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Pathfinder

 100名ほどの兵士達がブリーフィングルームに集まっていた。

 そこにはWTに乗る戦闘員、前線で電子戦をする電子戦闘員、WTや装甲車両の整備をする整備班、食事の配給をする炊事班が、大きなモニターの前に並んで座っている。

 智樹はその部屋を後ろから前の方に進み、空いていたアゥストフの横に座った。


「よっ!」


 だるそうにむっつりしているアゥストフの横から、グエルがひょっこり顔を出して手を挙げていた。


「よう!」


 智樹も手を挙げて挨拶をした。

 すると、前のモニターの前に立っている男が話を始めた。


「これから、敵軍の侵略ならびに、反逆者達によるクーデターの鎮圧および殲滅作戦の、ブリーフィングを始める」


 そこには、ビシッとアイロンがけされた迷彩戦闘服に身を包み、首元に黄色いスカーフを巻いた男が、立っていた。


「私は今作戦の指揮をとるウォルター・キルゴア中佐だ!」


 智樹は何か見た事のあるような姿だと思ったが、作戦内容を聞く事にした。


「今作戦は明日、王都に攻め込んでくるアヌストリス公国軍の侵攻を制圧する事にある。知っての通り、ユークリッド研究機関の反ベンダー派閥による軍事WT、シュータードッグ250体をアヌストリス軍に横流し、亡命しようと画策を企てている。情報提供はユークリッド研究機関中立派閥の研究員によるものだ。すでに亡命を企てている、大半の研究員を国家転覆の罪で捕縛している。今回の戦闘は長期にわたる戦闘だと予測しているため、電子戦闘員や、整備班や、炊事班には頑張ってもらわなければならない。」


 キルゴア中佐はそう言うと、非戦闘員の兵士達に頭を下げた。


「暗号解析班からの情報だと、奴らの目的は、この先100kmの地点キンバリー地区にベースキャンプを建てて、長期戦に乗じて研究員達の亡命、ならびに軍機関にダメージを与える事にある。確実に奇襲をかけてくるはずだ。そこを今回から作戦に参加するF-2戦闘機に、上空からの先制攻撃を仕掛けてもらう、ベースキャンプには近づく事は難しいが、近くまで接近し爆撃、戦力を削る事は容易に可能だと思われる、これらは先日の機動性テストと戦闘力テスト、ならびに長坂特別中尉の日頃の訓練を見て判断した。攻撃を開始後、第1、2、3WT部隊は地上からの殲滅をおこなってもらう。」


 その後もブリーフィングは続き、キルゴア中佐は奇襲後の細々したフォーメーションや、ドラゴンが来襲する可能性を説明をしていた。


「今回のブリーフィングは以上だ。 今作戦終了後、戦闘員のみでのブリーフィングを明日(みょうにち)19:30(ひときゅうさんまる)に第3ブリーフィングルームでおこなう。解散!」


ーーーー


 智樹は基地の外に出て、たばこに火をつけて星空を見ていた。

 すると、そこにアゥストフが頭を掻きながら来て、たばこを吸おうとジッポライターとソフトケースを胸ポケットから出した。


「あー、切れてら。 ローフィ、一本くれ。」


 智樹は無言のまま、ソフトケースを一回上に振りたばこを一本アゥストフに渡した。

 するとアゥストフは、「ありがとよ」と言ってたばこを取りジッポライターで火をつけた。


「俺は作戦のブリーフィング後は必ず、ここでたばこを吸う事にしてるんだ。隊員達がまたここに帰って来れるか、作戦は無事に成功するのか、隊員の中には結婚して家族持ちの奴もいるし、退役したら花屋をやりたいって、言ってる奴もいる。そいつらの幸せを摘む結果になるんじゃないのか、って考えてると頭が痛くなってな。」


 アゥストフからは、いつものようにやる気は感じられないが、隊員を大事にしてるという事が伝わってきた。


「俺はさ、初めて戦闘機に乗った時の事を思い出すのさ、初めてミサイルの発射スイッチを押した時の事も思い出す。自分はあの時正しい判断を出来ていたのか、あの時ミサイルを、バルカンを撃ち込んでいなかったら今頃どうなっていたのか。そんな事思ってると空が見たくなるんだ。」


 智樹は話をしている時も空を見上げ、普段と違いセンシティブになっていた。


「日本にいた時でも、いつも作戦前は、そんな事考えているのか?」


 アゥストフはからかいもせずに智樹の話をまじめに聞いた。


「あぁ、悪い夢さ……」


 智樹とアゥストフはそのまま、数十分の時間がたち、智樹が吹っ切れたように伸びをした。


「あっ、そういえば整備班の奴らがドックに来てくれ、って言ってたぜ? 見せたい物があるんだとよ」


 アゥストフは智樹に、整備班の人から言われた伝言を伝えた。


「あとで行ってみるわ! ありがとよ、隊長さん!」


 そういうと智樹は基地の中に戻っていった。


ーーーー整備格納ドック


「おーい! 来たぞー!」


 智樹は整備ドックに着き、近くの整備員に話しかけた。


「おぉぉぉぉい! こっちこぉぉぉぉい!」


 整備班の男は、智樹を呼んで手を振っている。


「どうした、アストナージ? 急に呼んで!」


 智樹はアストナージと軽くハイタッチをした。

 するとアストナージは、「これを見てくれ!」と言って、戦闘機にかけてあった布を剥がすとそこには、洋上迷彩の為に青だった機体の色が、深緑のカーキ色になった機体と、キャノピーの下に星の撃墜マーク、機体の機首にノーズアートが描かれていた。


「かっけぇだろ? お前のためにやっといたぜ!」


 機首に描かれたノーズアートは、裸のノーリがミサイルに股がっていて、その下には「Lukc&Plukc」と書かれていた。


「サンキュー!」


 智樹はアストナージと握手してからバイパーゼロに触れて、「明日からも頼むな!」と話しかけた。


 心なしかその日のドックに吹き込む風は、いつもよりは油臭く感じなかった。

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