進化論?
「ねぇ、姉さんのこと、好きでしょう?」
エイミ―はパソコンで調べものをするア―ロンに尋ねた。
「突然何だよ?そんな質問に答えろって?」
気のせいかア―ロンは赤くなっている。
「絶対好きでしょう?見てわかるわ」
「大人をからかっちゃいけないよ」
ア―ロンはパソコンから目を離さずにいる。
「姉さんも、貴方のこと好きだと思うわ。だから安心して。」
「何を安心しろと?」
「キスを迫っても断られないわよ」
「キス?」
と、ア―ロンは一瞬嬉しそう。
「キスがどうかしたの?」
エイミ―がキッチンからやって来たので、シェリルはシェパードのカルロスとバルコニーへ移動。
「キス好き?」とア―ロン。
「相手によるわ」
ア―ロンとエイミ―は無意味に見つめ合った。
エイミ―は予感していた。
いつかは、ア―ロンがステデイな関係を要求してくる。
その時は、その時考えればいい。
たしかに元三流とは言え、ハリウッド俳優の経験もありセクシ―ガイだ。端整なルックスとユニークな性格が魅力的。
彼はパソコンのページをプリントアウトして、エイミ―に渡した。
「教授は学界に発表出来ないような重大な発見をしたらしいよ。分子人類学的遺伝子研究だって」
エイミ―はプリントを読んだ。
「人種の成り立ちについて」
「人種の成り立ちにはいくつか説があってアフリカ進化説、多地域進化説、両方の混合説等を支持する研究者に分けられる。しかし、このオブライエン教授は多地域進化説をさらに濃厚にする遺伝子研究の結果を得たようだ。このことは何を危惧させるか。
人種差別………………」
エイミ―は考えた。
今、自分が持っている全知識を総動員してみる。
100万年前には原人や旧人がアフリカ大陸からユ―ラシア大陸へ進出している。ただ、彼らが現生人類の直接の先祖ではないとされてきた。
ホモサピエンスがネグロイド
ネアンデルタ―ル人とクロマニョン人がコ―カソイド
北京原人がモンゴロイド
ジャワ原人と他の混合が東南アジアやメラネシア、オ―ストラロイド
だとしたら、白人至上主義が都合が悪くなる?
まさか、そんなの考え過ぎよ。
「どうしたの?」
ア―ロンが心配そうにエイミ―を覗きこんだ。
以外と美人だと判っている。エイミ―はベストセラ―作家だけれども、女性的で可憐だ。
彼は今、彼女にキス出来たらいいな、と思った。
「この事件は私たちには危険過ぎるわ」
「シェリルをそっとしてあげる意味でも、もう、終わりにしよう」
「ア―ロン、昨日シェリルのサンタモニカの家の冷蔵庫の野菜ルームで、不自然な封筒を見つけたの。これよ」
ア―ロンは封筒の中から、一枚のパソコンディスクを出した。
スタンフォード大学のラベルの余白に、殺されたオブライエン教授の名前が書いてあった。
「何で今まで黙ってたの?」
「言うと、殺し屋がここに来るような気がしたのよ」