これが本物のディスクさ
エイミ―とアーロンはチャ―タ―したモ―タ―ヨットに連れ込まれた。ドイツのスパイはエンジンをかけ、ヨットはどんどん桟橋から離れて行く。
「ヴィクタ―はどこまで話した?」
一人の男が言った。
「何も」とア―ロンは平然と答えた。
「ディスクをCIAに渡したのか?」
「相手がCIAだってね、こんな重要な資料を簡単に手放す訳ないだろう?」
とア―ロンは密閉ビニールにはいったディスクを懐から出した。
エイミ―はそのディスクが何なのか判らなかったが、このやり取りを藁をも掴む思いで見ている。
「これがヴィクタ―が隠していた本物のディスクだ。」
と、ア―ロンは堂々たるもの。
「どこに隠していたあったディスクだ?」
「冷蔵庫さ」
二人のスパイは頷きあった。
「Aber ich mochte,dass du stirbst.」
(だが、死んでもらう)
するとア―ロンはそのディスクを海へ投げつけた。
「密閉ビニール入りだから、すぐ取りに行けば濡れないよ」
「Verdammt!」
(畜生!)
一人のスパイが咄嗟にシャツ脱ぎ捨て海へダイブした。ビニール内に空気があるせいか浮かんでいる。
その様子に一瞬気を取られて、あと一人の男が向けていた銃口をエイミ―とア―ロンから離してしまった隙を、ア―ロンは逃さなかった。
隠し持っていた自前の銃で、その男の肩と脚を撃ったのだ。
血飛沫が飛び、男は撃たれた衝撃でデッキから海へ転落。
その時突然、海面に広がった血液に呼び寄せられた狂気を帯びた6メ―トルを超す人食い鮫が、海上にもんどりうちながら現れた。
そして、ディスクを取ろうとしているスパイを一瞬に海の中へ引きずり込んだ。その後、海面に浮かぶ大量の血。
「エイミ―!見るんじゃない」
エイミ―はヨットの床に座り込んだまま、体中の力が抜けていた。
撃たれて転落した男も、既にに消えてしまっていた。