オ―バ―シ―ズハイウェイ
カルロスの世話はシェリルに任せた。
エイミ―とア―ロンはマイアミである女性と会った。エイミ―の友人で、大手興信所の女社長である。
「ヴィクタ―・テイラーは2009年に銃で撃たれて亡くなってるわ。生前の写真がこれよ」
女社長はヴィクタ―・テイラーの引き伸ばした写真をエイミ―に見せた。
シェリルの夫としてサンタモニカの家に四年間居たヴィクタ―・テイラーとは似ても似つかぬ超イケメンである。
1976/10/23生まれ
O型
生家 フロリダ州マイアミ サウスウェスト23rd
マイアミセントラル高校卒業
フロリダ州立大学卒業
大学野球連盟
リトルリ―グ監督
スポーツジム経営
2009年死亡
「リトルリ―グの監督もしていたのね。きっと本物のヴィクタ―はいい人よ、イケメンだし。ねぇ、ア―ロン、そう思わない?」
「ああ、ゲイでなくたってそう思うね」
銃で撃たれて死亡、殺されたのよ。
そしてスパイの男がヴィクタ―と入れ替わった。
エイミ―は恐怖心と憤りで言葉もなかった。
「♪オ―バ―シ―ズハイウェイ
海の上のハイウェイ♪
青い海の上を空に向かって走るよう
そして私は、貴方に向かって走って行くの
体重150キロあるけど、受・け・止・め・て♪」
エイミ―は即興で歌っていた。
早朝からレンタカーを長時間運転するア―ロンが、眠くならないように。
「デブかよ、その女」
「運転、交代するわ」
「大丈夫だ。この旅で俺は君のボディガ―ド兼ドライバ―だからね、」
オ―バ―シ―ズハイウェイ。
海の上を走る夢のハイウェイだ。
キ―ウェストに向かって走っている。あまりにも長い時間。
太陽が移動していくのが判るくらい。
飛び交うカモメ、潮の匂い、ラジオからは
A whole new world が流れていた。
エイミ―は時々、予知能力のように、ある場面が浮かぶ。
ずっとこの先の未来も、運転するア―ロンの横顔を見ている場面。
まさか。
エイミ―は彼を見た。
「何?俺の顔に何かついてる?」
「うん、腹減った❗ってついてる」
「よし、次の島で何か食おう」
二人がキ―ウェストに到着したのは、陽が落ちてからだった。
高級ホテルの広いレジデンスにチェックインした。
ホテルの一室と言っても、居間と部屋がいくつかあり、二人は別々の部屋。
何かあったらすぐにお互い携帯電話で連絡し合うように約束をした。
「カルロスは元気にしてる?いい?施錠はしっかりして。念のために、ア―ロンのお姉さん夫婦が夜来てくれるから。他の人が来ても、ドアを開けては駄目よ」
エイミ―はマリブの家のシェリルに電話して、用心するように言った。
その後、ア―ロンが部屋に来て、
「街を偵察しよう」
と言い出した。
治安が良いせいか、夜のデュバル・ストリートは人で溢れていた。
地元のバ―で生演奏を聴きながら、オイスターとビール。
「理由はなんであれ、来て良かったわ」
「これがバカンスなら、もっといいね」
今度はバカンスで来ない?二人でさ。
とア―ロンが言おうとした時、エイミ―がバ―の出入口に気を取られていた。
「どうしたの?」
「今の人、ヴィクタ―そっくりだったわ」
「……………つけてみるか?」
ア―ロンは、マイアミで護身用に購入した38口径が、ジャンパーの下のガンベルトにちゃんと収まってるか確認した。
続く