8話
薄暗い森の中の木々の隙間、それは悠然と立っていた。紅い塔が立っていた。むせ返る様な濃い血の香りを撒き散らして、紅い塔は立っていた。下は血の池、周りは肉塊、
生贄となった羽毛達は、宙を舞い、紅き塔を飾り付ける。周辺の木々は、異様な傷を負いながら、根元から、倒され、そこに存在するのは只々静寂のみ。
こんな混沌した空間には、たとえ腹を空かせ、血に飢えた獣であっても、不用意に近づいたりはしない。
そんな頭のおかしい狂った空間の中心に僕はいる。
ココで何があって、どうしてこうなったのか…それを語る為には、少し時間を遡らなければならないだろう…
ーーーーーーーーーー数時間前ーーーーーーーーーー
[【スキル:巣作り】の使用を確認。製作を開始します。]
(へっ?)
【スキル:巣作り】を発動した瞬間、突然身体の内側から声が聞こえた。
[巣を作る際に使用する材料を確認中……確認中……
失敗。材料が確認されませんでした。代用品を周囲から、採取します。]
(採取?)
一体この声は何を言っているんだろうと思っていると、周囲に変化が起こる。
ブォンっと言う近未来的な効果音と共に透明な膜が僕の周囲に展開される。
[代用品の索敵開始。……ヒット。採取範囲拡大………完了。代用品材料名:鳥肉。これより作製を開始します。]
脳内アナウンスの宣言通り、透明膜はある程度その範囲を広げ、停止。
代わりに、ブチブチと何かが千切れるような音が周囲に響き始める……んん!?、コレって、まさか…
(ちょっ、ちょっと待っー[作製開始。]アーーーーーーーーー)
開始と同時に千切れたキツツキもどきの首肉が波となり、僕に押し当てせ来る。四方八方から来る肉波にどうする事出来ず、僕はそのまま、波の衝撃に意識手放していった・・・・・。
どの位気を失っていたのだろう…
目を覚ますと僕の身体は真っ赤な鳥肉に包まれていた。
文面だけ見れば若干美味しそうだけど、実際に体験すると、只々気持ち悪い。血肉に全身覆われているとか、レディ 〇〇じゃないんだから、勘弁して欲しい。
脱出するために、僕は無数にあるミノムシアームを動かして、肉を掘る。当然だけど、ただの鳥肉のため、簡単に穴が空いた。
空いたはずなんだけど………
(うわぁ、マジか……)
右を見ても紅、左を見ても紅、正面向いても紅、紅、紅。紅一色の地獄絵図が広がっていた。