻め込み、そこでWT部隊の到着を待つ、全弾を叩き込んだら智樹は一旦基地に戻り弾薬を補充、そして敵の戦力を殲滅、今回でこの鎮圧作戦を終わらす計画だ。
「アストナージ! 今回はクラスター爆弾を積んでもらえるか?」
智樹はコックピットに乗りながら、弾薬装填の指示を出していたアストナージに装備の変更を申し出た。
「オッケー! 翼の方に空対艦ミサイル装備しとくぞ!」
アストナージは今回の作戦にあった装備をして、智樹に向かって親指を立てた。
智樹はアストナージのサインを確認してキャノピーを閉め、「Danger Zone」をかけ、誘導員に導かれカタパルトに乗った。
するとキルゴア中佐から無線が入った。
「こちらキルゴアだ。今回の作戦は最重要作戦だ。油断なきよう成功に励んでくれ。」
「了解! それじゃ出撃する!」
智樹は誘導員の指示を待っていると、そこに突然ノーリがバイパーゼロに駆け寄って来た。
智樹はキャノピーを開けてノーリの話を聞いた。
「ローフィ! 僕のせいでこんな戦いが始まって、みんなに迷惑をかけてしまった。すまない」
ノーリは柄にも無く瞳に涙をためている。
それを見た智樹は機首に書かれたノーズアートを指差してノーリに声をかけた。
「ノーリ! 心配すんな! 俺はお前からチャンスを貰った! そして何より、勇気をもらった! 何事にもあらがい続ける勇気! それがこの結果を招いたとしても、それはお前の成功に必要な事で、明日に繋がる大事な一歩だろ? だったら俺はその明日をお前にプレゼントしてやるよ!」
智樹は泣きそうなノーリに親指を立てた。
「バカ……」
「ん? なんだって?」
そうするとノーリは、「うるさいっ!」といって智樹に向かって何かを投げつけた。
投げつけられた物を智樹はキャッチして、手を開いて投げつけられた物を確認した。
「ネックレス? いや、ロケットか! 何だ? これ?」
智樹は受け取ったロケットを開くと幼い頃のノーリと、一人の女性が写っていた。
「それは奴隷解放された時に、僕がママに頼んで写真家に撮ってもらった物だ。その後にママは流行病で亡くなってしまった。ローフィには居なくならないで欲しい。だから! 絶対またここに戻って来て、そのロケットを僕に返してくれ! それが僕の明日に繋がるのだから!」
ノーリは智樹の返事を聞かずに歩いていってしまった。
「わかった! お前の明日は俺が持って返ってくるよ!」
智樹は首にロケットをかけ、キャノピーの閉めて誘導員に親指をたてた。
そうすると、誘導員から出撃サインが出た、カタパルトオフィサーがスイッチを押し、バイパーゼロは大空へと出撃した。
ーーーー
「こちらローフィ20kmのポイントに到着、レーダーに敵兵を確認! これから攻撃を始める!」
智樹は翼のミサイルを敵WTに撃ち込んだ。
智樹の撃ち込んだミサイルは敵機8体を巻き込んで爆発した。
そうすると、敵の銃弾が雨のように打ち上げられて来た。
「アゥストフ達が来るまであと10分くらいか!」
智樹はあと3発あるミサイルを一気に撃ち込んだ。
敵軍陣は三つの爆炎をあげてパニックを起こしている。
そこに追い込みをかけるように低空飛行でバルカンを撃ち込んだ。
智樹だけで57機のWTを撃破した。
「盛大にやってますねぇ! ローフィさん! 俺もやってやりますよぉぉぉぉ!」
予定より少し早いが自軍本陣が到着し、一斉攻撃を始めた。
「アゥストフ! 俺はもう一発爆弾投下したら一旦基地に戻る! 弾薬の補充次第戻ってくるから、あとは頼むぜ!」
智樹はそう言うと爆弾槽を開き、クラスター爆弾を敵軍のど真ん中に投下させ、大型の爆弾は無数の小型爆弾を吐き出した。
無数の小型爆弾は敵のWTに直撃して無数の爆炎をあげた。
そうして智樹は弾薬の補充をしに基地へ帰投した。
ーーーー
智樹は一旦コックピットから降り水分補給をしている。
「アストナージさっきの装備でまた……」
智樹が装備プランをアストナージに伝えようとすると、再度アラートサイレンが鳴り響き、スピーカーから焦るような声が聞こえて来た。
「非常事態発生! 非常事態発生! 作戦空域に敵生物兵器ドラゴン襲来! 作戦空域に敵生物兵器ドラゴン襲来!」
智樹は急いでバイパーゼロのコックピットに乗り込み、弾薬補充を待った。
アストナージからの合図を受け、カタパルトに乗り込み再度空へ出撃した。
「ノーリ! お前の明日は俺が持って返る!」