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Master & Commander

 その日の空は雲がかかり、空からの奇襲に適している状況だ。


「こちらローフィ、あと2分で敵ベースキャンプ空域に到着する。オーバー」


「了解、到着次第攻撃を開始しろ。アウト」


 智樹はふと、イラクでの敵との戦闘の事を思い出していた。


ーーーー


 イラク軍が所有していたMiG-25戦闘機との空中戦。

 相手のMiG-25はミサイルを、躊躇無く撃ち込んできた。

 それをかわした智樹は、基地と無線で連絡を取った。


「こちらローフィ、敵機MiG-25より攻撃を受けている! 迎撃許可を!」


「敵機の攻撃を確認した。直ちに迎撃し自衛に尽くせ。」


 その後は想像できる展開だ。

 緊迫した空気、攻撃をされないように距離を取り、攻撃されたらそれを追撃、または回避その繰り返し。

 敵の機体に向けてバルカンを撃ち、避けられた所に智樹はミサイルを撃ち込んだ。

 ミサイルを撃ち込まれたMiG-25戦闘機は、爆発し墜落していった。


ーーーー


 すると突然、先に出ていたアゥストフから無線が入った。


「こちらレッド01、こっちももうすぐベースキャンプに着くぞ。オーバー」


 やはり、アゥストフの声にはやる気が見られない。


「こちらローフィ、目的空域到着までのこり5秒だ! 先に見せ場作っちまうから、遅れんなよ? オーバー!」


 智樹はベースキャンプに接近し、WT格納スペースに向けてミサイルを2発撃ち込んだ。

 するとミサイルは爆炎と共に5機のWTを破壊した。

 その爆炎と共にベースキャンプには非常事態警報が鳴り響いた。


「何処からか敵の爆撃を受けている! 戦闘員は戦闘態勢に入れ!」


 ベースキャンプのスピーカーからは、敵戦闘員に非常事態命令が出されている。


 「いったい何処からなんだ!」


 すると、少し遅れて来たWT部隊からの一斉攻撃が始まった。


「こちら、レッド01目標はざっと240! 出来るだけ奴らの戦力を削るぞ!」


 こちらの戦力はWT部隊1小隊につき11体に電子装甲車2両の計13機、それを3小隊分計39機+俺のF-2戦闘機1機になる。

 戦力差で言ったら計り知れないぐらい不利な展開だが、何故第6小隊まであるWT部隊の半分しか、今回の戦いに送り出さなかったのか。

 それには列記としたキルゴア中佐の思惑がある。

 一回の戦闘に全隊を派遣すると、次の戦闘の時に疲弊した兵士を派遣する事になる、そうすると中盤には兵士の士気が落ち戦死者を量産してしまうからだ。

 そうなれば後半には士気が落ちPTSDに陥った兵士達を使いあげくの果てに負けてしまう。

 なので今回キルゴア中佐が取った作戦は、3部隊交互に休みを取り、奇襲&ヒット&アウェイ作戦だ。

 空からの奇襲そして畳み掛けるような一斉攻撃、必要な攻撃を終えたら、撤退に必要な弾薬を残し撤退。

 智樹は空から追いかけてくる敵を殲滅、殿をつとめる。


「あのケツ穴野郎共に俺がぶち込んでやるぜ! ローフィさん見ててよ!」


 この威勢のいい青年はクロノス・マクラーレンという新兵で、つい先日退役した兵士の代わりにアゥストフ隊に入って、元気が良く智樹になついている若者だ、今回の作戦が初陣で武勲をあげようと熱くなっているのか前に飛び出している。


「クロー! お手並み拝見だな!」


「おいおい、熱くなるのはいいけど作戦忘れるなよ?」


 アゥストフは心配になりクロノスに釘を刺した。


「大丈夫ですよ隊長! こんな奴ら俺一人でボコボコにしてやりますよぉぉぉぉ!」


 すると、「出過ぎ!」と言わんばかりに、クロノスのシュータードッグの頭部をかすめる銃弾が後方から飛んで来た。

 その当たった銃弾の衝撃にクロノスは驚いた。


「えっ? なんです? 俺ヤラレタっすか?」


「知ってるかクロー? 無能な働き者は害悪になるんだぜ?」


 その正体はグエルだった。

 グエルは、初陣で興奮するクロノスのシュータードッグの頭部に寸分違わずかすめるようにライフルを撃ち、特攻を止めたのだ。


「ターキーはハンターに突進して撃たれるんだ! お前はもう少しチキンになれ!」


 グエルはいつもと変わらず自分のジョークで爆笑している。

 智樹は前にグエルから聞いて嘘か本当かは解らないが、ジョークを言ってないとライフルの命中率が落ちるらしい。


「すいません! ヘイへ中尉!」


「俺もクローを焚き付けちまってすまん! グエル!」


 智樹は一瞬反省したが、それを聞いた他の隊員達が爆笑した。


「ローフィが反省してるぜ!」


「隊長のプリン食べても、我が物顔のローフィが!」


 それを聞いたアゥストフは、「そうか、お前だったのか!」と言って、それに続いていろんな隊員の笑い声が、無線を通して聞こえて来た。

 アゥストフ部隊は銃弾飛び交う戦場でも冗談を言い合い笑いながら戦闘を行っていた。


 ある程度の時間が過ぎ弾薬も底をつきかけた頃に、アゥストフからの指示の無線が入った。


「よし! 撤退だ! 各自弾薬を残して基地に撤退する! ローフィ、殿任せたぞ! 基地に帰ったら飲もうぜ!」


 アゥストフは各機に撤退命令を出して、撤退していった。

 そして智樹は追いかける敵WTを後ろから殲滅していった。


 今回の作戦で、受けた被害は2機、死亡はしていない。

 一方敵は50機のWTを失った。


ーーーー


「作戦成功おめでとぉぉぉ! そして、俺の初陣無事帰還おめでとぉぉぉぉ! かんぱぁぁぁい!」


 クロノスは作戦の成功が嬉しかったのか、隊の行きつけのPUBではしゃいでいる。


「隊長! ヘイへ中尉! ローフィさん! 今日はありがとうございますぅぅぅぅ!」


 はしゃいでると思ったら、今度は急に感極まってクロノスが泣き出した。

 グエルはおかまい無しに一人でジョークを言って爆笑してるし、アゥストフは面倒くさそうにクロノスの熱い話を聞いている。


「今日は久しぶりに飲むかぁぁぁぁ!」


 智樹は吸っていた煙草を灰皿に置き、グラスに注がれたウィスキーを一気に飲み干した。

 

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